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第四章 ワルイコトをはじめます

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目を開けたら、炯さんの顔が見えた。
なにが楽しいのか、眼鏡をかけて肘枕で、私の顔を見下ろしている。

「おはよう、凛音」

私が目覚めたと気づき、眼鏡越しに目のあった彼はふふっと小さく笑って口付けを落としてきた。

「身体、つらくないか?」

「えっ、あっ、はい。
……大丈夫、です」

なんだか彼の顔を見られなくて、もそもそと布団を顔の上まで引き上げる。
もう二度目なんだし、恥ずかしがる必要はないのはわかっている。
それでも、どんな顔をしていいのかわからなかった。



炯さんのもとへと移って一日目は、酔い潰れて寝落ちるという不甲斐ない結果に終わった。

『俺と一緒のとき以外は、外で酒を飲まないこと。
わかったな』

起きたあと、きつーく彼から約束させられたが、仕方ない。
私も悪かったし。

遅い朝食……というよりもブランチを摂り、本宅へと戻ってきたのがお昼過ぎ。
それからシアタールームで一緒に映画を観て、シェフの作り置き料理で夕食を食べた。
それで、夜は……。

「凛音」

ベッドの上、横たわる私を炯さんが見下ろしている。

「スケジュールにも入れていたが、明日から一週間、出張なんだ」

もう知っていたけれど、昨日今日と楽しかっただけに淋しくなった。

「そんな顔をするな。
行きたくなくなるだろ」

ふふっと困ったように小さく笑い、彼が私の髪を撫でてくる。

「……ごめんなさい」

自分でもいけないってわかっている。
それに、今までは両親が不在でひとりでも、淋しいなどと思ったことはなかった。
でも、炯さんがいないと聞くと、淋しくなっちゃうのはなんでなんだろう。

「いや、いい。
それだけ凛音が、俺がいないのを淋しく思ってくれているのは嬉しいからな」

証明するかのように、軽く口付けが落とされた。

「それに俺も、しばらく凛音に触れられないのは淋しい。
だから」

彼の長い指が、私の胸をとん、と突く。

「この身体に忘れないように俺を刻み込むし、俺も凛音のぬくもりを刻みつける。
いいか?」

レンズの向こうから蠱惑的に光る瞳が私を見ている。

「……はい」

まるでその瞳に操られるかのようにこくんとひとつ、頷いた。

「……凛音」

彼の熱い声が、私の鼓膜を甘く揺らす。
あっという間に着ていたものを奪われ、彼の舌で、指で、天国へと何度も導かれた。

「挿れるぞ」

「んっ、あっ、ああっ」

燃えるように熱い雄槍が、私のいたいけな媚壁を擦りあげながら侵入してくる。
それだけでぞわぞわとした感覚が背筋を暴れ回り、気が狂いそうだ。

「凛音」

軽く頬を叩かれ、きつく閉じていた瞼を開ける。

「一回シただけなのに凛音の胎内、しっかり俺の形を覚えてるんだな」

嬉しそうになにを言われているのかわからなかったが、すぐに自分でも気づいた。
彼のものがしっくりと、私の身体に馴染んでいる。

「身体の相性、最高だな、俺た、ちっ!」

「んあーっ!」

いきなり奥を撞きあげられ、限界まで眼を見開き、背中を仰け反らせた。

「気持ちよさそうだな、凛音」

「んっ、あっ、ああっ、ああーっ!」

ガツガツと乱雑に撞かれ、意識は真っ白に染まっていく。
おかげで彼の声は私の耳には届かない。

「あっ、はぁっ」

強い刺激を与えられ続け、果てがもう来るのだと自覚した。
でも、ひとりでそこに至るのが、……怖い。

「炯っ、さん……!」

「ん」

縋るように出した手を、彼が握ってくれる。
それで、安心し……。

「はぁっ、んんっ、あっ、あっ、ああーっ!」

……果てた。

「手を握られてイく癖でもついたのか?」

おかしそうにくすくすと笑いながら、まだ荒い息をしている私の髪を撫でてくれる。

「だって」

彼に手を握られると、全部を任せていいんだって気になれて、安心して達せた。
癖といわれれば、そうなのかも。

「じゃあ、徹底的に俺がいないとイケないように、覚え込ませてしまおうか」

炯さんの目が怪しく光る。
そして……。
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