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第3章 スパダリとの生活は常識じゃ計れませんでした
2.ペアの指環の意味、とは
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指環を買った日。
家でようやく、佑司は箱を開けた。
「チー、手、出して」
嫌々、だけど右手を出す。
でも強引に左手を掴まれた。
「俺はこっちに嵌めたいんだ」
「仮押さえの印だからって、右手で納得したじゃないですか!」
こんなことなら買わなきゃよかった、なんて後悔したってもう遅い。
「だって俺、モテるし?
だったら、左手につけてないと意味ないし?
それなら、チーも左手じゃないとおかしいし?」
あんたがモテるなんて知らん。
あ、いや、モテるのは知っている。
飲み会のときとかよく、女性に囲まれているし。
でもそれなら左手につけていないと意味がない、の理屈がわからん。
「別に右手でも問題ないんじゃないですかね……?」
「俺には特定の、そういうパートナーがいるってアピールしとかないと、迫ってくる女性がいるけど……いいのか」
自慢?
自慢なのか?
「私は別にかまわないですが……」
「チー」
佑司の口から落ちた声は重くて。
びくんと身体が反応してしまう。
「お試し期間とはいえ。
俺が、ほかの女に取られてもいいのか?」
じっと、レンズの向こうから佑司が見つめる。
真夜中の海のような真っ黒い瞳が、怖い。
「わ、私は」
また間違えた。
その自覚がある。
あのときと同じで。
「……よくない、です」
私はいいのだ、佑司にいい人ができてこの関係が解消されても。
きっとそのとき、笑って別れられる。
けれど彼が求めている答えはこれじゃない。
そして、彼女としての私の答えも。
「そうだろ」
満足したのか、佑司が頷く。
それでようやく、ほっと心の中で息をついた。
「だから、ここ」
そっと、左手薬指に指環を嵌められた。
「チーも」
差し出される佑司の左手薬指に、私も指環を嵌める。
「これがいつか、結婚指環に代わったらいいな」
うっとりと目を細めて佑司は自分の指に嵌まる指環を見ている。
私も自分の指環に視線を落とした。
……まるで拘束の印みたいだ。
そんなことを考えながらも、なんとなく落ち着かない。
なんで、だろ。
会社が近付いてきてふと気づく。
一緒に車で出勤なんてしてきたら、前日になにがあったかなんて丸わかり。
しかも、金曜日まではなかった、ペアの指環なんてしてきたら。
「この辺りで降ろしてください!」
「なんで?」
なんでってあなた、そんな。
「一緒の車で出勤とかしてきたら、マズいじゃないですか!
指環も、外していかないと!」
「だからなんで?」
え、ちょっと待って。
ことの重大さに気づいていない?
「あの京屋部長が、私なんかと付き合っているとかなったら、騒ぎになるじゃないですか!
ほら、ご自分でも言ってたみたいに、モテるんだし?」
会社はどんどん近付いてくる。
とりあえず、自分の指環だけ外した。
「別に俺が誰と付き合おうと勝手だろ。
俺はチーがよくてチーが好きなんだから。
それともなにか?
チーは俺と付き合ってるって知られて、マズいことでもあるのか」
「うっ。
……ない、です」
彼の言うことは正論だ。
そして私には佑司と付き合っているなど知られてマズい人間などいない。
まあ、多少は佑司を狙っていた人間に嫌がらせされるかもしれないが。
揉めているうちに会社の地下駐車場に入っていた。
「だったら。
その指環は元に戻す」
「……はい」
それでも、素直になんてまたつけられない。
渋っていたら、指環を奪われた。
「なんならまた、俺が嵌めてやろうか」
ニヤリ、右の頬だけを歪めて佑司が笑う。
「自分でつけます!!
返してください!」
「えー、ヤダー」
必死に奪おうとするが、ひょい、ひょいっと軽くよけられてしまう。
「さっき、わけわからんこと言いだしたお仕置き。
はい、手ー出して」
渋々、だけど左手を差し出す。
佑司は嬉しそうに薬指へ指環を嵌めた。
「じゃあ今日も仕事、頑張ろう」
顔が近付いてきて、あれ?とか思っているうちに唇が触れる。
「……会社で」
「ん?」
「会社でキスとかすんなやー!」
怒りで握った手がぶるぶる震える。
けれど当の佑司はけろっとしていた。
「だって、チーとキスしないと一日頑張れないし?
