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第四章 あなたを幸せにするのは……
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その日は、和家さんが探してきた家を見に行った。
「素敵な家ですね」
郊外の閑静な住宅街の中にある、一戸建て。
リビングは大人数呼んでパーティができそうなほど広い。
「寝室だろ、僕の書斎だろ、李依の部屋だろ、李依のご両親が来たときに泊まっていただく部屋と、あとは子供部屋!」
和家さんが最後の部屋を開ける。
そこでは小さな女の子と遊ぶ和家さんと、それを見守っている私の姿が見えた……気がした。
「……え?」
目を擦ったらその風景はもう消えている。
あれって、近い将来が見えていたんだろうか。
「日当たりもいいし、ここが子供部屋に一番いいと思うんだが」
「……ここにしましょう」
するりと口から、言葉が出ていく。
「李依?
だから、子供部屋はここがいいんじゃないかって……」
「そうじゃなくて。
他にもいくつか候補を選んできてくださっている和家さんには悪いんですが。
……この家にしませんか?」
あんな幻が見えたんだから、ここが私たちの運命の家だ。
これ以上の場所なんてきっとない。
「うん。
李依ならきっと、そう言うだろうと思っていたよ」
和家さんが嬉しそうに頷く。
それって……もしかして和家さんにも同じものが見えていた……とか?
まさか、ね。
家も決まり今日は体調がいいのもあって、近くのホテルのカフェでお茶にする。
「ここのレモンスカッシュは絞りたてレモンで作っているから美味しいんだ」
「これは和家様!」
店に入った途端、支配人らしき男性が飛んできた。
「……ちっ」
……今、和家さんが舌打ちした気がするけど、気のせいかな?
「本日は私どものホテルにどのようなご用件で?」
支配人の腰は低いが、どこが棘がある。
あれかな、ライバルホテルのCEOが来たので、警戒しているのかな。
「ちょっとレモンスカッシュを楽しみに来ただけだよ。
悔しいが、ここのが世界一美味しいからね」
はぁっと残念そうに和家さんがため息をつく。
「お褒めいただいて光栄でございます。
よろしければこちらにどうぞ」
一触即発なんだろうかと心配していたが、大人な対応で個室へと案内された。
そういうところは凄く格好いいし、尊敬しちゃう。
「ここはレモンスカッシュは最高だが、スタッフの対応がいまいちなんだよな」
ふたりになった途端、和家さんが苦笑いを漏らす。
「僕が来たくらいであんなに敵対心燃やすことないだろ。
あーあ、ほんとに惜しいな」
彼の愚痴は続いていくが支配人の態度を目の当たりにしているだけに、私も苦笑いしかできなかった。
すぐに頼んだレモンスカッシュが出てくる。
「ほんとだ、凄く美味しいです!」
レモンの香りが自然だし、酸味もいい感じだ。
これならついているシロップは入れなくていいかも。
「だろ?
絶妙な配合で最高なんだよな」
笑いながら和家さんもストローを咥えた。
わざわざこれを飲むためだけにここに来るのも頷ける。
「このあと、李依の調子がよければ家具を見に行こうと思うんだが……」
「Yusuke,Imissed you!(悠将、会いたかったー!)」
「……は?」
なんの予告もなくいきなりドアが開き、金髪の女性が飛び込んでくる。
しかも彼女は、後ろから和家さんに抱きついた。
「Janis,there you are(ジャニス、いたのか)」
「We're in Japan at the sametime,it's fate!(同じタイミングで日本にいるなんて、これはもう運命よね!)」
かわされる英語の会話を、固まったまま聞いていた。
和家さんはものすごーく迷惑そうな顔をしているのに、女性は熱烈に迫っている。
しかも、その頬にキスまでしそうでむかっときた。
さすがに、和家さんに手に阻まれたが。
「That's enough,Janis(いい加減にしてくれ、ジャニス)」
本当に嫌そうに和家さんが彼女を引き剥がす。
「I'm already married to her(僕はもう、彼女と結婚したんだ)」
さりげなく隣に座る私の肩を抱き、彼が左手薬指に嵌まる指環を証明するかのように彼女に見せる。
「Who is she?(誰、その女?)」
ようやく彼女の目がこちらを向いた。
憎々しく私を睨むその目に、ぶるりと身体が震える。
「僕の妻の李依。
李依、彼女はこのホテルのオーナーの、ジャニス」
「はじめまして、ジャニスさん」
和家さんから紹介され、社交辞令的に挨拶をする。
しかし彼女は私を睨んだまま、黙って近くの椅子に座った。
「......I never hear do fmarriage(結婚なんて聞いてない)」
頬を膨らませ、不機嫌そうにぼそっと落とした彼女は、こんなときじゃなければ可愛く見えたかもしれない。
「だって結婚したのは、三日……四日前だっけ?
