24 / 129
第4話 義実家って面倒臭い
3.初めての義実家
しおりを挟む
運転手の高橋の運転で屋敷を出る。
が、いつも尚一郎が仕事で使っているメルセデスベンツではなく、アウディ。
ガレージを覗いたことがないから何台あるのか知らないが、朋香は押部家の経済力に震えた。
街を抜けると車は竹林に入った。
車は暫く竹林を走ると……。
竹林をしばらく……。
竹林を……。
「あのー、尚一郎さん?」
「なに?
朋香」
いつもなら笑ってくれる尚一郎だが、竹林に入ったあたりからずっと前を見ているばかりで、緊張しているように見える。
「もしかして高橋さん、道を間違えてませんか?
ずっと竹林なんですけど」
「間違えてないよ。
一本道だし、竹林から本邸の敷地だから」
尚一郎はくすりとも笑わない。
本邸の常識外れの大きさよりも、そんな尚一郎の様子が朋香を不安にさせた。
ようやく竹林を抜けて見えてきた本邸は、洋風の尚一郎の屋敷と違い、和風建築の御殿だった。
「朋香。
訊ねられたことに答える以外、口を開かないと約束して」
「尚一郎さん?」
じっと、尚一郎がレンズ越しに見つめてくる。
「いいから、約束して」
「……はい」
真剣な尚一郎に、そうしなければいけない気がして、朋香は頷いた。
正面玄関、ではなく裏口のような所で車を降りる。
屋敷に入ってから尚一郎はずっと無言だ。
それに、顔色も悪い気がする。
「尚一郎です」
通された座敷は何畳あるのかわからないほど広かった。
尚一郎と一緒に下座に座る。
が、上座は遙か遠い。
「本日はお招きいただき、ありがとうございました」
あたまを下げる尚一郎に合わせて朋香もあたまを下げたが、上座に座る老人の男女ふたりはなにも云わない。
「本日、COOは?」
尚一郎が問うと、老爺からじろりと不快そうに睨まれた。
「おまえに質問を許可した覚えはない」
「……申し訳ありません」
尚一郎はあたまを下げているが、朋香は老爺の態度が不快で仕方なかった。
きっと、尚一郎との約束がなければ、なにか云い返していただろう。
「ふん。
相変わらずみっともないあたまだな」
思わず、尚一郎との約束を忘れて口を開きかけたが、くいっとジャケットの裾を引かれた。
目の合った尚一郎が小さく首を振り僅かに頷いたので、渋々座り直す。
「申し訳ありません」
尚一郎はまたあたまを下げているが、どこに謝る理由があるんだろうか。
悪いのは老爺の方で尚一郎ではない。
朋香の心はもやもやしていた。
が、いつも尚一郎が仕事で使っているメルセデスベンツではなく、アウディ。
ガレージを覗いたことがないから何台あるのか知らないが、朋香は押部家の経済力に震えた。
街を抜けると車は竹林に入った。
車は暫く竹林を走ると……。
竹林をしばらく……。
竹林を……。
「あのー、尚一郎さん?」
「なに?
朋香」
いつもなら笑ってくれる尚一郎だが、竹林に入ったあたりからずっと前を見ているばかりで、緊張しているように見える。
「もしかして高橋さん、道を間違えてませんか?
