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第八章 それでもあなたに会えてよかった
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「それに、純華が犯罪者の娘だから、俺には会社を継がせられないっていうのなら、継がなくていい」
なんでもないように紘希が言う。
でも。
「……それが嫌だから、別れようと思ったんだよ」
「純華?」
私が怒っている理由がわからないのか、紘希は怪訝そうだ。
「紘希はきっと、会社より私を取るってわかってた。
でも、私のせいで今までの紘希の努力を無駄にさせるのが嫌なの。
私は紘希の重荷になりたくない。
だから、やっぱり別れよう?」
紘希の家族は気にしなくても、世間はあの社長の妻は犯罪者の娘だと後ろ指を指すだろう。
それで、仕事だって上手くいかなくなるかもしれない。
そんなの、私が耐えられない。
「あー……」
紘希は長く発したまま、天井を仰いでいる。
しばらくしてゆっくりと、私に視線を戻した。
「ごめん、なんか間違えた」
彼の腕がそっと、私を包み込む。
「俺は絶対に社長になるし、絶対に純華を守る。
純華を犯罪者の娘だって詰るヤツがいたら、俺が叩きのめす。
だから、安心していい」
「……約束、だからね」
「ああ」
誓うようにつむじに優しい口付けが落とされる。
それでぽろりと、涙が零れた。
「うっ、ふぇっ」
父が捕まってから、ずっと頑なだった心が解けていく。
あんなヤツの言うことを信じる、世間は敵だって思っていた。
でも、実際は、アイツの親族だって、ちゃんと理解してくれていた。
「……うん」
私の髪を撫でる、彼の手は優しい。
紘希はそうだ。
優しくて、誠実で、とても真面目な人。
こんな彼だから、警察も弁護士も知らない、本当の真実をあかしてもいい気持ちになった。
「……本当は、父じゃないの」
「え?」
驚いた紘希が、私の顔を見る。
「刺したのは、父じゃないの。
本当に刺したのは……」
これはあの日、私の家を訪れて、泣いて謝罪する父の部下から聞いた話だ。
鏑木社長を刺したのは、父ではなく彼だったのだ。
追い詰められ、不安定になっていく彼を心配して、父はその日、同行した。
父があれこれ手を尽くしてもアイツの横暴は止まらず、耐えられなくなって彼はアイツを刺した。
父は一瞬固まっていたが、状況を理解するとともに彼を連れ出し、言ったそうだ。
『これは僕がやったことだ。
君は刺したのは僕だと証言しなさい。
絶対に自分がやったとは言ってはいけないよ。
いいね』
強く言い含められ、彼はそれを承知した。
父のこの言葉は、彼とその奥さん、そして生まれたばかりの子供を思ってだった。
私の家にやってきた彼は、家にすら上がらず玄関で床に頭を擦りつけて、土下座をした。
ごめんなさい、許してください、申し訳ありません。
ひたすら続く謝罪の言葉を、やるせない気持ちで聞いていた。
刺した彼が悪いが、それでも責められる状況ではない。
『お父さんはそういう人だもの。
諦めましょう?』
泣き笑いの母の顔は、今でも忘れられない。
父から一方的に離婚届が送られてきたときも、母は同じように言って、判を押した。