それに車通勤は少ないから、誰も見てないけど」
「うっ」
見ていなかったらいいのか?
いやよくない。
「とにかく。
会社でキス、禁止。
したら絶交」
「……絶交って子供かよ」
クスッ、小さく佑司が笑い、かっと頬が熱くなる。
「と、とにかく。
会社でまたキスとかしたら、もう二度と口ききませんからね」
「それは困るなー」
バンッ、乱暴にドアを閉めてエレベーターに向かう私を、佑司がすぐに追ってくる。
「付き合ってるとか人に言うのもダメですよ」
「指環ですぐに、バレると思うけど?」
「うっ」
ふたり一緒にエレベーターに乗り込む。
一階で扉が開き、入ってきた人たちは一瞬、私たちを二度見した。
営業部でもやっぱり、一緒に出勤してきた私たちにみんな注目しているし。
……目立ちまくっています。
自分の席に着き、一度大きく深呼吸。
……さっきまでのことは気にしない。
仕事に集中。
パソコンを立ち上げ、てきぱきと仕事の準備をはじめる。
なんだか、会社が懐かしい。
いや、土日と二日、休んだだけなんだけど。
金曜の夜からめまぐるしくいろいろありすぎて、もう一週間くらいたっている気がする。
昨日の日曜日ももちろん、佑司に買い物へ連れていかれた。
ペアの食器だとか、私の下着だとか。
なんかTバックとか紐パンとかエロいのばっかり買われて揉めたけど、まあいい。
……いや、よくはないけど。
さらには財布とかアクセサリーとか、いろいろ買ってくれた。
もちろん、いらないって言ったよ?
――でも。
『俺が買いたいから買ってるの。
なに、文句あんの?』
文句は当然あったけど、言うと無理矢理キスされそうな雰囲気で飲み込んだ。
それでもカードを止められちゃうんじゃないかって勢いのお買い物はひやひやしたけれど、持っていたのはプラチナカードでとりあえず安心した。
さらに。
『チーは欲しいものないのか。
俺はなんでも、チーにおねだりしてほしいんだけど』
無邪気にそう言って笑われ、あたまを抱えた……。
家でようやく、佑司は箱を開けた。
「チー、手、出して」
嫌々、だけど右手を出す。
でも強引に左手を掴まれた。
「俺はこっちに嵌めたいんだ」
「仮押さえの印だからって、右手で納得したじゃないですか!」
こんなことなら買わなきゃよかった、なんて後悔したってもう遅い。
「だって俺、モテるし?
だったら、左手につけてないと意味ないし?
それなら、チーも左手じゃないとおかしいし?」
あんたがモテるなんて知らん。
あ、いや、モテるのは知っている。
飲み会のときとかよく、女性に囲まれているし。
でもそれなら左手につけていないと意味がない、の理屈がわからん。
「別に右手でも問題ないんじゃないですかね……?」
「俺には特定の、そういうパートナーがいるってアピールしとかないと、迫ってくる女性がいるけど……いいのか」
自慢?
自慢なのか?
「私は別にかまわないですが……」
「チー」
佑司の口から落ちた声は重くて。
びくんと身体が反応してしまう。
「お試し期間とはいえ。
俺が、ほかの女に取られてもいいのか?」
じっと、レンズの向こうから佑司が見つめる。
真夜中の海のような真っ黒い瞳が、怖い。
「わ、私は」
また間違えた。
その自覚がある。
あのときと同じで。
「……よくない、です」
私はいいのだ、佑司にいい人ができてこの関係が解消されても。
きっとそのとき、笑って別れられる。
けれど彼が求めている答えはこれじゃない。
そして、彼女としての私の答えも。
「そうだろ」
満足したのか、佑司が頷く。
それでようやく、ほっと心の中で息をついた。
「だから、ここ」
そっと、左手薬指に指環を嵌められた。
「チーも」
差し出される佑司の左手薬指に、私も指環を嵌める。
「これがいつか、結婚指環に代わったらいいな」
うっとりと目を細めて佑司は自分の指に嵌まる指環を見ている。
私も自分の指環に視線を落とした。
……まるで拘束の印みたいだ。
そんなことを考えながらも、なんとなく落ち着かない。
なんで、だろ。
会社が近付いてきてふと気づく。
一緒に車で出勤なんてしてきたら、前日になにがあったかなんて丸わかり。
しかも、金曜日まではなかった、ペアの指環なんてしてきたら。
「この辺りで降ろしてください!」
「なんで?」
なんでってあなた、そんな。
「一緒の車で出勤とかしてきたら、マズいじゃないですか!
