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第四章 ワルイコトをはじめます
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真面目な話が終わったからか、炯さんは私のつむじにずっと、口付けを落としている。
なんだかその甘さが、いいなって思っていた。
「土産を買ってきたんだ」
傍らに置いてあった大きな紙包みを、炯さんが渡してくれる。
「ありがとうございます。
開けてもいいですか?」
「ああ」
丁寧に包みを剥がしていく。
中からはらくだのぬいぐるみが出てきた。
「えっと……」
炯さんは私を妹としてみているんだと思っていたが、もしかしてそれは今現在同じ年の彼女ではなく、幼き頃の妹さんなんだろうか。
「いやー、らくだを見る機会があって、なんかに似てるなと思ったんだよな」
「はぁ……」
今回の出張はサウジアラビア周辺だったらしいので、彼がらくだに遭遇していてもおかしくない。
それよりも、なんか嫌な予感がするんだよねー。
「それからずっともやもやしたまま過ごしてたんだけど、店に積まれているこれを見てさ」
軽く炯さんは、らくだの頭をぽんぽんと叩いた。
「凛音にそっくりだって気づいたんだよね」
彼は上機嫌だが、私はなんともいえない気持ちでらくだの顔を見ていた。
これは喜ぶべき……なのか?
「そんなに似てますか……?」
笑顔が引き攣らないか気を遣う。
しかしそんな私の気持ちを知らないのか。
「ああ。
この、大きな垂れた目がそっくりだ!」
にぱっと実に嬉しそうに炯さんが笑う。
その笑顔はとても眩しくて、つい目を細めてしまう。
それに、そんなに彼が喜んでいるならいいかという気になっていた。
「あとは、これ」
私の手を取り、彼が小箱をのせる。
「開けても?」
「ああ」
了解をもらい、蓋に手をかける。
箱の形状からだいたいなにが入っているか推測はついたが、それでもどきどきした。
「指環?」
ケースの中から出てきたのは、ピンクゴールドのリングの中央にダイヤを配した指環だった。
リングはダイヤを中心に緩くウェーブしていて、それがいいアクセントになっている。
「結納のときって話だったけど、早く凛音に渡したかったんだ」
指環を取り出し、彼が私の左手を取る。
じっと、彼がなにをするのか見ていた。
私の左手薬指に指環を嵌め、持ち上げる。
レンズ越しに私の目を見つめたまま、見せつけるように指環に彼が口付けを落とす。
「……これで凛音は、俺のものだ」
眼鏡を外した彼の顔が、ゆっくりと傾きながら近づいてくる。
私も目を閉じて彼を待った。
ちろりと唇を舐められ、素直に口を開く。
すぐに彼が入ってきて、私を捕まえる。
静かな部屋の中には私たちが立てる、淫靡な水音だけが聞こえていた。
いつの間にか押し倒され、炯さんに見下ろされる。
「……な。
このまま抱いていいか?
凛音切れ起こして死にそうなんだ」
「んっ、あ……」
私の返事など待たず、耳朶を舐め上げながら彼が服の中へと手を侵入させてくる。
それでも。
「……あの。
せめてベッドでお願いします……」
私も先ほどのキスでスイッチは入っていた。
それでも恥じらいとかあるわけで。
「わかった」
「きゃっ」
勢いよく抱き上げられ、その首に掴まる。
そのまま寝室へと連れていかれ、そのあとは意識が飛ぶまで愛された。
なんだかその甘さが、いいなって思っていた。
「土産を買ってきたんだ」
傍らに置いてあった大きな紙包みを、炯さんが渡してくれる。
「ありがとうございます。
開けてもいいですか?」
「ああ」
丁寧に包みを剥がしていく。
中からはらくだのぬいぐるみが出てきた。
「えっと……」
炯さんは私を妹としてみているんだと思っていたが、もしかしてそれは今現在同じ年の彼女ではなく、幼き頃の妹さんなんだろうか。
「いやー、らくだを見る機会があって、なんかに似てるなと思ったんだよな」
「はぁ……」
今回の出張はサウジアラビア周辺だったらしいので、彼がらくだに遭遇していてもおかしくない。
それよりも、なんか嫌な予感がするんだよねー。
「それからずっともやもやしたまま過ごしてたんだけど、店に積まれているこれを見てさ」
軽く炯さんは、らくだの頭をぽんぽんと叩いた。
「凛音にそっくりだって気づいたんだよね」
彼は上機嫌だが、私はなんともいえない気持ちでらくだの顔を見ていた。
これは喜ぶべき……なのか?
「そんなに似てますか……?」
笑顔が引き攣らないか気を遣う。
しかしそんな私の気持ちを知らないのか。
「ああ。
この、大きな垂れた目がそっくりだ!」
にぱっと実に嬉しそうに炯さんが笑う。
その笑顔はとても眩しくて、つい目を細めてしまう。
それに、そんなに彼が喜んでいるならいいかという気になっていた。
「あとは、これ」
私の手を取り、彼が小箱をのせる。
「開けても?」
「ああ」
了解をもらい、蓋に手をかける。
箱の形状からだいたいなにが入っているか推測はついたが、それでもどきどきした。
「指環?」
ケースの中から出てきたのは、ピンクゴールドのリングの中央にダイヤを配した指環だった。
リングはダイヤを中心に緩くウェーブしていて、それがいいアクセントになっている。
「結納のときって話だったけど、早く凛音に渡したかったんだ」
指環を取り出し、彼が私の左手を取る。
じっと、彼がなにをするのか見ていた。
私の左手薬指に指環を嵌め、持ち上げる。
レンズ越しに私の目を見つめたまま、見せつけるように指環に彼が口付けを落とす。
「……これで凛音は、俺のものだ」
眼鏡を外した彼の顔が、ゆっくりと傾きながら近づいてくる。
私も目を閉じて彼を待った。
ちろりと唇を舐められ、素直に口を開く。
すぐに彼が入ってきて、私を捕まえる。
静かな部屋の中には私たちが立てる、淫靡な水音だけが聞こえていた。
いつの間にか押し倒され、炯さんに見下ろされる。
「……な。
このまま抱いていいか?
凛音切れ起こして死にそうなんだ」
「んっ、あ……」
私の返事など待たず、耳朶を舐め上げながら彼が服の中へと手を侵入させてくる。
それでも。
「……あの。
せめてベッドでお願いします……」
私も先ほどのキスでスイッチは入っていた。
それでも恥じらいとかあるわけで。
「わかった」
「きゃっ」
勢いよく抱き上げられ、その首に掴まる。
そのまま寝室へと連れていかれ、そのあとは意識が飛ぶまで愛された。
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