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最終話 契約書は婚姻届
7.心から愛してる
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「……このたびは誠に申し訳ございませんでした。
また、和解を受け入れてくださり、ありがとうございます」
「いえ、悪いのは押部会長ではないですので」
「そう云っていただけるとありがたいです」
その後、つつがなく和解の話は終わった。
握手を交わす明夫と尚一郎に、朋香もほっと息をついた。
「じゃあ朋香、帰ろうか」
「え?
でも、荷物とか、なにも準備してないですし」
慌てる朋香にかまわずに、手を掴むと尚一郎はどんどん歩いていく。
「これだけ朋香と離れてて、僕がどんな思いをしてたと思う?
もう、気が狂いそうで仕方なかったよ」
自業自得だとは思うが、黙っておいた。
それに、別れてからもずっと、思っていてくれたのは嬉しい。
「子供はどっちだろう?
男の子かな?
女の子かな?
あ、朋香、そんなかかとの高い靴を履いちゃダメだよ。
転んだらどうするんだい?」
いきなり、ひょいっと尚一郎に抱き抱えられ、慌てて首に抱きついた。
「しょ、尚一郎さん!
下ろしてください!」
「エー、嫌だよー」
すれ違う社員が何事かと朋香たちを見ていて恥ずかしい。
「もう絶対に離さないからね。
朋香もずっと、僕の傍にいてくれるんだろう?」
「嫌だって云っても離れません。
また、離婚して欲しいって云われても、今度は絶対にサインしませんから」
「よかった」
嬉しそうににっこりと笑う尚一郎に朋香も笑い返す。
……今度は絶対に、尚一郎さんをひとりになんてしない。
絶対に絶対に、尚一郎さんを幸せにしてみせるんだ。
駐車場に出ると、車で待っていた高橋がドアを開ける。
「Ich liebe dich von ganzem Herzen(心から愛してる)」
そっと頬にふれる手に見上げると、春の野原のように碧い瞳がじっと見つめていた。
傾きながらゆっくりと近づいてくる顔に目を閉じる。
すぐにバタンと音がして、高橋がドアを閉めた。
【das Ende】
また、和解を受け入れてくださり、ありがとうございます」
「いえ、悪いのは押部会長ではないですので」
「そう云っていただけるとありがたいです」
その後、つつがなく和解の話は終わった。
握手を交わす明夫と尚一郎に、朋香もほっと息をついた。
「じゃあ朋香、帰ろうか」
「え?
でも、荷物とか、なにも準備してないですし」
慌てる朋香にかまわずに、手を掴むと尚一郎はどんどん歩いていく。
「これだけ朋香と離れてて、僕がどんな思いをしてたと思う?
もう、気が狂いそうで仕方なかったよ」
自業自得だとは思うが、黙っておいた。
それに、別れてからもずっと、思っていてくれたのは嬉しい。
「子供はどっちだろう?
男の子かな?
女の子かな?
あ、朋香、そんなかかとの高い靴を履いちゃダメだよ。
転んだらどうするんだい?」
いきなり、ひょいっと尚一郎に抱き抱えられ、慌てて首に抱きついた。
「しょ、尚一郎さん!
下ろしてください!」
「エー、嫌だよー」
すれ違う社員が何事かと朋香たちを見ていて恥ずかしい。
「もう絶対に離さないからね。
朋香もずっと、僕の傍にいてくれるんだろう?」
「嫌だって云っても離れません。
また、離婚して欲しいって云われても、今度は絶対にサインしませんから」
「よかった」
嬉しそうににっこりと笑う尚一郎に朋香も笑い返す。
……今度は絶対に、尚一郎さんをひとりになんてしない。
絶対に絶対に、尚一郎さんを幸せにしてみせるんだ。
駐車場に出ると、車で待っていた高橋がドアを開ける。
「Ich liebe dich von ganzem Herzen(心から愛してる)」
そっと頬にふれる手に見上げると、春の野原のように碧い瞳がじっと見つめていた。
傾きながらゆっくりと近づいてくる顔に目を閉じる。
すぐにバタンと音がして、高橋がドアを閉めた。
【das Ende】
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とってもいいお話しでした。番外編を楽しみにしています!
楽しんでいただけてよかったです!
その後の番外は書く書く詐欺状態になりつつあるので、期待しないで待っていてください……。
はい、番外で子供が生まれてデレデレな尚一郎を書きたいと思いつつ、放置しております……。
余裕ができたら書きますので、気長にお待ちください~。
はじめまして。
いつも更新を楽しみにしていました。
やっと本当のハッピーエンドを迎えられて、嬉しく思う反面、もう更新はないんだと思うと、少し寂しく思います。
出来ましたら、その後のエピソードなど更新していただけると嬉しいです!
更新を楽しみにしていただき、ありがとうございました。
続編を書く予定はないのですが、気が向いたら番外編としてその後を書きたいとは思っております。
気長に待ってくださると嬉しいです。