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第2章 家族or恋愛対象?
1. 名前呼び。しかも呼び捨て。
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経営戦略部に異動したその日は覚えることがいっぱいで、ばたばたしていた。
「……ちょっと待て。
君はエクセルの基本操作すらできないのか」
「……はい」
高鷹部長はその長い指で額を押さえ、信じられないとでもいうかのようにあたまを二、三度振った。
「いったい、いままでなにを……って、なにもできなかったんだな。
すまない」
高鷹部長が悪いわけじゃないのに、彼は真摯に私へ詫びてくれる。
そういう姿は、いままで父から聞かされてきた高鷹部長の話からかけ離れていた。
「椎名!」
「はい」
高鷹部長に声をかけられ、背の高い女性がこちらに向かってくる。
長い髪を高い位置でひとつにくくったその女性は、まさしく私が憧れたキャリアウーマンのようだった。
「香芝……いや、愛乃に仕事を教えてやってくれ。
頼めるか」
「はい、わかりました」
すぃっと椎名さんが唇の端に大人の笑みをのせ、格好いい。
「俺がつきっきりで見てやれたらいいが、そういうわけにはいかないからな。
じゃあ椎名、頼んだ。
愛乃、頑張れよ」
「あの!」
私の声に、立ち去りかけていた高鷹部長はくるりと振り返った。
「なにか問題でもあるのか」
不機嫌そうに眉をひそめて問われると、思わず身体がびくんと揺れる。
「その。
……愛乃、って」
「ああ。
香芝だと専務と一緒だからめんどくさいだろ。
だから俺は愛乃と呼ぶ。
悪いか?」
「……悪くない、です」
「うん、ならいい」
満足げに頷き、高鷹部長は足早に去っていった。
この後は開発部と打ち合わせだと言っていたから、もしかしたら時間が迫っていたのかもしれない。
『愛乃』
もう一度、高鷹部長の声を思いだしてみる。
いままで私を呼び捨てにしたのは家族か春熙くらいだった。
高鷹部長に呼ばれるのが特別に感じるのは、男性に免疫のない私のただの勘違いだとわかっている。
――それでも。
私に自由を与えてくれた人だから、特別だと思ってはいけないだろうか。
お昼までひたすら、エクセルとメールソフトの使い方を教えてもらった。
椎名さんは……かなりのスパルタだった。
「ここ、間違ってる」
「……すみません」
四苦八苦してどうにかプリントした書類にさっと目を通しただけで、突き返された。
「わかんないからって、適当に処理したでしょう?」
「……はい」
椎名さんの言うとおりだからなにも言い返せない。
指摘されたところは一度、彼女から聞いたけれど理解できず、なんとなくで処理したところだった。
「わからないのなら聞いて。
わかったフリはしない。
何度聞かれても私はちゃんと説明するから。
めんどくさがっちゃ、ダメ」
「……はい」
椎名さんが私のためを思って怒ってくれているのはわかるが、怒られ慣れていないからへこんでしまう。
これくらいのことでじわじわと涙が浮いてくる自分が情けなくて、慌てて顔を拭った。
「でも、他のところはちゃんとできてる。
直すのはここだけだから。
うん、よく頑張った」
なんだか子供扱いされている気がしないでもないが、にっこりと椎名さんに笑われて嬉しくないわけがない。
「ありがとうございます……!」
さっきへこんだのなんて嘘みたいに、一気に上機嫌になる。
そんな私を椎名さんはおかしそうにくすりと笑った。
間違えたところを椎名さんに教えてもらいながら直したところで、昼休みのチャイムが鳴った。
今日は父と昼食の約束をしているが、気が重い。
「愛乃」
部屋を出たところで、春熙に声をかけられた。
壁に寄りかかって組んでいた腕をほどきながら、私の方へ笑って歩いてくる。
「お昼、一緒に行こうか」
「えっ、あ、でも」
「お義父さんには許可取ってある」
「……うん」
私の肩を抱くようにして春熙は歩きだした。
きっと父が、自分ではできないから春熙に様子をうかがってくるように頼んだのだろう。
今日は会社を出て、近くのビルに入っている会席料理店に連れてこられた。
父が私と昼食を取るとき、よく使う店。
個室で、ゆっくりできるから。
当然、この店に連れてこられたとき、昼休みの時間内に帰れたためしがない。
「高鷹部長の経営戦略部に異動になったんだってね」
「……うん」
春熙は静かに笑っている。
父のように感情をあらわに、怒ったり不快な顔をしてくれたりしないと、反対に怖い。
「仕事はどう?
