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第7章 はじまりor終わり?
4.最初で最後の男
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シャワーを借りて身体を洗う。
浴室は観葉植物なんか置いてあって、やっぱりおしゃれだ。
「あ、高鷹部長、私が初めてって知らない、かも」
ずっと婚約者がいて、しかも春熙はあんなことまで言っていたのだ。
可能性としては、高い。
それに……。
「重いって思われたらどうしよう……」
春熙が私のせいで二十八歳ドーテイって、酷く重かったのだ。
三十五歳の男性が二十四歳の処女を抱くって……やっぱり重くないのかな。
一気に気分が萎えていく。
せっかくさっき、あんなに幸せだったのに。
借りたバスローブは裾がぞろびいて歩きにくい。
でもいまは、そんなことはたいした問題ではなかった。
「やっぱり大きいな」
「そうですね」
「寝室で待ってろ」
私に甘く口づけして、今度は高鷹部長は浴室へ消えていく。
聞いていた二階の寝室に向かう私の足取りは重い。
とりあえず、そうじゃないフリをしたらいいのかな。
でも初めては痛いって聞くし……。
なにも決まらないうちに、高鷹部長も寝室へやってくる。
「愛乃、愛してる」
すぐに高鷹部長にベッドへ押し倒された。
さっきお預けを食らっているから、待てないのはわかる。
けど、こっちはいまだに、なにひとつ決まっていない。
「あの」
「まだなにかあるのか」
不満そうに高鷹部長の眉が寄る。
こんなことでいきなり喧嘩して別れるなんて嫌だ。
それに、隠し通せることでもないし。
「その。
……私まだ、シ、……シたことなくて」
「は?」
嘘だろとでもいうように、高鷹部長の目がこれ以上ないほど大きく見開かれた。
「ちょっと待て。
東藤は君を抱いたことがないというのか」
「……はい」
「ということはもしかして、東藤はいまだに……ドーテイ、か」
「……たぶん」
はぁーっと高鷹部長の口から大きなため息が落ちる。
ううっ、やっぱり処女は重いですか。
「ドーテイを拗らせすぎているから、愛乃にこれだけ固執するんだろうな……」
え、あきれているのはそっちですか?
「……その」
「もしかして、重いとか考えたか」
「……はい」
高鷹部長の手が伸びてきて、私のあたまをがしがし撫でる。
もしかして、慰めたいときの癖なんだろうか。
「んー、そうだな。
ちょっと驚いたけど……嬉しい、かな。
愛乃の最初で……最後の男になれるのが」
ぼっと一気に顔が熱くなった。
その、最初はわかるけど、……最後、とか。
そこまで考えていてくれているんだと、嬉しすぎて奇声を発しそうになる。
「その、高鷹部長?」
「なんだ?」
彼の、眼鏡のかかる耳は赤くなっている。
自分で言っておいて恥ずかしいのだと気づくと、愛しくてしょうがなかった。
「ん」
ちゅっ、軽く唇を重ね、ゆっくりと高鷹部長はまた、私を押し倒していく。
「もう高鷹部長じゃないだろ。
俺の部下じゃないんだし」
「ん、あっ」
首筋に、高鷹部長から口づけを落とされた。
「でも、名前」
「……征史」
熱い吐息とともに入ってきたその言葉は、私の中に甘く刻まれる。
「征史、さん」
「ん、うんと優しくする、から」
そっと頬を撫で、目を細めて眩しそうに高鷹部長――征史さんが笑った。
「よろしくお願い、します……」
そして――。
「……いいか」
まだ荒い呼吸の私に、征史さんが最後の確認をした。
こくんとひとつ頷くと、征史さんが入ってくる。
「……ぃっ」
身体を激痛が襲ってくる。
でもそんな痛みすら愛おしい。
純潔を、最初で最後の生涯ただひとりの男に捧げられたのが。
「痛いか?」
心配そうに征史さんの手が、涙を拭ってくれる。
「幸せなんです」
うん、まだ痛かったけど。
それ以上に征史さんと結ばれたのが嬉しくて、幸せで。
そんな感情が私の身体の中に収まりきれなくなって、涙になってぽろぽろ落ちていく。
「愛乃は可愛いな」
征史さんが嬉しそうに笑うだけで、心臓が切なくきゅーっと締まる。
「そんなに可愛いと、手加減できなくなる」
「んんっ」
貪るみたいに征史さんの唇が重なる。
こうして私は、初めての熱い時間を過ごした。
「身体、つらくないか」
閉じていた目を開けると、征史さんが汗で張りつく私の髪を剥がしてくれた。
「えっ、あっ、ひゃいっ!」
……うっ、噛んだ。
「なら、いい」
ベッドを出て、落ちていたバスローブを拾って征史さんが羽織る。
「風呂、入るだろ。
その間になんか食うもの、作っておく」
「私が……」
「気にするな」
私にあたまを軽くぽんぽんし、手を振って征史さんは寝室を出ていった。
……その、あの、私、征史さんと……シちゃった、んだよね……。
耐えられない恥ずかしさに、枕へ顔をうずめる。
いや、高校生ならこれは正しい反応だが、二十四にもなってこれはないと思う。
「どんな顔してればいいんだろ……」