幸い、というのは嫌だが、あのとき部屋にいたのはアイツと彼と父の三人だけで、しかもアイツは刺されたときのショックで記憶が混乱しており、刺したのは父かと聞かれてそうだと認め、父の思惑どおりになった。
「じゃあ、純華のお父さんはその彼を庇っただけなのか」
そうだと、黙って頷く。
「父の意思を尊重して、誰にも話してない。
知ってるのは私たち三人だけと、紘希もだね」
父がそうしたいと願った。
だから、私たち三人は、真実を誰にも話さなかった。
「でも、それで本当にいいのか」
じっと紘希が私を見つめる。
部下がアイツを刺したりしなければ、父が部下を庇ったりしなければ、今でも父は母と夫婦仲よく暮らしていたのだろう。
真実をあきらかにして、父の罪を取り消せるのもわかっている。
それでも。
「それは、父は望んでいないと思うの。
父は自分が不甲斐ないせいで、部下の幸せを壊すのが嫌だったんだよ、きっと」
私も係長になんてなって、一応部下がつくとわかる。
相手先の社長を刺すほどに部下は追い詰められていたのに、自分はなにもできなかった。
せめて、彼の家庭は守りたい。
きっと、そんなところだろう。
私たち家族はどうなのかという気持ちもあるが、生まれたばかりともう手も離れかけている高三じゃ、生まれたばかりのほうが大変に決まっている。
「それにあの人はもう、十分に罰を受けてるから」
彼は判決の下った日も、私の家に来て謝罪してくれた。
そのあとも毎年、事件のあった日にうちへ謝罪に来る。
課長のご家庭を壊したのに、自分は幸せで申し訳ないと毎回、苦しげに顔を歪めて額を床に擦りつけるのだ。
そんな彼が、罰を受けていないなんてありえない。
「あとね」
紘希の顔を見上げ、レンズ越しに目をあわせる。
「あんなことがあったからこの会社に入ろうって思ったし、それで紘希に出会えた。
きっとなにもなかったら、今頃全然別の会社で働いているかもだよ」
「……それは困るな」
彼は真剣に悩んでいて、おかしくなってくる。
「俺が純華に一目惚れしたのも、アイツの裁判だしな。
くっそー、複雑な心境だ」
「そうだね」
甘えるように彼の胸に額をつける。
「でも、紘希に会えたのだけはよかったと思ってる」
「俺も純華に出会えたのだけは、よかったと思う」
紘希の手が、私を上に向かせる。
少しのあいだ見つめあったあと、唇が重なった。
「……なあ。
抱いて、いい?」
私の頬に触れ、眼鏡越しにじっと紘希が私を見ている。
「純華がまた、俺から離れたいなんて言わないように縛ってしまいたい」
レンズの向こうの瞳は不安そうに揺れていた。
紘希はいったい、なにが言いたいのだろう?
秘密をあかしてしまった今、もう私が彼から……そうか。
ずっと私は紘希との別ればかり考えていた。
きっと彼も、それを感じ取っていたのだ。
だから、こうやって現実になって、それが拭えても不安で堪らないのだろう。
「いいよ。
もう、紘希から離れられないようにして」
自分からきつく、彼に抱きつく。
「ありがとう、純華」
紘希からも抱き締め返された。
さすがにイブキのいるところではできず、寝室に移動する。
もどかしそうに服を脱ぐ紘希の隣で、私も脱いだ。
「純華……」
熱い声で私の名前を呼び、彼が唇を重ねてくる。
そのままその唇で、舌で、指で、何度も天国へと連れていかれた。
「紘希!
紘希が、欲しいの……!」
「わかった」
私の声を合図に、紘希が入ってくる。
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。
いつもは丁寧にセットされた髪が、乱れている。
なにかを堪えるように、眉間に寄った皺。
それらすべてが私を幸せにさせた。
「どうした?」
視線に気づいたのか、彼の手が私の頬に触れる。
「愛してる」
その手に自分の手を重ね、甘えるように頬を擦りつけた。
「俺も愛してる」
噛みつくみたいに彼の唇が重なる。
「一生、紘希と一緒にいる」
「絶対に純華を離さない。
だから――」
感情をぶつけるように彼の動きが激しくなる。
そして――。
「ああーっ!」
私が果てると同時に、紘希の欲が私の胎内へと注ぎ込まれた。
「これで俺から離れられなくなるな」
さらに奥へとそれを押し込むかのように紘希が腰を押しつける。
「そうだね、もう紘希から離れられないね」
私の嬉しくて、笑っていた。
「でも、もっと確実なものにしないといけないからな」
「えっ、あっ!?」
紘希が私の足を抱え直す。
彼のそれはまた、堅さを取り戻していた。
……そのあと。
何度も何度も彼に愛され、最後には意識を失っていた。
なんでもないように紘希が言う。
でも。
「……それが嫌だから、別れようと思ったんだよ」
「純華?」
私が怒っている理由がわからないのか、紘希は怪訝そうだ。
「紘希はきっと、会社より私を取るってわかってた。
でも、私のせいで今までの紘希の努力を無駄にさせるのが嫌なの。
私は紘希の重荷になりたくない。
だから、やっぱり別れよう?」
紘希の家族は気にしなくても、世間はあの社長の妻は犯罪者の娘だと後ろ指を指すだろう。
それで、仕事だって上手くいかなくなるかもしれない。
そんなの、私が耐えられない。
「あー……」
紘希は長く発したまま、天井を仰いでいる。
しばらくしてゆっくりと、私に視線を戻した。
「ごめん、なんか間違えた」
彼の腕がそっと、私を包み込む。
「俺は絶対に社長になるし、絶対に純華を守る。
純華を犯罪者の娘だって詰るヤツがいたら、俺が叩きのめす。
だから、安心していい」
「……約束、だからね」
「ああ」
誓うようにつむじに優しい口付けが落とされる。
それでぽろりと、涙が零れた。
「うっ、ふぇっ」
父が捕まってから、ずっと頑なだった心が解けていく。
あんなヤツの言うことを信じる、世間は敵だって思っていた。
でも、実際は、アイツの親族だって、ちゃんと理解してくれていた。
「……うん」
私の髪を撫でる、彼の手は優しい。
紘希はそうだ。
優しくて、誠実で、とても真面目な人。
こんな彼だから、警察も弁護士も知らない、本当の真実をあかしてもいい気持ちになった。
「……本当は、父じゃないの」
「え?」
驚いた紘希が、私の顔を見る。
「刺したのは、父じゃないの。
本当に刺したのは……」
これはあの日、私の家を訪れて、泣いて謝罪する父の部下から聞いた話だ。
鏑木社長を刺したのは、父ではなく彼だったのだ。
追い詰められ、不安定になっていく彼を心配して、父はその日、同行した。
父があれこれ手を尽くしてもアイツの横暴は止まらず、耐えられなくなって彼はアイツを刺した。
父は一瞬固まっていたが、状況を理解するとともに彼を連れ出し、言ったそうだ。
『これは僕がやったことだ。
君は刺したのは僕だと証言しなさい。
絶対に自分がやったとは言ってはいけないよ。
いいね』
強く言い含められ、彼はそれを承知した。
父のこの言葉は、彼とその奥さん、そして生まれたばかりの子供を思ってだった。
私の家にやってきた彼は、家にすら上がらず玄関で床に頭を擦りつけて、土下座をした。
ごめんなさい、許してください、申し訳ありません。
ひたすら続く謝罪の言葉を、やるせない気持ちで聞いていた。
刺した彼が悪いが、それでも責められる状況ではない。
『お父さんはそういう人だもの。
諦めましょう?』
泣き笑いの母の顔は、今でも忘れられない。
父から一方的に離婚届が送られてきたときも、母は同じように言って、判を押した。
幸い、というのは嫌だが、あのとき部屋にいたのはアイツと彼と父の三人だけで、しかもアイツは刺されたときのショックで記憶が混乱しており、刺したのは父かと聞かれてそうだと認め、父の思惑どおりになった。
「じゃあ、純華のお父さんはその彼を庇っただけなのか」