ってまだ、午前中だけじゃわからないだろうけど」
「総務と違って、いろいろちゃんと教えてくれるよ。
失敗したらちゃんと怒ってくれるし」
「……そう」
春熙の顔から一切の感情が消えた。
その瞳はなにも映していない、ただの硝子玉のようだ。
虚無、と呼ぶのがふさわしいくらいの無表情。
私はこの顔を――知っている。
「愛乃を怒るなんてとんでもないね。
怖くなかった?」
一瞬前の顔が嘘みたいに、春熙は笑っている。
でも私は、さっきの顔が忘れられない。
「……私のためを思って怒ってくれてるんだから、怖くないよ」
心臓がばくばくと激しく鼓動した。
普通の顔をして茶碗蒸しを食べながら、背中を冷たい汗が滑り落ちていく。
「愛乃がそう言うのならいいけど。
でも愛乃を怒るような人間がいるところに、このままいるの?」
いつもと変わらない顔をして春熙は聞いてくる。
「できればいたんだけど……。
ダメ、かな」
なんでもないように答えながらも、無意識に言葉を慎重に選んでいた。
「愛乃がそうしたいんならいいけど、高鷹部長はお義父さんに敵対してるってわかってる?」
「わかってる、けど……」
握っていたスプーンを置いて俯いた。
父は今日、反抗した私に酷く失望していることだろう。
でも私は……後悔しないと決めたのだ。
「責めてるわけじゃないよ。
ただ、お義父さんの気持ちも考えてほしいってだけ」
「……うん」
せっかく、今日から新しい世界を体験できるんだってわくわくしていた気分がみるみるうちに萎んでいく。
「そんな顔しないで。
愛乃がそうしたいっていうのなら、僕がお義父さんを説得してあげる。
ただ、お義父さんの立場は忘れないで」
「……はい」
困ったように春熙が笑う。
働きたいと言ったときもそうだった。
私の味方をしながら、父のフォローは忘れない。
「この話はもうおしまい。
明日の旅行だけど、どこか行きたいところある?」
「んとねー」
春熙が終わりだというのだから、私ももう気にしないことにして旅行の話をした。
春熙はちゃんと、ぎりぎりだったけどお昼休みが終わるまでに職場へ私を帰してくれた。
そういうところは父と違うので、信頼している。
午後も椎名さんに教わりながら仕事をする。
戸惑うことの方が多いけど、楽しい。
椎名さんも他の人も、私を特別扱いなんてしないし。
あっという間に時間は過ぎていき、気づいたときには終業の鐘が鳴っていた。
「愛乃、今日一日どうだった?」
帰り支度をしていると、いつの間にか高鷹部長が傍に立っていた。
「その。
疲れたけれど、……楽しかったです」
「楽しい、か」
ふっと唇だけで笑った高鷹部長が、どことなく淋しげに見えたのはなぜだろう。
「楽しんでられるのはいまのうちだけだぞ。
すぐに異動なんてしなかったらよかったーってくらい、忙しくしてやるからな」
リムの右端をつまんで、くいっと眼鏡を上げた高鷹部長は、なぜか得意げだ。
「望むところです」
精一杯、胸を張って虚勢を張る。
「頼もしいな」
高鷹部長が目を細めて表情を緩め、その顔に――どうしてか、心臓がどきっと大きく一回、跳ねた。
「……ちょっと待て。
君はエクセルの基本操作すらできないのか」
「……はい」
高鷹部長はその長い指で額を押さえ、信じられないとでもいうかのようにあたまを二、三度振った。
「いったい、いままでなにを……って、なにもできなかったんだな。
すまない」
高鷹部長が悪いわけじゃないのに、彼は真摯に私へ詫びてくれる。
そういう姿は、いままで父から聞かされてきた高鷹部長の話からかけ離れていた。
「椎名!」
「はい」
高鷹部長に声をかけられ、背の高い女性がこちらに向かってくる。
長い髪を高い位置でひとつにくくったその女性は、まさしく私が憧れたキャリアウーマンのようだった。
「香芝……いや、愛乃に仕事を教えてやってくれ。
頼めるか」
「はい、わかりました」
すぃっと椎名さんが唇の端に大人の笑みをのせ、格好いい。
「俺がつきっきりで見てやれたらいいが、そういうわけにはいかないからな。
じゃあ椎名、頼んだ。
愛乃、頑張れよ」
「あの!」
私の声に、立ち去りかけていた高鷹部長はくるりと振り返った。
「なにか問題でもあるのか」
不機嫌そうに眉をひそめて問われると、思わず身体がびくんと揺れる。
「その。
……愛乃、って」
「ああ。
香芝だと専務と一緒だからめんどくさいだろ。
だから俺は愛乃と呼ぶ。
悪いか?」
「……悪くない、です」
「うん、ならいい」
満足げに頷き、高鷹部長は足早に去っていった。
この後は開発部と打ち合わせだと言っていたから、もしかしたら時間が迫っていたのかもしれない。
『愛乃』
もう一度、高鷹部長の声を思いだしてみる。
いままで私を呼び捨てにしたのは家族か春熙くらいだった。
高鷹部長に呼ばれるのが特別に感じるのは、男性に免疫のない私のただの勘違いだとわかっている。
――それでも。
私に自由を与えてくれた人だから、特別だと思ってはいけないだろうか。
お昼までひたすら、エクセルとメールソフトの使い方を教えてもらった。
椎名さんは……かなりのスパルタだった。
「ここ、間違ってる」
「……すみません」
四苦八苦してどうにかプリントした書類にさっと目を通しただけで、突き返された。
「わかんないからって、適当に処理したでしょう?」
「……はい」
椎名さんの言うとおりだからなにも言い返せない。
指摘されたところは一度、彼女から聞いたけれど理解できず、なんとなくで処理したところだった。
「わからないのなら聞いて。
わかったフリはしない。
何度聞かれても私はちゃんと説明するから。
めんどくさがっちゃ、ダメ」
「……はい」
椎名さんが私のためを思って怒ってくれているのはわかるが、怒られ慣れていないからへこんでしまう。
これくらいのことでじわじわと涙が浮いてくる自分が情けなくて、慌てて顔を拭った。
「でも、他のところはちゃんとできてる。
直すのはここだけだから。
うん、よく頑張った」
なんだか子供扱いされている気がしないでもないが、にっこりと椎名さんに笑われて嬉しくないわけがない。
「ありがとうございます……!」
さっきへこんだのなんて嘘みたいに、一気に上機嫌になる。
そんな私を椎名さんはおかしそうにくすりと笑った。
間違えたところを椎名さんに教えてもらいながら直したところで、昼休みのチャイムが鳴った。
今日は父と昼食の約束をしているが、気が重い。
「愛乃」
部屋を出たところで、春熙に声をかけられた。
壁に寄りかかって組んでいた腕をほどきながら、私の方へ笑って歩いてくる。
「お昼、一緒に行こうか」
「えっ、あ、でも」
「お義父さんには許可取ってある」
「……うん」
私の肩を抱くようにして春熙は歩きだした。
きっと父が、自分ではできないから春熙に様子をうかがってくるように頼んだのだろう。
今日は会社を出て、近くのビルに入っている会席料理店に連れてこられた。
父が私と昼食を取るとき、よく使う店。
個室で、ゆっくりできるから。
当然、この店に連れてこられたとき、昼休みの時間内に帰れたためしがない。
「高鷹部長の経営戦略部に異動になったんだってね」
「……うん」
春熙は静かに笑っている。
父のように感情をあらわに、怒ったり不快な顔をしてくれたりしないと、反対に怖い。
「仕事はどう?
ってまだ、午前中だけじゃわからないだろうけど」
「総務と違って、いろいろちゃんと教えてくれるよ。
失敗したらちゃんと怒ってくれるし」
「……そう」
春熙の顔から一切の感情が消えた。
その瞳はなにも映していない、ただの硝子玉のようだ。
虚無、と呼ぶのがふさわしいくらいの無表情。
私はこの顔を――知っている。
「愛乃を怒るなんてとんでもないね。
怖くなかった?」
一瞬前の顔が嘘みたいに、春熙は笑っている。
でも私は、さっきの顔が忘れられない。
「……私のためを思って怒ってくれてるんだから、怖くないよ」
心臓がばくばくと激しく鼓動した。
普通の顔をして茶碗蒸しを食べながら、背中を冷たい汗が滑り落ちていく。
「愛乃がそう言うのならいいけど。
でも愛乃を怒るような人間がいるところに、このままいるの?」
いつもと変わらない顔をして春熙は聞いてくる。
「できればいたんだけど……。
ダメ、かな」
なんでもないように答えながらも、無意識に言葉を慎重に選んでいた。
「愛乃がそうしたいんならいいけど、高鷹部長はお義父さんに敵対してるってわかってる?」
「わかってる、けど……」
握っていたスプーンを置いて俯いた。
父は今日、反抗した私に酷く失望していることだろう。
でも私は……後悔しないと決めたのだ。
「責めてるわけじゃないよ。
ただ、お義父さんの気持ちも考えてほしいってだけ」
「……うん」
せっかく、今日から新しい世界を体験できるんだってわくわくしていた気分がみるみるうちに萎んでいく。
「そんな顔しないで。
愛乃がそうしたいっていうのなら、僕がお義父さんを説得してあげる。
ただ、お義父さんの立場は忘れないで」
「……はい」
困ったように春熙が笑う。
働きたいと言ったときもそうだった。
私の味方をしながら、父のフォローは忘れない。
「この話はもうおしまい。
明日の旅行だけど、どこか行きたいところある?」
「んとねー」
春熙が終わりだというのだから、私ももう気にしないことにして旅行の話をした。
春熙はちゃんと、ぎりぎりだったけどお昼休みが終わるまでに職場へ私を帰してくれた。
そういうところは父と違うので、信頼している。
午後も椎名さんに教わりながら仕事をする。
戸惑うことの方が多いけど、楽しい。
椎名さんも他の人も、私を特別扱いなんてしないし。
あっという間に時間は過ぎていき、気づいたときには終業の鐘が鳴っていた。
「愛乃、今日一日どうだった?」
帰り支度をしていると、いつの間にか高鷹部長が傍に立っていた。
「その。
疲れたけれど、……楽しかったです」
「楽しい、か」
ふっと唇だけで笑った高鷹部長が、どことなく淋しげに見えたのはなぜだろう。
「楽しんでられるのはいまのうちだけだぞ。
すぐに異動なんてしなかったらよかったーってくらい、忙しくしてやるからな」
リムの右端をつまんで、くいっと眼鏡を上げた高鷹部長は、なぜか得意げだ。
「望むところです」
精一杯、胸を張って虚勢を張る。
「頼もしいな」
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