わからない、が、ごはんを作ってくれる征史さんをお待たせするわけにはいかない。
私もバスローブを拾って羽織り、急いで浴室へと行った。
浴室は観葉植物なんか置いてあって、やっぱりおしゃれだ。
「あ、高鷹部長、私が初めてって知らない、かも」
ずっと婚約者がいて、しかも春熙はあんなことまで言っていたのだ。
可能性としては、高い。
それに……。
「重いって思われたらどうしよう……」
春熙が私のせいで二十八歳ドーテイって、酷く重かったのだ。
三十五歳の男性が二十四歳の処女を抱くって……やっぱり重くないのかな。
一気に気分が萎えていく。
せっかくさっき、あんなに幸せだったのに。
借りたバスローブは裾がぞろびいて歩きにくい。
でもいまは、そんなことはたいした問題ではなかった。
「やっぱり大きいな」
「そうですね」
「寝室で待ってろ」
私に甘く口づけして、今度は高鷹部長は浴室へ消えていく。
聞いていた二階の寝室に向かう私の足取りは重い。
とりあえず、そうじゃないフリをしたらいいのかな。
でも初めては痛いって聞くし……。
なにも決まらないうちに、高鷹部長も寝室へやってくる。
「愛乃、愛してる」
すぐに高鷹部長にベッドへ押し倒された。
さっきお預けを食らっているから、待てないのはわかる。
けど、こっちはいまだに、なにひとつ決まっていない。
「あの」
「まだなにかあるのか」
不満そうに高鷹部長の眉が寄る。
こんなことでいきなり喧嘩して別れるなんて嫌だ。
それに、隠し通せることでもないし。
「その。
……私まだ、シ、……シたことなくて」
「は?」
嘘だろとでもいうように、高鷹部長の目がこれ以上ないほど大きく見開かれた。
「ちょっと待て。
東藤は君を抱いたことがないというのか」
「……はい」
「ということはもしかして、東藤はいまだに……ドーテイ、か」
「……たぶん」
はぁーっと高鷹部長の口から大きなため息が落ちる。
ううっ、やっぱり処女は重いですか。
「ドーテイを拗らせすぎているから、愛乃にこれだけ固執するんだろうな……」
え、あきれているのはそっちですか?
「……その」
「もしかして、重いとか考えたか」
「……はい」
高鷹部長の手が伸びてきて、私のあたまをがしがし撫でる。
もしかして、慰めたいときの癖なんだろうか。
「んー、そうだな。
ちょっと驚いたけど……嬉しい、かな。
愛乃の最初で……最後の男になれるのが」
ぼっと一気に顔が熱くなった。
その、最初はわかるけど、……最後、とか。
そこまで考えていてくれているんだと、嬉しすぎて奇声を発しそうになる。
「その、高鷹部長?」
「なんだ?」
彼の、眼鏡のかかる耳は赤くなっている。
自分で言っておいて恥ずかしいのだと気づくと、愛しくてしょうがなかった。
「ん」
ちゅっ、軽く唇を重ね、ゆっくりと高鷹部長はまた、私を押し倒していく。
「もう高鷹部長じゃないだろ。
俺の部下じゃないんだし」
「ん、あっ」
首筋に、高鷹部長から口づけを落とされた。
「でも、名前」
「……征史」
熱い吐息とともに入ってきたその言葉は、私の中に甘く刻まれる。
「征史、さん」
「ん、うんと優しくする、から」
そっと頬を撫で、目を細めて眩しそうに高鷹部長――征史さんが笑った。
「よろしくお願い、します……」
そして――。
「……いいか」
まだ荒い呼吸の私に、征史さんが最後の確認をした。
こくんとひとつ頷くと、征史さんが入ってくる。
「……ぃっ」
身体を激痛が襲ってくる。
でもそんな痛みすら愛おしい。
純潔を、最初で最後の生涯ただひとりの男に捧げられたのが。
「痛いか?」
心配そうに征史さんの手が、涙を拭ってくれる。
「幸せなんです」
うん、まだ痛かったけど。
それ以上に征史さんと結ばれたのが嬉しくて、幸せで。
そんな感情が私の身体の中に収まりきれなくなって、涙になってぽろぽろ落ちていく。
「愛乃は可愛いな」
征史さんが嬉しそうに笑うだけで、心臓が切なくきゅーっと締まる。
「そんなに可愛いと、手加減できなくなる」
「んんっ」
貪るみたいに征史さんの唇が重なる。
こうして私は、初めての熱い時間を過ごした。
「身体、つらくないか」
閉じていた目を開けると、征史さんが汗で張りつく私の髪を剥がしてくれた。
「えっ、あっ、ひゃいっ!」
……うっ、噛んだ。
「なら、いい」
ベッドを出て、落ちていたバスローブを拾って征史さんが羽織る。
「風呂、入るだろ。
その間になんか食うもの、作っておく」
「私が……」
「気にするな」
私にあたまを軽くぽんぽんし、手を振って征史さんは寝室を出ていった。
……その、あの、私、征史さんと……シちゃった、んだよね……。
耐えられない恥ずかしさに、枕へ顔をうずめる。
いや、高校生ならこれは正しい反応だが、二十四にもなってこれはないと思う。
「どんな顔してればいいんだろ……」
わからない、が、ごはんを作ってくれる征史さんをお待たせするわけにはいかない。
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