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第2章 理想の新婚生活
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晩ごはんはヒルズのテナントに入る、寿司屋だった。
「オススメで」
さらっとメニューも見ずに注文する御津川氏を黙って見ていた。
私の唯一の習い事である茶道教室が催す茶会でこのテナントに来ることはあるが、店に入ることはほぼない。
……高級すぎて。
その店で、自分が食事をすることになるなんて、誰が想像するだろう?
「今日は予定の半分くらいしか買えなかったな」
「……」
出てきた刺身を摘まみながら御津川氏はブツブツ言っているけれど……。
あれで、半分?
どう考えても車に乗らない量で、レジデンスに届けてもらうことになりましたよね?
怖い、セレブの感覚って!
「ま、いっか。
また買えば。
すぐに夏物も必要になるしなー。
あ、パーティ用のドレスもオーダーしておかないとな」
私の顔を見て、にかっと彼が笑う。
それはとても爽やかだけど、私はお腹いっぱいで箸を置いた。
「……あの」
「なんだ?」
出てきたヒラメの握りを無造作に、ぽいと彼が口に放り込む。
「必要以上にいろいろ買っていただく必要はないので。
それじゃなくても私は、七百万の……」
「ああもう、うるさいな!」
「……!」
いきなり、むぎゅっと頬を握り潰された。
「にゃ、にゃにする……」
「買われようとなんだろうと、李亜は俺の妻なの。
妻に夫が、プレゼントしてなにが悪い?」
「……」
レンズ越しに彼が私を見つめている。
その瞳は確実に怒っていた。
「なにが悪い?」
答えないでいたら、さらに彼が頬を潰してくる。
「……悪くにゃい、です」
たぶん、という言葉は飲み込んでおいた。
そうじゃないとさらに、彼を怒らせそうだから。
「なら、なにも問題はない」
満足したのか、頷いて彼が手を離す。
おしぼりで手を拭き、次に出てきたイカの握りを口に入れた。
「ほら李亜、早く食え?
寿司は鮮度が命だ」
「……はい」
促され、目の前に並んでいる握りを口へ運ぶ。
買った癖に、御津川氏は私を妻と呼ぶ。
確かに、婚姻届は書いた。
そういう契約だっていうのもわかっている。
けれど、それは私を戸惑わせた。
夕食のあとは、レジデンスに向かった。
都会のど真ん中にこんな、緑溢れる場所があるなんてなんだか意外だ。
「あとで李亜も登録しとかないとな」
ドアは全部、手をかざすだけで開いた。
生体認証なのらしい。
「ここが俺の家」
通されたリビングは私が昨日まで住んでいたマンションの全部屋分くらいあった。
「……広いですね」
「そうか?
この部屋はこのレジデンスの中でも狭い方だぞ」
なんでもないように御津川氏は言っているが、……じゃあ、普通の部屋ってどのくらいあるんだろう。
なんて、考えちゃダメよ、李亜。
「オススメで」
さらっとメニューも見ずに注文する御津川氏を黙って見ていた。
私の唯一の習い事である茶道教室が催す茶会でこのテナントに来ることはあるが、店に入ることはほぼない。
……高級すぎて。
その店で、自分が食事をすることになるなんて、誰が想像するだろう?
「今日は予定の半分くらいしか買えなかったな」
「……」
出てきた刺身を摘まみながら御津川氏はブツブツ言っているけれど……。
あれで、半分?
どう考えても車に乗らない量で、レジデンスに届けてもらうことになりましたよね?
怖い、セレブの感覚って!
「ま、いっか。
また買えば。
すぐに夏物も必要になるしなー。
あ、パーティ用のドレスもオーダーしておかないとな」
私の顔を見て、にかっと彼が笑う。
それはとても爽やかだけど、私はお腹いっぱいで箸を置いた。
「……あの」
「なんだ?」
出てきたヒラメの握りを無造作に、ぽいと彼が口に放り込む。
「必要以上にいろいろ買っていただく必要はないので。
それじゃなくても私は、七百万の……」
「ああもう、うるさいな!」
「……!」
いきなり、むぎゅっと頬を握り潰された。
「にゃ、にゃにする……」
「買われようとなんだろうと、李亜は俺の妻なの。
妻に夫が、プレゼントしてなにが悪い?」
「……」
レンズ越しに彼が私を見つめている。
その瞳は確実に怒っていた。
「なにが悪い?」
答えないでいたら、さらに彼が頬を潰してくる。
「……悪くにゃい、です」
たぶん、という言葉は飲み込んでおいた。
そうじゃないとさらに、彼を怒らせそうだから。
「なら、なにも問題はない」
満足したのか、頷いて彼が手を離す。
おしぼりで手を拭き、次に出てきたイカの握りを口に入れた。
「ほら李亜、早く食え?
寿司は鮮度が命だ」
「……はい」
促され、目の前に並んでいる握りを口へ運ぶ。
買った癖に、御津川氏は私を妻と呼ぶ。
確かに、婚姻届は書いた。
そういう契約だっていうのもわかっている。
けれど、それは私を戸惑わせた。
夕食のあとは、レジデンスに向かった。
都会のど真ん中にこんな、緑溢れる場所があるなんてなんだか意外だ。
「あとで李亜も登録しとかないとな」
ドアは全部、手をかざすだけで開いた。
生体認証なのらしい。
「ここが俺の家」
通されたリビングは私が昨日まで住んでいたマンションの全部屋分くらいあった。
「……広いですね」
「そうか?
この部屋はこのレジデンスの中でも狭い方だぞ」
なんでもないように御津川氏は言っているが、……じゃあ、普通の部屋ってどのくらいあるんだろう。
なんて、考えちゃダメよ、李亜。
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