李依?」
私にわかるようにか、和家さんは日本語で答えている。
きっと彼女もわかるのだろう。
しかし、ここで私に振ってこないでほしい。
「……四日前、です」
「そうそう、四日前。
だから本当に新婚ほやほやなんだ」
和家さんがだらしなく顔を崩してジャニスさんに答えているが、それって逆効果じゃないですか?
「Four days ago is not recently!(四日前って最近じゃない!)
We didn't talk about that when we met the otherday!(このあいだ会ったとき、そんな話してなかった!)
Why is this happening all of asudden!(なんで急にそんなことになっているの!?)」
和家さんの襟元を掴み、ジャニスさんがぐらんぐらんと激しく揺らす。
英語で捲したてているのでなんと言っているのかわからないが、凄く怒っているのははわかる。
なんとなく、なんでそんなに急に結婚したの?
……あたりかなとは見当はつくが。
「なんでって……子供ができたんだ」
和家さんは嬉しくてたまんないってでれでれしているが、あのー、もうそろそろやめませんか?
ジャニスさんが少しずつ赤くなっていっているので……。
「Baby!?」
とうとうジャニスさんが悲鳴にも似た声を上げる。
「What do you mean,baby?!(どういうことなの、子供って!)
Why are you having a baby?(なんで子供なんて作ってるの!?)」
また彼女が和家さんをぐらぐらと揺らす。
「僕がそれだけ、李依を愛しているだけだが?
李依とだったら幸せになれると思うし、僕も李依を幸せにするからな。
だから、李依との子供が欲しいと思った。
それ以外の理由はない」
ジャニスさんを見る和家さんの目はとても穏やかだった。
そのせいか、和家さんから手を離し、椅子に座り直す。
「I knew there was nothing I could say to Yusuke(悠将になにを言っても無駄だって言うのはわかった)」
悔しそうに俯いた彼女が、どんな顔をしているのかなんてわからない。
それでも、納得したのかと思ったが。
「But I'm not giving up!(でも私は、諦めたわけじゃないから!)」
ガタッと大きな音を立てて勢いよく椅子から立ち上がった彼女から、ビシッ!と鼻先に指を突きつけられた。
「え……」
「覚悟してなさい!」
ふーん!と力一杯鼻から息を吹きだし、彼女はさっさと部屋を出ていった。
「ええっと……」
あれって、宣戦布告されたのかな……?
最後だけ、日本語だったし。
「さあ。
面倒なことになったね、李依」
とか言いつつ、和家さんはおかしそうにくつくつ笑っている。
「面白がらないでくださいよ……」
今は自分の身体だけで精一杯なのに、他の問題は遠慮したい……。
「大丈夫だ、僕はなにがあっても李依以外の女に絶対になびかないからな」
和家さんが器用に、眼鏡の奥で片目をつぶってみせる。
「だと、いいんですけど」
「なんだ李依、疑っているのか?
心外だな」
「え、疑っているなんて、そんな」
心底残念そうに彼がため息を落とし、慌ててしまう。
「まだ僕がどれだけ李依を愛しているのか理解していないのか?」
椅子ごと寄ってきた和家さんの顔がすぐ傍にある。
近すぎる、と思ったときにはちゅっとキスされていた。
「これからもっともっと、わからせていくけどな」
ふふっと楽しそう笑って彼が離れる。
それがとても幸せそうで、心の中が温かくなった。
「それよりさっき李依、ヤキモチ妬いていただろ?
