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六.結婚――一緒にいることを誓います
3.こんなに幸せでいいのかな
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貴尋の家に行った翌週末の金曜日は、篠崎班の解散会。
「結局加久田に、篠崎さん攫われちゃうんだもんなー」
まだ会社には報告していなかったけど、美咲ちゃんにだけは結婚のこと、教えていた。
「あ、でも、明日篠崎さんちにいって、反対されれば結婚、なくなりますよね!?」
……うん?
なんで美咲ちゃん、そんなに嬉しそうなんだ?
「そんなに私が結婚するのが嫌か?」
「えーっ。
篠崎さんが幸せになるのは嬉しいですよ?
でも、相手が加久田なのが気にくわない」
美咲ちゃんはそういうと、貴尋に枝豆の殻を投げつけた。
「なんで気にくわないんだ!?
ってかみんな欺されてるよな!
優里よりおまえの方が中身おっさんなのに!」
「うっさい、加久田。
私は上手に猫かぶってるから大丈夫なの。
あーあ、私が篠崎さんと結婚して、幸せにしてあげるつもりだったのにー」
あー、美咲ちゃん?
その気持ちは大変嬉しいが。
……なんかちょっと、引っかかるぞ?
美咲ちゃんにいじられている貴尋を見ながら、酒を飲む。
こんな楽しいことも今日でおしまいか。
「あ、篠崎さん!
これからもこのメンバーで時々飲みましょうよ!
遊びにいっていいなら、家いきますし!」
「美咲ちゃん……?」
「なんだかんだいっても、私たちって相性ばっちりじゃないですか?
なのにこれで終わりって惜しくないですか?」
「……そう、だな」
……あれ?
なんでだろう?
視界が、滲む……。
「ああもう。優里、なに泣いてるんですか?
美咲ちゃんも優里を泣かすな」
「ごめんなさい、篠崎さん。
私なんか、いいましたか?」
「ううん。
嬉しかっただけ。
また、三人で飲もうな」
もうすぐ私の旦那さまになる貴尋。
私のことを好きでいてくれる美咲ちゃん。
私っていままで、すっごく恵まれた環境で仕事していたんだな……。
貴尋に支えられて家に帰る。
「優里。飲み過ぎです。
……まあ、今日は仕方ないですけど」
お小言たれつつパジャマに着替えさせてくれて、ベッドに入れられる。
「たかひろー」
「なんですか?」
「あのねー?
すっごく、すっごく、しあわせ、だよ?
ありがとー、たかひろ」
「どういたしまして」
顔が近付いてきて……チュッとキスされた。
髪を撫でられながら私は、幸せな眠りへと落ちていった。
翌日。
パンツスーツで実家に帰るつもりだったんだけど貴尋に止められて、結局このあいだのワンピースで実家に帰った。
貴尋と一緒に実家に帰ると、案の定にやけ面の両親が待っていた。
……警戒していた、お赤飯と鯛の尾あたま付きと一緒に。
いや、三十過ぎのひとり娘が男を連れて帰るんだから嬉しいのはわかるけど。
いくらなんでも喜びすぎじゃない?
しかも連れてきたのが七つも年下の男とわかると、もう大騒ぎ。 あっという間に親戚連絡網に回され、気が付いたら近所に住んでいる親戚が集まって宴会が始まっていて、ふたりで苦笑いしているしかなかった。
「おはよう、貴尋」
「おはようございます、優里。
……この部屋、なんですか?」
「私の、書庫」
……結局昨日は、実家に泊まる羽目になった。
宴会は延々と続き、気が付いたら終電がなくなっていた。
というか、いまからこんなんで、結婚式の時ってどうなるのか、宴会好きなうちの一族が心配です。
朝起きて私は、久しぶりに実家の書庫を開けていた。
小学生の時から買いためた本を詰め込んでいる、部屋。
「凄いですね。会社の資料室みたい」
「だろ?
床も抜けないように補強工事したし、本棚は業務用だ」
「全部この本、読んだんですか?」
「ああ。
ここに置いてあるのは全部読んだ本。
……あ、心配しなくていいぞ。
結婚してもここに本を置くことは、了解を取り付けた」
「……それは安心です」
ちょっと安心したような顔している貴尋。
……いつかこの書庫を、貴尋に見せたいと思っていた。
呆れられるかと思ったけど、意外と感心しているみたいでほっとした。
四月になって。
貴尋と美咲ちゃんは私の元を離れていった。
……といっても、同じ課内に入るので、顔は合わせるし、たまに話したりするのだけど。
それでもやっぱり、ちょっと淋しい。
今度私の元には美咲ちゃんの同期の女の子が事務として、他班で二年実績を積んできた男がふたりと、全くの新人がふたりが入ってきた。
……うん。
人数が増えてやっとまともな班になるのは嬉しいと思っていたけど、これって確実にいままでより仕事増えてるよな!?
