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第4話 義実家って面倒臭い

3.初めての義実家

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運転手の高橋の運転で屋敷を出る。

が、いつも尚一郎が仕事で使っているメルセデスベンツではなく、アウディ。
ガレージを覗いたことがないから何台あるのか知らないが、朋香は押部家の経済力に震えた。

 
街を抜けると車は竹林に入った。

車は暫く竹林を走ると……。
竹林をしばらく……。
竹林を……。

「あのー、尚一郎さん?」

「なに?
朋香」

いつもなら笑ってくれる尚一郎だが、竹林に入ったあたりからずっと前を見ているばかりで、緊張しているように見える。

「もしかして高橋さん、道を間違えてませんか?
ずっと竹林なんですけど」

「間違えてないよ。
一本道だし、竹林から本邸の敷地だから」

尚一郎はくすりとも笑わない。
本邸の常識外れの大きさよりも、そんな尚一郎の様子が朋香を不安にさせた。

 
ようやく竹林を抜けて見えてきた本邸は、洋風の尚一郎の屋敷と違い、和風建築の御殿だった。

「朋香。
訊ねられたことに答える以外、口を開かないと約束して」

「尚一郎さん?」

じっと、尚一郎がレンズ越しに見つめてくる。

「いいから、約束して」

「……はい」

真剣な尚一郎に、そうしなければいけない気がして、朋香は頷いた。


 
正面玄関、ではなく裏口のような所で車を降りる。
屋敷に入ってから尚一郎はずっと無言だ。
それに、顔色も悪い気がする。

「尚一郎です」

通された座敷は何畳あるのかわからないほど広かった。

尚一郎と一緒に下座に座る。
が、上座は遙か遠い。

「本日はお招きいただき、ありがとうございました」

あたまを下げる尚一郎に合わせて朋香もあたまを下げたが、上座に座る老人の男女ふたりはなにも云わない。

「本日、COOは?」

尚一郎が問うと、老爺からじろりと不快そうに睨まれた。

「おまえに質問を許可した覚えはない」

「……申し訳ありません」

尚一郎はあたまを下げているが、朋香は老爺の態度が不快で仕方なかった。
きっと、尚一郎との約束がなければ、なにか云い返していただろう。

「ふん。
相変わらずみっともないあたまだな」

思わず、尚一郎との約束を忘れて口を開きかけたが、くいっとジャケットの裾を引かれた。
目の合った尚一郎が小さく首を振り僅かに頷いたので、渋々座り直す。

「申し訳ありません」

尚一郎はまたあたまを下げているが、どこに謝る理由があるんだろうか。
悪いのは老爺の方で尚一郎ではない。
朋香の心はもやもやしていた。
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