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第2話 玉の輿じゃないかな?

8.弟の反発

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「なあ、表に停まってるえらいごつい外車って……」

「おかえりなさい」

朋香が自分の指にはまった指環の額を想像して内心変な汗をかいていると、普通に洋太が帰ってきた。

が、にこやかに尚一郎に挨拶をされて瞬時に口をつぐむ。

「……誰?」

「私の結婚相手の、押部社長。
連絡、してたでしょ?
押部社長、弟の洋太です」

「……ども」

「初めまして、押部尚一郎です。
これからよろしく、洋太くん」

笑顔で差し出された尚一郎の手を洋太は思いっきり不機嫌な顔で無視した。

「俺、姉ちゃんの結婚、認めたわけじゃないから。
しかもこんな、金髪野郎」

「洋太!」

怒った朋香の声に、洋太はふて腐れてそのまま自分の部屋に行ってしまった。

ダン!

怒りをぶつけるかのように乱暴に閉まったドアの音に、はぁっ、朋香は内心ため息をついた。

「その。
弟がすみません」

「気にしてないからいいよ」

言葉通り、尚一郎は怒るどころか穏やかに笑ってる。

いきなり、会社の命運をかけて姉が無理矢理結婚させられた相手、となれば洋太が納得したくないのも理解できる。

しかし、朋香は洋太が尚一郎の見た目で差別したことを怒っていた。
尚一郎がハーフに生まれたことも、この容姿だって、尚一郎に責任があるわけじゃない。

「でも」

「よくあることだから」

静かに笑う尚一郎に朋香は複雑な思いだった。



「じゃあ、私、行くね。
たまには帰……れると思うから」

部屋の外から声をかけても、洋太は出てこない。
はぁっ、ため息をついて背を向けるとドアが開いた。

「これ」

洋太が手だけをドアから出す。
そこにはなにか握られており、受け取ると健康祈願のお守りだった。

「どれがいいのかわからなかったから。
とりあえず、病気も怪我もないのが一番だと思って」

「洋太……」

「別に、認めたわけじゃないからな。
姉ちゃんを不幸にしたらあいつ、容赦なく殴りに行く。
じゃ、元気でな」

「うん、ありがとう。
洋太も元気でね。
お父さんをよろしく」

最後まで顔は見せなかったが、洋太の気持ちが痛いほど朋香には嬉しかった。
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