そうだと、黙って頷く。
「父の意思を尊重して、誰にも話してない。
知ってるのは私たち三人だけと、紘希もだね」
父がそうしたいと願った。
だから、私たち三人は、真実を誰にも話さなかった。
「でも、それで本当にいいのか」
じっと紘希が私を見つめる。
部下がアイツを刺したりしなければ、父が部下を庇ったりしなければ、今でも父は母と夫婦仲よく暮らしていたのだろう。
真実をあきらかにして、父の罪を取り消せるのもわかっている。
それでも。
「それは、父は望んでいないと思うの。
父は自分が不甲斐ないせいで、部下の幸せを壊すのが嫌だったんだよ、きっと」
私も係長になんてなって、一応部下がつくとわかる。
相手先の社長を刺すほどに部下は追い詰められていたのに、自分はなにもできなかった。
せめて、彼の家庭は守りたい。
きっと、そんなところだろう。
私たち家族はどうなのかという気持ちもあるが、生まれたばかりともう手も離れかけている高三じゃ、生まれたばかりのほうが大変に決まっている。
「それにあの人はもう、十分に罰を受けてるから」
彼は判決の下った日も、私の家に来て謝罪してくれた。
そのあとも毎年、事件のあった日にうちへ謝罪に来る。
課長のご家庭を壊したのに、自分は幸せで申し訳ないと毎回、苦しげに顔を歪めて額を床に擦りつけるのだ。
そんな彼が、罰を受けていないなんてありえない。
「あとね」
紘希の顔を見上げ、レンズ越しに目をあわせる。
「あんなことがあったからこの会社に入ろうって思ったし、それで紘希に出会えた。
きっとなにもなかったら、今頃全然別の会社で働いているかもだよ」
「……それは困るな」
彼は真剣に悩んでいて、おかしくなってくる。
「俺が純華に一目惚れしたのも、アイツの裁判だしな。
くっそー、複雑な心境だ」
「そうだね」
甘えるように彼の胸に額をつける。
「でも、紘希に会えたのだけはよかったと思ってる」
「俺も純華に出会えたのだけは、よかったと思う」
紘希の手が、私を上に向かせる。
少しのあいだ見つめあったあと、唇が重なった。
「……なあ。
抱いて、いい?」
私の頬に触れ、眼鏡越しにじっと紘希が私を見ている。
「純華がまた、俺から離れたいなんて言わないように縛ってしまいたい」
レンズの向こうの瞳は不安そうに揺れていた。
紘希はいったい、なにが言いたいのだろう?
秘密をあかしてしまった今、もう私が彼から……そうか。
ずっと私は紘希との別ればかり考えていた。
きっと彼も、それを感じ取っていたのだ。
だから、こうやって現実になって、それが拭えても不安で堪らないのだろう。
「いいよ。
もう、紘希から離れられないようにして」
自分からきつく、彼に抱きつく。
「ありがとう、純華」
紘希からも抱き締め返された。
さすがにイブキのいるところではできず、寝室に移動する。
もどかしそうに服を脱ぐ紘希の隣で、私も脱いだ。
「純華……」
熱い声で私の名前を呼び、彼が唇を重ねてくる。
そのままその唇で、舌で、指で、何度も天国へと連れていかれた。
「紘希!
紘希が、欲しいの……!」
「わかった」
私の声を合図に、紘希が入ってくる。
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。
いつもは丁寧にセットされた髪が、乱れている。
なにかを堪えるように、眉間に寄った皺。
それらすべてが私を幸せにさせた。
「どうした?」
視線に気づいたのか、彼の手が私の頬に触れる。
「愛してる」
その手に自分の手を重ね、甘えるように頬を擦りつけた。
「俺も愛してる」
噛みつくみたいに彼の唇が重なる。
「一生、紘希と一緒にいる」
「絶対に純華を離さない。
だから――」
感情をぶつけるように彼の動きが激しくなる。
そして――。
「ああーっ!」
私が果てると同時に、紘希の欲が私の胎内へと注ぎ込まれた。
「これで俺から離れられなくなるな」
さらに奥へとそれを押し込むかのように紘希が腰を押しつける。
「そうだね、もう紘希から離れられないね」
私の嬉しくて、笑っていた。
「でも、もっと確実なものにしないといけないからな」
「えっ、あっ!?」
紘希が私の足を抱え直す。
彼のそれはまた、堅さを取り戻していた。
……そのあと。
何度も何度も彼に愛され、最後には意識を失っていた。
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