むすーっと黙ってさ」
「えっ、あっ、その」
くすくす笑いながら、和家さんが私の顔に口付けの雨を降らせてくる。
おかげで顔が燃えているんじゃないかというほど熱い。
「ヤキモチなんて、そんな」
「李依がヤキモチを妬いてくれるだなんて嬉しいな」
彼の口付けは止まらない。
それがくすぐったくて嬉しい。
……でも。
不安で不安で仕方ないのだ。
私と和家さんを結ぶものは子供しかない。
子供ができなければきっと、結婚なんてしなかった。
和家さんが私を愛してくれていると理解していても、不安はいつまで経ってもなくならない……。
「素敵な家ですね」
郊外の閑静な住宅街の中にある、一戸建て。
リビングは大人数呼んでパーティができそうなほど広い。
「寝室だろ、僕の書斎だろ、李依の部屋だろ、李依のご両親が来たときに泊まっていただく部屋と、あとは子供部屋!」
和家さんが最後の部屋を開ける。
そこでは小さな女の子と遊ぶ和家さんと、それを見守っている私の姿が見えた……気がした。
「……え?」
目を擦ったらその風景はもう消えている。
あれって、近い将来が見えていたんだろうか。
「日当たりもいいし、ここが子供部屋に一番いいと思うんだが」
「……ここにしましょう」
するりと口から、言葉が出ていく。
「李依?
だから、子供部屋はここがいいんじゃないかって……」
「そうじゃなくて。
他にもいくつか候補を選んできてくださっている和家さんには悪いんですが。
……この家にしませんか?」
あんな幻が見えたんだから、ここが私たちの運命の家だ。
これ以上の場所なんてきっとない。
「うん。
李依ならきっと、そう言うだろうと思っていたよ」
和家さんが嬉しそうに頷く。
それって……もしかして和家さんにも同じものが見えていた……とか?
まさか、ね。
家も決まり今日は体調がいいのもあって、近くのホテルのカフェでお茶にする。
「ここのレモンスカッシュは絞りたてレモンで作っているから美味しいんだ」
「これは和家様!」
店に入った途端、支配人らしき男性が飛んできた。
「……ちっ」
……今、和家さんが舌打ちした気がするけど、気のせいかな?
「本日は私どものホテルにどのようなご用件で?」
支配人の腰は低いが、どこが棘がある。
あれかな、ライバルホテルのCEOが来たので、警戒しているのかな。
「ちょっとレモンスカッシュを楽しみに来ただけだよ。
悔しいが、ここのが世界一美味しいからね」
はぁっと残念そうに和家さんがため息をつく。
「お褒めいただいて光栄でございます。
よろしければこちらにどうぞ」
一触即発なんだろうかと心配していたが、大人な対応で個室へと案内された。
そういうところは凄く格好いいし、尊敬しちゃう。
「ここはレモンスカッシュは最高だが、スタッフの対応がいまいちなんだよな」
ふたりになった途端、和家さんが苦笑いを漏らす。
「僕が来たくらいであんなに敵対心燃やすことないだろ。
あーあ、ほんとに惜しいな」
彼の愚痴は続いていくが支配人の態度を目の当たりにしているだけに、私も苦笑いしかできなかった。
すぐに頼んだレモンスカッシュが出てくる。
「ほんとだ、凄く美味しいです!」
レモンの香りが自然だし、酸味もいい感じだ。
これならついているシロップは入れなくていいかも。
「だろ?
絶妙な配合で最高なんだよな」
笑いながら和家さんもストローを咥えた。
わざわざこれを飲むためだけにここに来るのも頷ける。
「このあと、李依の調子がよければ家具を見に行こうと思うんだが……」
「Yusuke,Imissed you!(悠将、会いたかったー!)」
「……は?」
なんの予告もなくいきなりドアが開き、金髪の女性が飛び込んでくる。
しかも彼女は、後ろから和家さんに抱きついた。
「Janis,there you are(ジャニス、いたのか)」
「We're in Japan at the sametime,it's fate!(同じタイミングで日本にいるなんて、これはもう運命よね!)」
かわされる英語の会話を、固まったまま聞いていた。
和家さんはものすごーく迷惑そうな顔をしているのに、女性は熱烈に迫っている。
しかも、その頬にキスまでしそうでむかっときた。
さすがに、和家さんに手に阻まれたが。
「That's enough,Janis(いい加減にしてくれ、ジャニス)」
本当に嫌そうに和家さんが彼女を引き剥がす。
「I'm already married to her(僕はもう、彼女と結婚したんだ)」
さりげなく隣に座る私の肩を抱き、彼が左手薬指に嵌まる指環を証明するかのように彼女に見せる。
「Who is she?(誰、その女?)」
ようやく彼女の目がこちらを向いた。
憎々しく私を睨むその目に、ぶるりと身体が震える。
「僕の妻の李依。
李依、彼女はこのホテルのオーナーの、ジャニス」
「はじめまして、ジャニスさん」
和家さんから紹介され、社交辞令的に挨拶をする。
しかし彼女は私を睨んだまま、黙って近くの椅子に座った。
「......I never hear do fmarriage(結婚なんて聞いてない)」
頬を膨らませ、不機嫌そうにぼそっと落とした彼女は、こんなときじゃなければ可愛く見えたかもしれない。
「だって結婚したのは、三日……四日前だっけ?
