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第6話 車と元彼と私
3.元彼にコンタクト
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部屋に戻り、名刺に書かれていた先にメッセージを送ってみることにしたが、なにを書いていいのか悩む。
打っては消し、消しては打ちを繰り返し。
“こんにちは。
このあいだはありがとう”
とりあえず、それだけ打って送るとすぐに既読になった。
“こちらこそ、お買い上げ、ありがとうございます(笑)
まさか、押部の奥様が朋香だなんて思わなかったよ”
確かに、知り合いの誰もが朋香が押部の奥様になるなんて想像もしなかっただろう。
“いろいろあってね。
雪也はいま、どうしてるの?”
“俺はいまだに独身。
いまは仕事が楽しいかな”
独身、その言葉に一瞬だけ胸がとくんといった気がしたが、気づかないふり。
“そうなんだ”
“今度、ゆっくり話せないか。
サークルのメンバー、朋香と連絡取れないって心配してたぞ”
“うん、じゃあ今度”
“また連絡する”
既読がついて画面を閉じる。
つい、雪也と会う約束をしてしまったのは、尚一郎に対してなんとなく後ろめたい。
……でも、みんなと突然連絡絶って、心配されてるみたいだし。
これには正当な理由がある、と朋香は自分に云い聞かせた。
……早く納車日にならないかな。
毎日考えることはそれだけ。
納車されてひとりで出掛けられるようになったら、雪也と会う約束をしているから。
あれから、雪也とは毎日のように連絡を取っている。
尚一郎とは出来ない、芸能ゴシップネタとかも気軽に話せるし、なにしろ常識に差がない。
元彼、という立場に感じてた気まずさはすぐになくなり、ただの男友達になっていた。
「朋香?
なに考えてるの?」
ちゅっ、尚一郎から落とされる口づけ。
それは決して嫌なものじゃなく、最近は心地いいとさえ感じる。
「なんでもないですよ」
慌てて笑って取り繕った。
浮気じゃないと自分では思っているが、やはり雪也のことを考えていたのはなんとなく後ろめたい。
「そう?
なにか足りないものとか欲しいものとかない?」
「ないですよ」
毎日の尚一郎のプレゼントに、あっという間に衣装部屋は一杯になってしまった。
それなのに尚一郎はさらに買おうとする。
……自分の愛情を示すかのように。
この結婚が尚一郎が自分を手に入れたいがための契約結婚だというのはもう、自覚している。
でも、どうしてそこまで尚一郎に愛されているのかわからない。
理由がわからず受ける愛情はなんとなく居心地が悪い。
「僕は朋香にもっとおねだりして欲しいんだけどな」
「……はあ」
ちゅっ、ちゅっ、落ち続ける口づけ。
……どうして私は、尚一郎さんにこんなに溺愛されてるんだろう。
朋香は不思議でしょうがない。
打っては消し、消しては打ちを繰り返し。
“こんにちは。
このあいだはありがとう”
とりあえず、それだけ打って送るとすぐに既読になった。
“こちらこそ、お買い上げ、ありがとうございます(笑)
まさか、押部の奥様が朋香だなんて思わなかったよ”
確かに、知り合いの誰もが朋香が押部の奥様になるなんて想像もしなかっただろう。
“いろいろあってね。
雪也はいま、どうしてるの?”
“俺はいまだに独身。
いまは仕事が楽しいかな”
独身、その言葉に一瞬だけ胸がとくんといった気がしたが、気づかないふり。
“そうなんだ”
“今度、ゆっくり話せないか。
サークルのメンバー、朋香と連絡取れないって心配してたぞ”
“うん、じゃあ今度”
“また連絡する”
既読がついて画面を閉じる。
つい、雪也と会う約束をしてしまったのは、尚一郎に対してなんとなく後ろめたい。
……でも、みんなと突然連絡絶って、心配されてるみたいだし。
これには正当な理由がある、と朋香は自分に云い聞かせた。
……早く納車日にならないかな。
毎日考えることはそれだけ。
納車されてひとりで出掛けられるようになったら、雪也と会う約束をしているから。
あれから、雪也とは毎日のように連絡を取っている。
尚一郎とは出来ない、芸能ゴシップネタとかも気軽に話せるし、なにしろ常識に差がない。
元彼、という立場に感じてた気まずさはすぐになくなり、ただの男友達になっていた。
「朋香?
なに考えてるの?」
ちゅっ、尚一郎から落とされる口づけ。
それは決して嫌なものじゃなく、最近は心地いいとさえ感じる。
「なんでもないですよ」
慌てて笑って取り繕った。
浮気じゃないと自分では思っているが、やはり雪也のことを考えていたのはなんとなく後ろめたい。
「そう?
なにか足りないものとか欲しいものとかない?」
「ないですよ」
毎日の尚一郎のプレゼントに、あっという間に衣装部屋は一杯になってしまった。
それなのに尚一郎はさらに買おうとする。
……自分の愛情を示すかのように。
この結婚が尚一郎が自分を手に入れたいがための契約結婚だというのはもう、自覚している。
でも、どうしてそこまで尚一郎に愛されているのかわからない。
理由がわからず受ける愛情はなんとなく居心地が悪い。
「僕は朋香にもっとおねだりして欲しいんだけどな」
「……はあ」
ちゅっ、ちゅっ、落ち続ける口づけ。
……どうして私は、尚一郎さんにこんなに溺愛されてるんだろう。
朋香は不思議でしょうがない。
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