上 下
24 / 59
第三章 運命を変えたい

3-7

しおりを挟む
レジデンスに帰ってきて、海星本部長がコーヒーを淹れてくれる。

「えっと。
じゃあ、ピアスをあけようと思います」

「うん」

テーブルの上にはふたつのコーヒーカップ、それにピアッサーに鏡と、そのほかピアスを開けるのに必要なものが並んでいた。
病院であける話も出たが、自分でやりたいとお願いした。
私の運命を変えるピアスだ、自分自身であけたい。

耳を消毒し、あける場所を決める。
が、鏡は海星本部長が持ってくれているとはいえ、やりにくい。

「俺がやってやろうか?」

「……お願いします」

素直に持っていたペンを彼に渡す。
すぐに彼は左右のバランスを見ながら印をつけてくれた。

「ここでいいと思うが」

「はい、大丈夫です」

鏡で確認すると左右だいたい同じ場所に印が付いていたし、問題ないだろう。

いよいよ、ピアッサーで自分の耳を挟む。

「ちょっと待て」

私の顔を横から見て、海星本部長が印からズレていないか、真っ直ぐになっているかチェックしてくれる。

「うん、大丈夫だ」

彼が頷き、私もあまり顔を動かさないように小さく頷き返す。
目を閉じて小さく深呼吸し、覚悟を決めた。

「いきます」

ぐいっとピアッサーを握る手に力を入れた途端、バチン!と大きな音が耳もとでした。

「大丈夫か?」

穴を開けたのは私なのに、海星本部長のほうが痛そうな顔をしているのはなんでだろう?
同じ行程を繰り返し、反対側にも穴を開ける。

「どうですか?」

ファーストピアスの刺さった耳を彼に見てもらう。
ピアスは石のついているのも選べたが、シンプルなチタンボールのものにした。
海星本部長曰く。

『ちゃんとしたのは俺が選んだのが、最初がいい』
……らしい。

「いいんじゃないか」

ちゅっと軽く彼の唇が重なる。

「これで花音は生まれ変わったな」

「そうですね」

もう過去を――高志なんてすっぱり忘れて思い出さない。
これからは海星本部長と生きていくんだ。

「生まれ変わった花音を抱きたい」

彼の手が私の眼鏡を引き抜く。
少しして唇が重なった。
ちろりと唇を舐められ、自分から口を開けて彼を迎え入れる。
すぐにくちゅり、くちゅりと私たちが立てる水音が静かな室内に響き出す。

「……ん……んん……」

漏れる甘い吐息は私のものか、それとも……彼のものか。

……もっと。
もっと……。

じんじんと頭の芯が痺れ、彼以外なにも考えられなくなっていく。
ただひたすらに海星本部長を求めた。

「あっ……」

ゆっくりと彼が離れていき、私の舌が空中に取り残される。

「物欲しそうな顔をして可愛いな」

その舌先に彼は、ちゅっと口付けを落とした。
それだけでびりりと軽く電流が身体に走る。

「ベッド、行こうか」

手を引っ張った彼は、私を抱き上げた。

「きゃっ」

慌てて、落ちないように掴まる。
見ている人がいないとはいえ、お姫様抱っこは恥ずかしい。
海星本部長はそっと、ベッドの上に私を横たえた。
眼鏡を外し、彼がじっと私を見下ろす。
それだけで心臓がどくん、どくんと大きく鼓動した。

「……花音」

甘い重低音で私の耳を犯しながら、彼が服を脱がせていく。

「生まれ変わった花音にも、俺をたくさん覚え込ませないといけないな」

「あっ」

彼の唇が首筋に触れるだけで甘い声が漏れた。
そのまま指で、舌で、彼は丁寧に私を愛撫していく。

「あっ、あっ、ああーっ!」

海星本部長の指がぐちょぐちょと音を立てて私の花壺を掻き回し、絶頂を迎える。
けれど彼はそれで許してくれなかった。

「かいせいっ、ほんぶちょぅっ!
もう、イったから……!」

「んー?
海星本部長じゃない、海星だ」

「あっ、はぁっ、ああっ」

言われた意味を理解しようとするが、快楽が暴れ回る身体ではままならない。

「か、かいせいっ、……さん!」

「海星さんじゃない、海星だ」

「ああっ、あっ」

私はつらくて堪らないというのに、海星本部長は愉しそうなのがわからない。

「ほら、言わないとまたイくぞ」

「はぁっ、ああーっ!」

ぐいっと彼が胎内で指を曲げた途端、目の前で星が明滅する。
もうやめてほしい、なのに彼はそこを指先でぐりぐりと抉り続けた。

「俺は別にいいけどな、花音がつらいだけで」

やめさせようと彼の手を掴み、嫌々と首を振る。
それでも彼はやめてくれない。
見えなくてもますます愉しそうなのはその空気でわかった。

「ダメ、もうダメだからっ……!」

こんなの続けられたら頭がおかしくなる。
なのに。

「花音が俺を海星と呼ぶまでやめない」

「ああっ!
あっ」

さらにぐりっと私の弱い場所を彼が抉る。
仰け反った喉に、彼は口付けを落としてきた。
敏感になっている身体はそれすら、感じてしまう。

「海星!
海星さんっ!」

早くやめてほしくて言われたとおりに彼の名を叫んだけれど。

「ダメだ」

「なん、でっ……!ああっ!」

お仕置きとばかりに同じ場所を何度か強く押され、また達する。
ちゃんと私は役職なしで彼の名前を呼んでいる。
なのになにがダメなのかわからない。
理由を考えたいのに彼は私を責め続け、その隙を与えてくれなかった。

「ダメ……もう無理……許して……」

「ダメだ。
花音が俺の名をちゃんと呼ぶまでやめない」

懇願するが彼は手を止めてくれない。
頭はぐちゃぐちゃでなにも考えられなくなっていた。

「……〝海星〟。
それだけでいいんだ」

耳もとで囁き、彼が離れる。

「はぁっ、……あっ、海星!……ああっ、……かいっ、せいっ!
もう無理、おねがいっ……!」

「それでいい」

私の髪をうっとりと撫でた彼は、仕上げだとでもいうのか指の抽送を速くした。

「イヤッ、海星!
やめて、出る、出ちゃう……!」

迫り来るそれは排泄感とよく似ていた。
そんなの絶対に嫌なのに、彼は指を止めてくれないどころか、さらにキモチイイ場所を擦ってくる。

「いいよ、出して」

「ああぁぁっ……」

ぐりっと奥を思いっきり押された途端、ぶしゅっと液体を私は勢いよく噴き出していた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

野獣御曹司から執着溺愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
野獣御曹司から執着溺愛されちゃいました

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

溺愛婚〜スパダリな彼との甘い夫婦生活〜

鳴宮鶉子
恋愛
頭脳明晰で才徳兼備な眉目秀麗な彼から告白されスピード結婚します。彼を狙ってた子達から嫌がらせされても助けてくれる彼が好き

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

処理中です...