李依?」
私にわかるようにか、和家さんは日本語で答えている。
きっと彼女もわかるのだろう。
しかし、ここで私に振ってこないでほしい。
「……四日前、です」
「そうそう、四日前。
だから本当に新婚ほやほやなんだ」
和家さんがだらしなく顔を崩してジャニスさんに答えているが、それって逆効果じゃないですか?
「Four days ago is not recently!(四日前って最近じゃない!)
We didn't talk about that when we met the otherday!(このあいだ会ったとき、そんな話してなかった!)
Why is this happening all of asudden!(なんで急にそんなことになっているの!?)」
和家さんの襟元を掴み、ジャニスさんがぐらんぐらんと激しく揺らす。
英語で捲したてているのでなんと言っているのかわからないが、凄く怒っているのははわかる。
なんとなく、なんでそんなに急に結婚したの?
……あたりかなとは見当はつくが。
「なんでって……子供ができたんだ」
和家さんは嬉しくてたまんないってでれでれしているが、あのー、もうそろそろやめませんか?
ジャニスさんが少しずつ赤くなっていっているので……。
「Baby!?」
とうとうジャニスさんが悲鳴にも似た声を上げる。
「What do you mean,baby?!(どういうことなの、子供って!)
Why are you having a baby?(なんで子供なんて作ってるの!?)」
また彼女が和家さんをぐらぐらと揺らす。
「僕がそれだけ、李依を愛しているだけだが?
李依とだったら幸せになれると思うし、僕も李依を幸せにするからな。
だから、李依との子供が欲しいと思った。
それ以外の理由はない」
ジャニスさんを見る和家さんの目はとても穏やかだった。
そのせいか、和家さんから手を離し、椅子に座り直す。
「I knew there was nothing I could say to Yusuke(悠将になにを言っても無駄だって言うのはわかった)」
悔しそうに俯いた彼女が、どんな顔をしているのかなんてわからない。
それでも、納得したのかと思ったが。
「But I'm not giving up!(でも私は、諦めたわけじゃないから!)」
ガタッと大きな音を立てて勢いよく椅子から立ち上がった彼女から、ビシッ!と鼻先に指を突きつけられた。
「え……」
「覚悟してなさい!」
ふーん!と力一杯鼻から息を吹きだし、彼女はさっさと部屋を出ていった。
「ええっと……」
あれって、宣戦布告されたのかな……?
最後だけ、日本語だったし。
「さあ。
面倒なことになったね、李依」
とか言いつつ、和家さんはおかしそうにくつくつ笑っている。
「面白がらないでくださいよ……」
今は自分の身体だけで精一杯なのに、他の問題は遠慮したい……。
「大丈夫だ、僕はなにがあっても李依以外の女に絶対になびかないからな」
和家さんが器用に、眼鏡の奥で片目をつぶってみせる。
「だと、いいんですけど」
「なんだ李依、疑っているのか?
心外だな」
「え、疑っているなんて、そんな」
心底残念そうに彼がため息を落とし、慌ててしまう。
「まだ僕がどれだけ李依を愛しているのか理解していないのか?」
椅子ごと寄ってきた和家さんの顔がすぐ傍にある。
近すぎる、と思ったときにはちゅっとキスされていた。
「これからもっともっと、わからせていくけどな」
ふふっと楽しそう笑って彼が離れる。
それがとても幸せそうで、心の中が温かくなった。
「それよりさっき李依、ヤキモチ妬いていただろ?
むすーっと黙ってさ」
「えっ、あっ、その」
くすくす笑いながら、和家さんが私の顔に口付けの雨を降らせてくる。
おかげで顔が燃えているんじゃないかというほど熱い。
「ヤキモチなんて、そんな」
「李依がヤキモチを妬いてくれるだなんて嬉しいな」
彼の口付けは止まらない。
それがくすぐったくて嬉しい。
……でも。
不安で不安で仕方ないのだ。
私と和家さんを結ぶものは子供しかない。
子供ができなければきっと、結婚なんてしなかった。
和家さんが私を愛してくれていると理解していても、不安はいつまで経ってもなくならない……。
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