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第三章 運命を変えたい

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今日も髪を撫でる、優しい手で目が覚めた。

「起こしたか?」

ちゅっと軽く口付けを落としてきた海星本部長は、またスーツ姿だった。

「……今日もお仕事、ですか……?」

起き上がろうとしたけれど、彼がそれを止める。

「少し用事を片付けてくる。
花音はまだ、寝てていいよ」

大きな手が、私の瞼を閉じさせる。

「昨日も無理、させたしな」

くすりと小さく笑われ、一瞬で頬が熱くなった。

「……そう、ですね……」

掛け布団を掴み、引き上げて顔を隠す。
昨晩も散々、海星本部長から求められた。
キモチイイを覚えた身体は簡単に何度も達し、終わった頃には半ば、意識を失っていた。

「帰ってきたら一緒にお昼を食べに行こう。
服や、ここで生活するのに足りないものも買わないといけないしな」

「はい……」

髪を撫でる手が気持ちいい。

「じゃあ、いってくる」

そのまま意識はとろとろと溶けていき、優しい口付けを最後に完全に眠りに落ちた。



「よく寝た……」

目が覚めて、大きく伸びをする。
海星本部長はまだ帰ってきていないようなので、起きて簡単に身支度をしてしまった。
ちなみに服は大手量販店『ニャンユー』で買ったグレーのロングナロースカートに白カットソーと、仕事着と大差はない。
髪はいつもどおりひっつめ結びにし、簡単に化粧をして黒縁ウェリントン眼鏡をかければ完成だ。

「いい天気……」

リビングにある大きな窓からは燦々と日の光が降り注いでいる。
屋上は庭園になっていると言っていたし、ちょっとお散歩に行ってもいいかも。

とりあえずなにか飲もうとキッチンへ行ってみる。
よく掃除されていて綺麗だが、綺麗すぎて反対に使っていないんじゃないかという疑惑が持ち上がってきた。

コーヒーマシーンとそれにセットするカプセルは発見した。
コーヒーを淹れているあいだに、失礼ながら冷蔵庫チェックをさせてもらう。

「空だ」

立派な冷蔵庫が鎮座していたが、僅かばかりの氷が入っているだけだった。
昨日の夜も外食だったし、もしかして家では食べない人なんだろうか。

「うーん」

コーヒーを飲みながら、することもないのでテレビをつけて眺める。
海星本部長は有料動画配信をいろいろ契約しているみたいで、そこはちょっと嬉しい。

「帰ったぞー」

コーヒーを飲み終わり、カップを洗っていたら海星本部長が帰ってきた。

「おかえりなさい」

「ただいま」

出迎えるとちゅっと軽く唇が重なった。

「俺も着替えるからちょっと待っててくれ」

ネクタイを緩めながら彼が寝室へと消えていく。
少ししてハイネックカットソーにチノパン、それにジャケットとラフな格好で戻ってきた。

「じゃあ、行くか」

「はい」

一緒に部屋を出て地下駐車場へ行く。
昨日乗ったセダンへ向かいかけたら、止められた。

「今日はこっち」

海星本部長がロックを解除したのは、その隣に停めてあるミドルタイプのSUVだった。

「車、二台持ってるんですね」

車、しかも高級外車を二台も所有とはさすが御曹司とは思ったものの。

「いや、三台」

さらに隣の車を彼が指す。
そこには小型の車が停めてあった。

「これはプライベート用で、あっちは仕事用」

海星本部長が指したのは昨日乗った車だった。

「んでこっちはひとりで気ままに出掛ける用」

今度は反対側の車を指す。

「はぁ……」

用途によって車を使い分けているのはわかったし、別にかまわない。
ただ、三台は凄いな、って思っただけで。
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