腐女子な女兵士がボロボロな少女を助けたら…。

星 佑紀

文字の大きさ
上 下
1 / 8
第壱譚

0000:演習場にボロボロな女の子⁉︎

しおりを挟む
 ーーここは、トルネード王国のとある演習場。ーー


「エリンー! 怪我人が出たぞー‼︎(大声班長)」

「はい! どこですかー?(班長に向かって)」

「こっちだー! 担架を持ってこい‼︎」

「了解です‼︎」


 ーー俊敏な速さでエリンは班長の方へと向かった!ーー


「班長、簡易担架です!」

「……まずいな。傷が深すぎる。(傷病者を診て)」

「……。(最近の演習は異常過ぎる。以前はこんな事無かったのに。を導入してから、弾が破裂した周辺にだけでこんなにも身体がおかしくなるだなんて……。まるで、体内から壊れているようで、気味が悪いわ。)」

「……駄目だ。エリン、やっぱりこの兵士はここに置いていこう。(埃を払いながら立ち上がる班長)」

「ーーーーっ⁉︎ これでですか⁉︎ 班長、おかしすぎますよ! 私たちの役目は傷病者の保護及び応急処置なはずなのに、まだ息がある兵士をここで見捨てるだなんて‼︎」

「……上からのお達しだ。俺はそれに従うだけさ。」

「班長‼︎」

「異論があるなら、辞めてしまえ。」


 ーー班長は、一人で救護用天幕へと戻った!ーー


「……。(おかしい。この国トルネード王国はおかし過ぎる‼︎)」


 ーー納得のいかないエリンは、虫の息な兵士をガシッと肩に背負って、カルスト台地の急な坂道を駆け降りた‼︎ーー



 ◇  ◇  ◇



「……救護兵の君、もういいよ。(虫の息な兵士)」

「ーーっ‼︎ 意識が戻りましたか! もう少しで救護用天幕に着きますので、踏ん張って下さい‼︎(汗だくエリン)」

「私の命はほんの僅か。……君にお願いがあるんだ。」

「えっ?(立ち止まるエリン)」

「……私をここへ置いて、さっきの場所に戻ってほしい。(息が切れそうな兵士)」

「ーーーーっ⁉︎ で、ですが……。」

「一人の女の子がいるはずだ。……彼女を必ず守ってくれ。(最後の力を振り絞って言葉を発し、事切れる兵士)」

「…………了解しました。(涙で前が見えないエリン)」


 ーーエリンは兵士を地面へ丁寧におろすと、一つ拝んで、先程の場所へと向かった。涙を拭うことも忘れて。ーー



 ◇  ◇  ◇



 ーーエリンは、元の場所に到着した!ーー


「ーーーーっ⁉︎」


 ーーなんと、亡き兵士が倒れていた付近の草むらで、ボロボロな少女が倒れているではないか⁉︎ エリンはすぐさま彼女を抱き起こして、息をしているかどうか確かめた‼︎ーー


「ーーまだ息がある‼︎」


 ーーエリンは、彼女を横抱きに抱えて、走り出す‼︎ーー



 ◇  ◇  ◇



 ーーここは、演習場付属の救護用天幕。ーー


 ドタバタっ‼︎ ガチャン‼︎


「班長、演習場にて傷病の一般人を発見しました‼︎」

「何っ⁉︎ 見せてみろ‼︎(椅子から立ち上がる班長)」


 ーーエリンは、天幕内のベッドに少女をおろした‼︎ーー


「……駄目だ。この子も、もうじき死ぬだろう。」

「ーーーーっ⁉︎ 班長、何故助けられないのですか⁉︎」

「……上からのお達しだよ。(煙草に火を付ける班長)」

「……。(上から上からって、最近はそればかり。)」

「……可哀想に。一思いにヤってあげた方が彼女の為だな。(腰に携えていたサーベルを抜く班長)」

「ーーーーっ⁉︎ ま、待ってください‼︎」

「……一度してしまえば後は苦しみだけなんだよ。……仕方がないんだ。(少女へサーベルを振り下ろす班長)」

「だめえええええええ‼︎」


 ーーエリンは、少女と班長との間に入った‼︎ーー


 ザクッ‼︎


「エリン⁉︎(呆然とする班長)」

「……はん、ちょう、……本日をもって、私エリン・マラスカスは、除隊、……致します‼︎(少女に覆い被さった結果、班長のサーベルをくらって、痛みにもがき苦しむエリン)」

「あ、ああ。……だがエリン、これからどうするんだ。」

「……少女を、街医者に見せます。(息が苦しいエリン)」

「……わかった。エリン、すまなかったな。(困り眉)」

「……いいのです、班長。……これは、私の我儘ですので。(痛みを隠すように、微笑むエリン)」

「痛かっただろうに。出て行く前にせめて治療させてくれ。(エリンの背中に左手のひらを向ける班長)」


 ぱあああああ(仄かな光)


「……やっぱり、班長ってすごいですね。(完全回復!)」

「……絶対に誰にも言うなよ。……の使用がバレたら、俺は死刑なんだからな。(バツの悪い班長)」

「はい! ……班長、今までたくさんお世話になりました!(少女を横抱きに抱えて深く礼)」

「……気をつけろよ。(煙草を咥える班長)」

「はい! ……班長もどうか、身体に気をつけて、お元気でいてくださいね!(さよなら、私のの班長様‼︎)」

「ああ。……裏から行け。(そっぽを向く班長)」


 ーーシュパパッとエリンは出て行った‼︎ーー


「……ったく、殿の計画通りっていうのも、なんだかムカつくな。(去って行くエリンの後ろ姿を見ながら、一人煙をくゆらす班長)」


 ーーエリンは、演習場のきわを全速力で駆け降りる‼︎ーー
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

山小屋の男をたぶらかそうとした雪女は、三児の母となる

星 佑紀
恋愛
「……すみませんが、今晩ここに泊めてもらえないでしょうか?」 雪が降り積もるニホン帝国のとある山奥に、一人の女性が立っていた。 どうやら、彼女は山小屋を一軒ごとに回って、若い男性を誑かしている雪女らしい。 今夜も雪女は、ニヤニヤしながら凍てつく山小屋の扉を叩くのであった。 ――六年後―― 彼女は三児の母となって、山小屋から出られない状況に陥っていた!(汗) 「な、なんでなの~⁉」 「ユキちゃん、大好きだよ‼ ……勿論、逃げたりしないよね?(圧)」 「ひいいいい‼(ガクブル)」 これは、大好きな家族から逃げようとする雪女と、最愛の雪女を逃すつもりのない、とある男のお話。 ※関連作品 『断罪裁判は蜜の味』 『国外追放された魔法使いの不思議な館』 ※クロスオーバー作品になります。尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。) ※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。 ※予告なく加筆修正致します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪裁判は蜜の味

星 佑紀
恋愛
「リリアナ嬢、もう、君にはついていけない。婚約は破棄だ‼︎」 「了解仕りましたわ♡」 私、リリアナ・ヘレンは、本日、婚約者であるロバート殿下から、断罪裁判を起こされる予定ですの。謎の男爵令嬢(ヒロイン)の出現によって、ロバート殿下及び殿下の取り巻き達は骨抜きな状態となり、王宮内の人間関係に亀裂が生じた結果なのです。 私は、この機会を今か今かと待っておりました。 婚約破棄されて国外追放されるために、私リリアナ・ヘレンは頑張って悪役令嬢を務め上げます! 「いや、逃がさないよ♪」 ーー本当の敵は味方にいることをリリアナ嬢は知らなかった……。 ※続編を連載することに致しました。 ※続編より、自作小説『灰かぶり姫と月の魔法使い』の一部キャラクターが登場します。 ※尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。) ※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。 ※予告なく加筆修正致します。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

何故か地雷を踏んでしまうモブの受難

星 佑紀
恋愛
僕、ロイド・フォルセットには、とある悩みがある。それは――。 「れ、レイン様、おやめください‼」 「カリン、もう私は待てないのだ!」 「レイン様、……好き。(赤面)」 「カリン――!」 ――いつも、男女がイチャイチャしている場面に出くわしてしまうことだ。(困惑) ――世界を旅するモブの、色んな意味での冒険が、今始まる!―― 「いや、始まらなくていいから!(激おこ)」

処理中です...