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第2話 玉の輿じゃないかな?
6.義父へのプレゼント
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五時ぴったりに尚一郎はやってきた。
「工場に来るのは初めてですね。
もっと早く来るべきだった」
明夫の案内で工場内を見て回りながら、尚一郎はしきりに感心している。
朋香も一緒に連れ回された。
改めて説明をされると知らないことも多く、この工場を守ってよかったと思う。
尚一郎の一行が通り過ぎるたび、皆はあたまを下げるのもの、ほとんどが憎々しげに見ていた。
けれど尚一郎はそんな様子を気にする素振りは見せない。
「やはり、宮園製作所さんの技術はすばらしいものです。
無理を通してよかった」
「無理、とは?」
尚一郎の言葉が引っかかった。
明夫も同じだったようで問うと、笑顔で誤魔化してきた。
「なんでもないです。
ほら、行きましょう」
強引に進む尚一郎を慌てて追いかける。
きっと気のせいだと、このときは片づけた。
お義父さんにプレゼントがあるんです、そう云われて工場を出ると、駐車場に見たことのない外車が二台停まっている。
一台は尚一郎のものだと思われるが。
「お義父さんにプレゼントです。
ぜひ、使ってください」
「えっ、あっ」
キーをその手に載せられて明夫はわたわたしている。
一介の町工場の社長には不釣り合いな、高級外車。
しかも、どこで調べたのか以前から明夫が、
「あんな車を乗り回してみたい」
と冗談混じりに云っていた車種。
「あの、こういうのは、その」
「押部社長。
こういうことは」
「いけないかな、朋香?
息子からのプレゼントなんだけど。
お義父さんは受け取っていただけませんか?」
「いえ、そんな!」
しゅん、悲しげに表情を歪ませてしまった尚一郎に、気分を害されてしまっては大変だとばかりに、大慌てで明夫が取り繕った。
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」
「ありがとうございます。
とりあえず、座ってみませんか?」
ぱっと顔を輝かせた尚一郎に、明夫は戸惑いながら受け取った鍵でドアを開け、シートに座った。
「おっ、これは」
最初はあきらかに困惑していたが、元々欲しかった車とだけあって、次第に明夫は興奮していく。
「いいですな、これは」
「お父さん」
小さな声で朋香がたしなめると、明夫は険しい顔を作ったものの、そこには残念だとはっきりと書いてあった。
そんな明夫に朋香ははぁっと小さくため息を落とした。
「とにかく。
こんな高価なもの、いただけませんから」
「どうしてもダメかな、朋香?」
叱られた子供のようにいじけてしまった尚一郎に驚いた。
オシベの社長といえば不遜で傲慢、そんなイメージでこんな顔をするなんて想像できなかったから。
「……じゃあ、今回限りということで。
今後、こういうことは困りますから」
「今回はいいんだね」
「はい」
ぱっと俯いていた顔を上げた尚一郎は、まるで大型犬、それも細身の……ボルゾイがしっぽを振ってるように見えて、思わずくすりと笑ってしまい、朋香は顔が熱くなる思いがした。
「工場に来るのは初めてですね。
もっと早く来るべきだった」
明夫の案内で工場内を見て回りながら、尚一郎はしきりに感心している。
朋香も一緒に連れ回された。
改めて説明をされると知らないことも多く、この工場を守ってよかったと思う。
尚一郎の一行が通り過ぎるたび、皆はあたまを下げるのもの、ほとんどが憎々しげに見ていた。
けれど尚一郎はそんな様子を気にする素振りは見せない。
「やはり、宮園製作所さんの技術はすばらしいものです。
無理を通してよかった」
「無理、とは?」
尚一郎の言葉が引っかかった。
明夫も同じだったようで問うと、笑顔で誤魔化してきた。
「なんでもないです。
ほら、行きましょう」
強引に進む尚一郎を慌てて追いかける。
きっと気のせいだと、このときは片づけた。
お義父さんにプレゼントがあるんです、そう云われて工場を出ると、駐車場に見たことのない外車が二台停まっている。
一台は尚一郎のものだと思われるが。
「お義父さんにプレゼントです。
ぜひ、使ってください」
「えっ、あっ」
キーをその手に載せられて明夫はわたわたしている。
一介の町工場の社長には不釣り合いな、高級外車。
しかも、どこで調べたのか以前から明夫が、
「あんな車を乗り回してみたい」
と冗談混じりに云っていた車種。
「あの、こういうのは、その」
「押部社長。
こういうことは」
「いけないかな、朋香?
息子からのプレゼントなんだけど。
お義父さんは受け取っていただけませんか?」
「いえ、そんな!」
しゅん、悲しげに表情を歪ませてしまった尚一郎に、気分を害されてしまっては大変だとばかりに、大慌てで明夫が取り繕った。
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」
「ありがとうございます。
とりあえず、座ってみませんか?」
ぱっと顔を輝かせた尚一郎に、明夫は戸惑いながら受け取った鍵でドアを開け、シートに座った。
「おっ、これは」
最初はあきらかに困惑していたが、元々欲しかった車とだけあって、次第に明夫は興奮していく。
「いいですな、これは」
「お父さん」
小さな声で朋香がたしなめると、明夫は険しい顔を作ったものの、そこには残念だとはっきりと書いてあった。
そんな明夫に朋香ははぁっと小さくため息を落とした。
「とにかく。
こんな高価なもの、いただけませんから」
「どうしてもダメかな、朋香?」
叱られた子供のようにいじけてしまった尚一郎に驚いた。
オシベの社長といえば不遜で傲慢、そんなイメージでこんな顔をするなんて想像できなかったから。
「……じゃあ、今回限りということで。
今後、こういうことは困りますから」
「今回はいいんだね」
「はい」
ぱっと俯いていた顔を上げた尚一郎は、まるで大型犬、それも細身の……ボルゾイがしっぽを振ってるように見えて、思わずくすりと笑ってしまい、朋香は顔が熱くなる思いがした。
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