彼らが貴尋並みに有能であることを祈るばかりです……。
「結局加久田に、篠崎さん攫われちゃうんだもんなー」
まだ会社には報告していなかったけど、美咲ちゃんにだけは結婚のこと、教えていた。
「あ、でも、明日篠崎さんちにいって、反対されれば結婚、なくなりますよね!?」
……うん?
なんで美咲ちゃん、そんなに嬉しそうなんだ?
「そんなに私が結婚するのが嫌か?」
「えーっ。
篠崎さんが幸せになるのは嬉しいですよ?
でも、相手が加久田なのが気にくわない」
美咲ちゃんはそういうと、貴尋に枝豆の殻を投げつけた。
「なんで気にくわないんだ!?
ってかみんな欺されてるよな!
優里よりおまえの方が中身おっさんなのに!」
「うっさい、加久田。
私は上手に猫かぶってるから大丈夫なの。
あーあ、私が篠崎さんと結婚して、幸せにしてあげるつもりだったのにー」
あー、美咲ちゃん?
その気持ちは大変嬉しいが。
……なんかちょっと、引っかかるぞ?
美咲ちゃんにいじられている貴尋を見ながら、酒を飲む。
こんな楽しいことも今日でおしまいか。
「あ、篠崎さん!
これからもこのメンバーで時々飲みましょうよ!
遊びにいっていいなら、家いきますし!」
「美咲ちゃん……?」
「なんだかんだいっても、私たちって相性ばっちりじゃないですか?
なのにこれで終わりって惜しくないですか?」
「……そう、だな」
……あれ?
なんでだろう?
視界が、滲む……。
「ああもう。優里、なに泣いてるんですか?
美咲ちゃんも優里を泣かすな」
「ごめんなさい、篠崎さん。
私なんか、いいましたか?」
「ううん。
嬉しかっただけ。
また、三人で飲もうな」
もうすぐ私の旦那さまになる貴尋。
私のことを好きでいてくれる美咲ちゃん。
私っていままで、すっごく恵まれた環境で仕事していたんだな……。
貴尋に支えられて家に帰る。
「優里。飲み過ぎです。
……まあ、今日は仕方ないですけど」
お小言たれつつパジャマに着替えさせてくれて、ベッドに入れられる。
「たかひろー」
「なんですか?」
「あのねー?
すっごく、すっごく、しあわせ、だよ?
ありがとー、たかひろ」
「どういたしまして」
顔が近付いてきて……チュッとキスされた。
髪を撫でられながら私は、幸せな眠りへと落ちていった。
翌日。
パンツスーツで実家に帰るつもりだったんだけど貴尋に止められて、結局このあいだのワンピースで実家に帰った。
貴尋と一緒に実家に帰ると、案の定にやけ面の両親が待っていた。
……警戒していた、お赤飯と鯛の尾あたま付きと一緒に。
いや、三十過ぎのひとり娘が男を連れて帰るんだから嬉しいのはわかるけど。
いくらなんでも喜びすぎじゃない?
しかも連れてきたのが七つも年下の男とわかると、もう大騒ぎ。 あっという間に親戚連絡網に回され、気が付いたら近所に住んでいる親戚が集まって宴会が始まっていて、ふたりで苦笑いしているしかなかった。
「おはよう、貴尋」
「おはようございます、優里。
……この部屋、なんですか?」
「私の、書庫」
……結局昨日は、実家に泊まる羽目になった。
宴会は延々と続き、気が付いたら終電がなくなっていた。
というか、いまからこんなんで、結婚式の時ってどうなるのか、宴会好きなうちの一族が心配です。
朝起きて私は、久しぶりに実家の書庫を開けていた。
小学生の時から買いためた本を詰め込んでいる、部屋。
「凄いですね。会社の資料室みたい」
「だろ?
床も抜けないように補強工事したし、本棚は業務用だ」
「全部この本、読んだんですか?」
「ああ。
ここに置いてあるのは全部読んだ本。
……あ、心配しなくていいぞ。
結婚してもここに本を置くことは、了解を取り付けた」
「……それは安心です」
ちょっと安心したような顔している貴尋。
……いつかこの書庫を、貴尋に見せたいと思っていた。
呆れられるかと思ったけど、意外と感心しているみたいでほっとした。
四月になって。
貴尋と美咲ちゃんは私の元を離れていった。
……といっても、同じ課内に入るので、顔は合わせるし、たまに話したりするのだけど。
それでもやっぱり、ちょっと淋しい。
今度私の元には美咲ちゃんの同期の女の子が事務として、他班で二年実績を積んできた男がふたりと、全くの新人がふたりが入ってきた。
……うん。
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