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最後のホワイトデーになんかしてやらない
しおりを挟む それを受け取ったのは、半月前の朝だった。
教室の机の横に、何も言わずにかけられていた紙袋。入っているのはリボンのかかった小さな箱だけで、特に手紙やメモの類は入っていないけれど、日付も相まってすぐに中身は察しがついた。
実際、家に帰ってから開けてみれば、その中身は思った通り。ちょっぴりビターで、でもとびきり甘いチョコレート。
結局、半月経った今でも贈り主は判明していないが、きっと「彼女」の仕業なのだろうと思っている。なにせ、こんなことをするのはクラスメイトにして俺の数少ない女友達でもある彼女しかいないからだ(そもそも、俺にチョコをくれるような女子なんて彼女くらいのものなのだが)。
でもその割に、あの日の彼女はいつも通りに過ごしていたように見えた。そわそわした様子もなく、慌てた様子もなく、いつも通りに授業を受け、いつも通りに友達の世話を焼き、いつも通りに笑って。面白いくらい「普段通り」の彼女だった。
……正直、ズルいと思った。
こちとら、この件については色々と考えさせられているというのに。当の本人がまるで全部終わったかのように平然としているのは、なんとなく納得いかない。
あちらは俺が何とも思っていないと思っているのかもしれないが、こちらにも思う所はあるのだ。渡すんなら直接渡せよとか、他の奴らに見られたら何を言われるか分かったもんじゃないんだが、とか。
このまま何も言わずに卒業していいんだろうか、とか。
らしくもなくうだうだと考えてはいるが、彼女へのお返しは一応用意してある。彼女が好きだと言っていた、イチゴ味のチョコレート。このチョイスに、特別意味はない。
ホワイトデーのお返しに意味があることなんて知らないし、ホワイトデーのチョコレートは基本的に意味を持たないけど、「あなたと同じ気持ちです」なんて意味を持つ説もあるなんてことは、俺は知らないのだから。
彼女が信じるタイプかは分からないけれど、これくらいの「お返し」は許されるだろう。
せいぜい、一人でうだうだ考えてればいい。
俺が、ちゃんと言葉で伝えるまでは。
※「彼女」のお話→https://www.alphapolis.co.jp/novel/433352506/386841523/episode/8067364
教室の机の横に、何も言わずにかけられていた紙袋。入っているのはリボンのかかった小さな箱だけで、特に手紙やメモの類は入っていないけれど、日付も相まってすぐに中身は察しがついた。
実際、家に帰ってから開けてみれば、その中身は思った通り。ちょっぴりビターで、でもとびきり甘いチョコレート。
結局、半月経った今でも贈り主は判明していないが、きっと「彼女」の仕業なのだろうと思っている。なにせ、こんなことをするのはクラスメイトにして俺の数少ない女友達でもある彼女しかいないからだ(そもそも、俺にチョコをくれるような女子なんて彼女くらいのものなのだが)。
でもその割に、あの日の彼女はいつも通りに過ごしていたように見えた。そわそわした様子もなく、慌てた様子もなく、いつも通りに授業を受け、いつも通りに友達の世話を焼き、いつも通りに笑って。面白いくらい「普段通り」の彼女だった。
……正直、ズルいと思った。
こちとら、この件については色々と考えさせられているというのに。当の本人がまるで全部終わったかのように平然としているのは、なんとなく納得いかない。
あちらは俺が何とも思っていないと思っているのかもしれないが、こちらにも思う所はあるのだ。渡すんなら直接渡せよとか、他の奴らに見られたら何を言われるか分かったもんじゃないんだが、とか。
このまま何も言わずに卒業していいんだろうか、とか。
らしくもなくうだうだと考えてはいるが、彼女へのお返しは一応用意してある。彼女が好きだと言っていた、イチゴ味のチョコレート。このチョイスに、特別意味はない。
ホワイトデーのお返しに意味があることなんて知らないし、ホワイトデーのチョコレートは基本的に意味を持たないけど、「あなたと同じ気持ちです」なんて意味を持つ説もあるなんてことは、俺は知らないのだから。
彼女が信じるタイプかは分からないけれど、これくらいの「お返し」は許されるだろう。
せいぜい、一人でうだうだ考えてればいい。
俺が、ちゃんと言葉で伝えるまでは。
※「彼女」のお話→https://www.alphapolis.co.jp/novel/433352506/386841523/episode/8067364
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