指環も、外していかないと!」
「だからなんで?」
え、ちょっと待って。
ことの重大さに気づいていない?
「あの京屋部長が、私なんかと付き合っているとかなったら、騒ぎになるじゃないですか!
ほら、ご自分でも言ってたみたいに、モテるんだし?」
会社はどんどん近付いてくる。
とりあえず、自分の指環だけ外した。
「別に俺が誰と付き合おうと勝手だろ。
俺はチーがよくてチーが好きなんだから。
それともなにか?
チーは俺と付き合ってるって知られて、マズいことでもあるのか」
「うっ。
……ない、です」
彼の言うことは正論だ。
そして私には佑司と付き合っているなど知られてマズい人間などいない。
まあ、多少は佑司を狙っていた人間に嫌がらせされるかもしれないが。
揉めているうちに会社の地下駐車場に入っていた。
「だったら。
その指環は元に戻す」
「……はい」
それでも、素直になんてまたつけられない。
渋っていたら、指環を奪われた。
「なんならまた、俺が嵌めてやろうか」
ニヤリ、右の頬だけを歪めて佑司が笑う。
「自分でつけます!!
返してください!」
「えー、ヤダー」
必死に奪おうとするが、ひょい、ひょいっと軽くよけられてしまう。
「さっき、わけわからんこと言いだしたお仕置き。
はい、手ー出して」
渋々、だけど左手を差し出す。
佑司は嬉しそうに薬指へ指環を嵌めた。
「じゃあ今日も仕事、頑張ろう」
顔が近付いてきて、あれ?とか思っているうちに唇が触れる。
「……会社で」
「ん?」
「会社でキスとかすんなやー!」
怒りで握った手がぶるぶる震える。
けれど当の佑司はけろっとしていた。
「だって、チーとキスしないと一日頑張れないし?
それに車通勤は少ないから、誰も見てないけど」
「うっ」
見ていなかったらいいのか?
いやよくない。
「とにかく。
会社でキス、禁止。
したら絶交」
「……絶交って子供かよ」
クスッ、小さく佑司が笑い、かっと頬が熱くなる。
「と、とにかく。
会社でまたキスとかしたら、もう二度と口ききませんからね」
「それは困るなー」
バンッ、乱暴にドアを閉めてエレベーターに向かう私を、佑司がすぐに追ってくる。
「付き合ってるとか人に言うのもダメですよ」
「指環ですぐに、バレると思うけど?」
「うっ」
ふたり一緒にエレベーターに乗り込む。
一階で扉が開き、入ってきた人たちは一瞬、私たちを二度見した。
営業部でもやっぱり、一緒に出勤してきた私たちにみんな注目しているし。
……目立ちまくっています。
自分の席に着き、一度大きく深呼吸。
……さっきまでのことは気にしない。
仕事に集中。
パソコンを立ち上げ、てきぱきと仕事の準備をはじめる。
なんだか、会社が懐かしい。
いや、土日と二日、休んだだけなんだけど。
金曜の夜からめまぐるしくいろいろありすぎて、もう一週間くらいたっている気がする。
昨日の日曜日ももちろん、佑司に買い物へ連れていかれた。
ペアの食器だとか、私の下着だとか。
なんかTバックとか紐パンとかエロいのばっかり買われて揉めたけど、まあいい。
……いや、よくはないけど。
さらには財布とかアクセサリーとか、いろいろ買ってくれた。
もちろん、いらないって言ったよ?
――でも。
『俺が買いたいから買ってるの。
なに、文句あんの?』
文句は当然あったけど、言うと無理矢理キスされそうな雰囲気で飲み込んだ。
それでもカードを止められちゃうんじゃないかって勢いのお買い物はひやひやしたけれど、持っていたのはプラチナカードでとりあえず安心した。
さらに。
『チーは欲しいものないのか。
俺はなんでも、チーにおねだりしてほしいんだけど』
無邪気にそう言って笑われ、あたまを抱えた……。
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