16 / 129
第3話 ひとりっきりのお城
1.自分の部屋
しおりを挟む
「やだぁ。
くすぐったい」
誰かがべろんべろんと朋香の顔を舐める。
くすぐったくてくすぐったくてたまらない。
「やめってって。
ねぇ……」
そっと瞼を開くと、金髪が視界に入ってきてぎょっとする。
慌てて飛び起きると、ゴールドとホワイトの毛並みの犬……ボルゾイが物珍しそうに朋香を見ていた。
昨日、尚一郎がボルゾイに似ていると思ったが、実際見るとますます似ている。
「ロッテ、ダメだよ、入っちゃ」
尚一郎がドアの隙間から顔を出すとボルゾイは朋香の元を離れた。
行方を追っていくと視線が尚一郎と合い、困ったように笑われた。
「おはよう、朋香。
よく眠れた?」
「……おはようございます」
昨日は疲れてそのまま寝落ちてしまい、酷い状態なのを見られていると思うと、顔から火が出るほど恥ずかしい。
「準備ができたら一階に降りておいで。
朝食にしよう」
「……はい」
すっかり俯いてしまった朋香を残してドアがぱたんと閉まる。
閉まる直前、尚一郎がおかしそうに小さくくすりと笑った気がしてますます恥ずかしくなった。
バス、トイレは部屋に付いてると云われたが、廊下に出る以外に右手に二つ、左手に一つとドアが三つもある。
とりあえず右手手前のドアを開けてみるとトイレだった。
中にさらにドアがあって、開けてみると洗面所兼用のバスルーム。
「うわーっ」
思わず、朋香の口から感嘆の声が漏れる。
白いタイルに置かれる、猫足の白のバスタブ。
洗面台はダークブラウンを基調としており、まるで海外のおしゃれな家のようだった。
「やっぱりお金持ちは違うね」
つい、憎まれ口をたたきながらも、顔はゆるみきっている。
バスルームにあった、別のドアを開けると想像通り部屋に戻った。
スーツケースから着替えを出していそいそとシャワーを浴びる。
身支度を整えて部屋を出ようとして、バス、トイレとは反対にあるドアも気になった。
「一応、ね」
そっとドアを開けてみると、そこは衣装部屋になっていた。
しかも、すでに半分ほどが埋まっている。
「押部社長の趣味なのかな」
シンプルできれいめのラインナップ。
ただし、パンツ系、とくにジーンズは一本もない。
「どうでもいいけど、買い過ぎじゃない?」
一日二回着替えたって、ひと月で全部の服が着れるかどうかも怪しい量。
金持ちの考えることはわからない。
くすぐったい」
誰かがべろんべろんと朋香の顔を舐める。
くすぐったくてくすぐったくてたまらない。
「やめってって。
ねぇ……」
そっと瞼を開くと、金髪が視界に入ってきてぎょっとする。
慌てて飛び起きると、ゴールドとホワイトの毛並みの犬……ボルゾイが物珍しそうに朋香を見ていた。
昨日、尚一郎がボルゾイに似ていると思ったが、実際見るとますます似ている。
「ロッテ、ダメだよ、入っちゃ」
尚一郎がドアの隙間から顔を出すとボルゾイは朋香の元を離れた。
行方を追っていくと視線が尚一郎と合い、困ったように笑われた。
「おはよう、朋香。
よく眠れた?」
「……おはようございます」
昨日は疲れてそのまま寝落ちてしまい、酷い状態なのを見られていると思うと、顔から火が出るほど恥ずかしい。
「準備ができたら一階に降りておいで。
朝食にしよう」
「……はい」
すっかり俯いてしまった朋香を残してドアがぱたんと閉まる。
閉まる直前、尚一郎がおかしそうに小さくくすりと笑った気がしてますます恥ずかしくなった。
バス、トイレは部屋に付いてると云われたが、廊下に出る以外に右手に二つ、左手に一つとドアが三つもある。
とりあえず右手手前のドアを開けてみるとトイレだった。
中にさらにドアがあって、開けてみると洗面所兼用のバスルーム。
「うわーっ」
思わず、朋香の口から感嘆の声が漏れる。
白いタイルに置かれる、猫足の白のバスタブ。
洗面台はダークブラウンを基調としており、まるで海外のおしゃれな家のようだった。
「やっぱりお金持ちは違うね」
つい、憎まれ口をたたきながらも、顔はゆるみきっている。
バスルームにあった、別のドアを開けると想像通り部屋に戻った。
スーツケースから着替えを出していそいそとシャワーを浴びる。
身支度を整えて部屋を出ようとして、バス、トイレとは反対にあるドアも気になった。
「一応、ね」
そっとドアを開けてみると、そこは衣装部屋になっていた。
しかも、すでに半分ほどが埋まっている。
「押部社長の趣味なのかな」
シンプルできれいめのラインナップ。
ただし、パンツ系、とくにジーンズは一本もない。
「どうでもいいけど、買い過ぎじゃない?」
一日二回着替えたって、ひと月で全部の服が着れるかどうかも怪しい量。
金持ちの考えることはわからない。
5
お気に入りに追加
983
あなたにおすすめの小説
クリスマスに咲くバラ
篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

社内恋愛~○と□~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
一年越しの片想いが実り、俺は彼女と付き合い始めたのだけれど。
彼女はなぜか、付き合っていることを秘密にしたがる。
別に社内恋愛は禁止じゃないし、話していいと思うんだが。
それに最近、可愛くなった彼女を狙っている奴もいて苛つく。
そんな中、迎えた慰安旅行で……。
『○と□~丸課長と四角い私~』蔵田課長目線の続編!
【完結】もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜
四片霞彩
恋愛
「貴女の残りの命を私に下さい。貴女の命を有益に使います」
度重なる上司からのパワーハラスメントに耐え切れなくなった日向小春(ひなたこはる)が橋の上から身投げしようとした時、止めてくれたのは弁護士の若佐楓(わかさかえで)だった。
事情を知った楓に会社を訴えるように勧められるが、裁判費用が無い事を理由に小春は裁判を断り、再び身を投げようとする。
しかし追いかけてきた楓に再度止められると、裁判を無償で引き受ける条件として、契約結婚を提案されたのだった。
楓は所属している事務所の所長から、孫娘との結婚を勧められて困っており、 それを断る為にも、一時的に結婚してくれる相手が必要であった。
その代わり、もし小春が相手役を引き受けてくれるなら、裁判に必要な費用を貰わずに、無償で引き受けるとも。
ただ死ぬくらいなら、最後くらい、誰かの役に立ってから死のうと考えた小春は、楓と契約結婚をする事になったのだった。
その後、楓の結婚は回避するが、小春が会社を訴えた裁判は敗訴し、退職を余儀なくされた。
敗訴した事をきっかけに、裁判を引き受けてくれた楓との仲がすれ違うようになり、やがて国際弁護士になる為、楓は一人でニューヨークに旅立ったのだった。
それから、3年が経ったある日。
日本にいた小春の元に、突然楓から離婚届が送られてくる。
「私は若佐先生の事を何も知らない」
このまま離婚していいのか悩んだ小春は、荷物をまとめると、ニューヨーク行きの飛行機に乗る。
目的を果たした後も、契約結婚を解消しなかった楓の真意を知る為にもーー。
❄︎
※他サイトにも掲載しています。
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる