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第五章 これはワルイコトですか?
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携帯の通知音で目が覚めた。
「ん……」
まだ眠たい眼を開け、携帯を手に取る。
そこには炯さんから空港に着いたとメッセージが入っていた。
「起きなきゃ……」
起き上がったものの、そのままぽすっと前向きに倒れ込む。
いやいや、そんな場合じゃないんだって。
「うーっ」
根性で今度こそ起き上がった。
炯さんをお出迎えするために、通知をONにして寝たのだ。
起きなきゃ、意味がない。
「顔洗おう……」
ふらふらと洗面所へ向かい、顔を洗う。
それでようやく、頭がすっきりした。
ついでに、浴槽にお湯を張る。
帰ってきたらゆっくり、手足を伸ばしてお風呂に浸かりたいかもしれないし。
着替えまではしないが、簡単に身支度を調える。
まさか、寝起きのままでお出迎えなんてできない。
コーヒーを淹れてゆっくりと飲む。
飲み終わって簡単に片付けを済ませた頃、ドアの開く音がした。
「おかえりなさい」
「びっくりした。
まさか、寝ないで待っていたのか」
私を抱き締め、軽く炯さんがキスしてくる。
「ちょっと早めに寝て、起きました」
もうすぐ四時半になろうかという頃。
少しの早起きだと思えば、さほどつらくない。
「もしかして起こしたか?」
眼鏡の下で彼の眉間に皺が寄る。
たぶん、メッセージを送って起こしたんじゃないかと気にしている。
でも、いつもは夜間、通知を切っているのに、ONにして寝たのは私だ。
ううんと首を振り、彼を促して一緒にリビングへと行く。
「できれば起きて、炯さんをお出迎えしたかったから……」
「凛音は可愛いな!」
ソファーに座り、炯さんはまた私に抱きついて口付けを落としてきた。
それが、くすぐったくて心地いい。
「でも、そういう無理はしないでいい」
そっと、私の頬に触れる彼は真剣だ。
「私も早く、炯さんに会いたかっただけですので」
手を伸ばし、彼に抱きついてその胸に顔をうずめる。
ひさしぶりに感じる、炯さんの体温。
ひさしぶりに嗅ぐ、彼の匂い。
それらが、私を満たしていく。
……そうか。
炯さんの言う〝凛音切れ〟ってこれなんだ。
私も、炯さん切れを起こしていたんだな。
「そういう可愛いことを言われると、今すぐ抱きたくなるんだけど」
私のつむじに口付けを落としながら、彼はシャツの裾から手を侵入させてきた。
「あの、お疲れなのでは?」
「いや?
飛行機の中で寝てたしな。
それより、直に繋がって充電しないとヤバいんだ」
「……ん」
彼の指が胸に触れ、甘い吐息が私の鼻から抜けていく。
「な、いいだろ?」
「あっ……」
返事など待たず、炯さんが私をソファーに押し倒す。
そのまま……。
目が覚めたが、室内はまだ暗い。
「何時……」
手探りで携帯を探し、時間を確認する。
とっくにお昼を越えていた。
そうか、遮光カーテンだから暗いんだ。
「ふふっ」
私の隣で、炯さんはぐっすり眠っている。
疲れていないなんて言っていたけれど、やっぱりお疲れだったらしい。
それにあれだけ、私を貪れば……ね。
「ん……。
凛音、起きたのか……?」
私が目覚めたのに気づいたのか、まだ眠そうに彼が瞼を開ける。
「まだ寝ていていいですよ。
私ももう少し、寝たいです」
「じゃあ、そうする……」
とろとろと炯さんの声が溶けていき、すぐに気持ちよさそうな寝息に変わっていた。
それが嬉しくて、私も身体を寄せて目を閉じる。
一緒に暮らし始めてすぐに、スミさんから言われたのだ。
『坊ちゃんが朝まで一緒に過ごす女性は初めてです』
って。
炯さんはひとりでないと、眠れないのらしい。
だから女性を連れ込んでも、コトが終われば追い返していた。
もっとも、女性を連れ込むの自体が稀だったそうだが。
そんな彼が、私の隣でぐっすり眠っている。
これはそれだけ、私に気を許してくれているってうぬぼれてもいいよね?
「だーい好き、炯さん……」
無意識、なのか彼の腕が私を抱き寄せる。
炯さんの体温が心地よくて、私もまた眠りへと沈んでいった。
「ん……」
まだ眠たい眼を開け、携帯を手に取る。
そこには炯さんから空港に着いたとメッセージが入っていた。
「起きなきゃ……」
起き上がったものの、そのままぽすっと前向きに倒れ込む。
いやいや、そんな場合じゃないんだって。
「うーっ」
根性で今度こそ起き上がった。
炯さんをお出迎えするために、通知をONにして寝たのだ。
起きなきゃ、意味がない。
「顔洗おう……」
ふらふらと洗面所へ向かい、顔を洗う。
それでようやく、頭がすっきりした。
ついでに、浴槽にお湯を張る。
帰ってきたらゆっくり、手足を伸ばしてお風呂に浸かりたいかもしれないし。
着替えまではしないが、簡単に身支度を調える。
まさか、寝起きのままでお出迎えなんてできない。
コーヒーを淹れてゆっくりと飲む。
飲み終わって簡単に片付けを済ませた頃、ドアの開く音がした。
「おかえりなさい」
「びっくりした。
まさか、寝ないで待っていたのか」
私を抱き締め、軽く炯さんがキスしてくる。
「ちょっと早めに寝て、起きました」
もうすぐ四時半になろうかという頃。
少しの早起きだと思えば、さほどつらくない。
「もしかして起こしたか?」
眼鏡の下で彼の眉間に皺が寄る。
たぶん、メッセージを送って起こしたんじゃないかと気にしている。
でも、いつもは夜間、通知を切っているのに、ONにして寝たのは私だ。
ううんと首を振り、彼を促して一緒にリビングへと行く。
「できれば起きて、炯さんをお出迎えしたかったから……」
「凛音は可愛いな!」
ソファーに座り、炯さんはまた私に抱きついて口付けを落としてきた。
それが、くすぐったくて心地いい。
「でも、そういう無理はしないでいい」
そっと、私の頬に触れる彼は真剣だ。
「私も早く、炯さんに会いたかっただけですので」
手を伸ばし、彼に抱きついてその胸に顔をうずめる。
ひさしぶりに感じる、炯さんの体温。
ひさしぶりに嗅ぐ、彼の匂い。
それらが、私を満たしていく。
……そうか。
炯さんの言う〝凛音切れ〟ってこれなんだ。
私も、炯さん切れを起こしていたんだな。
「そういう可愛いことを言われると、今すぐ抱きたくなるんだけど」
私のつむじに口付けを落としながら、彼はシャツの裾から手を侵入させてきた。
「あの、お疲れなのでは?」
「いや?
飛行機の中で寝てたしな。
それより、直に繋がって充電しないとヤバいんだ」
「……ん」
彼の指が胸に触れ、甘い吐息が私の鼻から抜けていく。
「な、いいだろ?」
「あっ……」
返事など待たず、炯さんが私をソファーに押し倒す。
そのまま……。
目が覚めたが、室内はまだ暗い。
「何時……」
手探りで携帯を探し、時間を確認する。
とっくにお昼を越えていた。
そうか、遮光カーテンだから暗いんだ。
「ふふっ」
私の隣で、炯さんはぐっすり眠っている。
疲れていないなんて言っていたけれど、やっぱりお疲れだったらしい。
それにあれだけ、私を貪れば……ね。
「ん……。
凛音、起きたのか……?」
私が目覚めたのに気づいたのか、まだ眠そうに彼が瞼を開ける。
「まだ寝ていていいですよ。
私ももう少し、寝たいです」
「じゃあ、そうする……」
とろとろと炯さんの声が溶けていき、すぐに気持ちよさそうな寝息に変わっていた。
それが嬉しくて、私も身体を寄せて目を閉じる。
一緒に暮らし始めてすぐに、スミさんから言われたのだ。
『坊ちゃんが朝まで一緒に過ごす女性は初めてです』
って。
炯さんはひとりでないと、眠れないのらしい。
だから女性を連れ込んでも、コトが終われば追い返していた。
もっとも、女性を連れ込むの自体が稀だったそうだが。
そんな彼が、私の隣でぐっすり眠っている。
これはそれだけ、私に気を許してくれているってうぬぼれてもいいよね?
「だーい好き、炯さん……」
無意識、なのか彼の腕が私を抱き寄せる。
炯さんの体温が心地よくて、私もまた眠りへと沈んでいった。
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