私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第一章 初めてのワルイコト

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「じゃあ」

ゆっくりと彼が私の胎内なかに入ってきて、みしりと音がした気がした。
まだ彼の指しか迎え入れたことのない隧道を、彼は進んでいく。

「んっ、んんっ、んっ」

「力、抜け」

そう言われても緊張からか、身体に入った力は抜けない。

「茜。
目を開けろ」

声をかけられて、きつく閉じていた瞼を開けた。
そこには、心配そうなコマキさんの顔が見える。

「もう、挿入はいりましたか……?」

「まだ、先っちょだけだ」

困ったように笑い、コマキさんは軽く口付けしてきた。

「ううっ……」

これでまだ先端だけなんて、先はまだまだ長くて挫けそうだ。

「ゆっくり、深呼吸しろ」

促すように彼が私の頭を撫でる。
頷いて言われるように深呼吸しようと努力した。
それにあわせて、徐々に彼が胎内へと侵入してくる。

「痛いっ……!」

さらに少し進められたところで、激しい痛みが私を襲ってきた。

「いたっ、痛い……」

「やめるか?」

私が痛がり、コマキさんはきつく眉根を寄せて聞いてくれた。
それに涙目で首を振る。

「大丈夫、だから。
続けてください」

正直に言えば、我慢するのがやっとなくらい、痛い。
でも、これは私が、何者にも支配されず私としてやった行為の証し。
だから、最後までやりとおしたかった。

「わかった」

さらに気遣うように、彼が慎重に腰を進める。

「茜」

軽く頬を叩かれ、知らず知らずまた、きつく閉じていた目を開けた。

「全部、挿入った」

安心させるかのように、コマキさんが私に微笑みかける。

「……はい」

なんだか私も嬉しくて、自然と笑顔になっていた。

私を気遣いながら、ゆっくりと彼が身体を動かす。
私の蜜道はいまだじくじくと痛んでいたが、先ほどまでの激しい痛みはなかった。
あとは終わるまで、耐えればいい。
そう、思っていた、が。

「ああっ」

痛みが治まるにつれて、甘美な疼きが私を襲ってくる。

「気持ちいい、か」

その問いには答えられず、枕をきつく握りしめた。

「あっ、はっ、ああっ」

彼が奥を撞くたび、水鉄砲で撃たれたかのように頭が白く塗られる。
それはどんどんと私の頭の中を埋め尽くしていった。

……ダメだ、これ。
頭、おかしくなる……!

「……手」

「ん?」

「手、手を握ってください……!」

「いいよ」

さっきと同じように、今度は両手を握ってくれる。
それで安心できるのは、刷り込みなんだろうか。

「イっていいよ、茜」

促すように彼の動きが速くなっていく。
自分でも、そのときが近いのがわかった。
――そして。

「あっ、あっ、ああーっ!」

身体がこわばり、悲鳴じみた声を上げる。
同時に、薄い膜越しにどくっ、どくっと白濁が吐き出されるのを感じた。
次第に身体から力が抜け、視界が戻ってくる。

「満足したか」

「……はい」

これ以上ないほどの満足感が私の身体を支配する。
結婚前の女性が男性と関係を持つなんて、両親は激怒するだろう。
わかっていて、やった。
そうしたかった。

「コマキさん。
……好きです」

好意はあるが、この言葉に愛だの恋だのはない。
ただ、私は素敵な殿方と恋がしたいという願いを叶えたかったのだ。

「俺も茜が好きだよ」

きっと彼もそれをわかっている。
わかっていて、付き合ってくれる彼は優しい。
私が普通の一般人なら彼との恋もこれからあったかもしれないのにな。

「おやすみ」

優しい口付けを最後に、私の意識は眠りの帳の向こうへと閉ざされた。
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