ずっと竹林なんですけど」
「間違えてないよ。
一本道だし、竹林から本邸の敷地だから」
尚一郎はくすりとも笑わない。
本邸の常識外れの大きさよりも、そんな尚一郎の様子が朋香を不安にさせた。
ようやく竹林を抜けて見えてきた本邸は、洋風の尚一郎の屋敷と違い、和風建築の御殿だった。
「朋香。
訊ねられたことに答える以外、口を開かないと約束して」
「尚一郎さん?」
じっと、尚一郎がレンズ越しに見つめてくる。
「いいから、約束して」
「……はい」
真剣な尚一郎に、そうしなければいけない気がして、朋香は頷いた。
正面玄関、ではなく裏口のような所で車を降りる。
屋敷に入ってから尚一郎はずっと無言だ。
それに、顔色も悪い気がする。
「尚一郎です」
通された座敷は何畳あるのかわからないほど広かった。
尚一郎と一緒に下座に座る。
が、上座は遙か遠い。
「本日はお招きいただき、ありがとうございました」
あたまを下げる尚一郎に合わせて朋香もあたまを下げたが、上座に座る老人の男女ふたりはなにも云わない。
「本日、COOは?」
尚一郎が問うと、老爺からじろりと不快そうに睨まれた。
「おまえに質問を許可した覚えはない」
「……申し訳ありません」
尚一郎はあたまを下げているが、朋香は老爺の態度が不快で仕方なかった。
きっと、尚一郎との約束がなければ、なにか云い返していただろう。
「ふん。
相変わらずみっともないあたまだな」
思わず、尚一郎との約束を忘れて口を開きかけたが、くいっとジャケットの裾を引かれた。
目の合った尚一郎が小さく首を振り僅かに頷いたので、渋々座り直す。
「申し訳ありません」
尚一郎はまたあたまを下げているが、どこに謝る理由があるんだろうか。
悪いのは老爺の方で尚一郎ではない。
朋香の心はもやもやしていた。
5
お気に入りに追加
981
あなたにおすすめの小説
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
○と□~丸い課長と四角い私~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
佐々鳴海。
会社員。
職場の上司、蔵田課長とは犬猿の仲。
水と油。
まあ、そんな感じ。
けれどそんな私たちには秘密があるのです……。
******
6話完結。
毎日21時更新。
Spider
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
花火大会に誘われた。
相手は、会社に出入りしている、コーヒー会社の人。
彼はいつも、超無表情・事務的で。
私も関心がないから、事務的に接してた。
……そんな彼から。
突然誘われた花火大会。
これは一体……?
Good day ! 3
葉月 まい
恋愛
『Good day !』Vol.3
人一倍真面目で努力家のコーパイ 恵真と
イケメンのエリートキャプテン 大和
晴れて入籍した二人が
結婚式の準備を進める中
恵真の妊娠が判明!
そしてそれは
恵真の乗務停止の始まりでもあった…
꙳⋆ ˖𓂃܀✈* 登場人物 *☆܀𓂃˖ ⋆꙳
日本ウイング航空(Japan Wing Airline)
副操縦士
佐倉(藤崎) 恵真(28歳)
機長
佐倉 大和(36歳)
隠れ御曹司の愛に絡めとられて
海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた――
彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。
古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。
仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!?
チャラい男はお断り!
けれども彼の作る料理はどれも絶品で……
超大手商社 秘書課勤務
野村 亜矢(のむら あや)
29歳
特技:迷子
×
飲食店勤務(ホスト?)
名も知らぬ男
24歳
特技:家事?
「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて
もう逃げられない――
昨日、彼を振りました。
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「三峰が、好きだ」
四つ年上の同僚、荒木さんに告白された。
でも、いままでの関係でいたかった私は彼を――振ってしまった。
なのに、翌日。
眼鏡をかけてきた荒木さんに胸がきゅんと音を立てる。
いやいや、相手は昨日、振った相手なんですが――!!
三峰未來
24歳
会社員
恋愛はちょっぴり苦手。
恋愛未満の関係に甘えていたいタイプ
×
荒木尚尊
28歳
会社員
面倒見のいい男
嫌われるくらいなら、恋人になれなくてもいい?
昨日振った人を好きになるとかあるのかな……?
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
通りすがりの王子
清水春乃(水たまり)
恋愛
2013年7月アルファポリス様にて、書籍化されました。応援いただきましてありがとうございました。
書籍化に伴い本編と外伝・番外編一部を削除させていただきましたm( )m。
18歳の時、とある場所、とある状況で出会った自称「白馬の王子」とは、「次に会ったときにお互い覚えていたら名乗る」と約束した。
入社式で再会したものの、王子は気付かない。まあ、私、変装しているしね。5年も経てば、時効でしょ?お互い、「はじめまして」でノープロブレム・・・のハズ。
やたら自立志向のオトコ前お嬢を 王子になり損ねた御曹司が 最後には白馬に乗ってお迎えにいくまで・・・。
書籍化に伴い削除したものの、割愛されてしまった部分を「その一年のエピソード」として章立てして再掲載します。若干手を入れてあります。
2014年5月、「通りすがりの王子2」刊行しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる