引きこもりニートが、クーデター組織に入った話

星 佑紀

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第壱譚(修正前)

0001:ジョナサン、元職場に行く⁉︎ 其壱

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「ジョナサンー、もう少しだー‼︎」

「はい、隊長‼︎」


 皆さんどうも、ジョナサンもとい、ジャスミン・レイヤーだ。一週間前まで自宅警備隊隊長引きこもりニートだった僕は、現在、クーデター組織『スピカ』の野営地にての訓練をやっている。

 の訓練にはとてもを使うので、訓練が終わる頃には目がシパシパするのだが、体力的な問題は無いので、女の私でも余裕でついていくことができた。そして、何よりも面白い。ものを見えるようにする事によって、迫り来る危険を回避する事ができるのだ! この能力は、元々備わっている人もいれば、僕みたいに全然知らなかった人でも訓練次第で得る事もできる。父に半強制的に入れられた『スピカ』だったが、結構為になることばかりで、案外入団して良かったなと思う。隊長に言い寄られることがなければだが。


「ジョナサン、今日も良かったぞ!」

「あ、ありがとうございます、隊長。(汗)」

「では一緒に汗を流すとするか‼︎」

「断固拒否です!」

「……そうか。(困り眉でしょんぼり)」

「……僕、先に天幕に戻ってますね。」

「ああ。(しょんぼり)」


『スピカ』参謀隊隊長のサネユキ・イトー様。棟梁であるパトリック殿下の従兄弟にあたるらしい。……噂では、パトリック殿下のお母様と隊長のお母様が姉妹とのこと。入団面接のときの試験官で、今では直属の上司だが、……とても良い人なのだ。……天幕の使用は、平団員の場合六人で使用するのに、僕はほぼ一人で使わせて貰っているし、お風呂に関しても、平団員なのに、シャワーを隠れて使わせて貰えているのも、隊長のおかげだ。……良い人なのに、僕のことを本気で男だと思っている。……とても残念で仕方がない。


「……ちょっとジョナサン、お使い頼んでもいいかな?」

「はい、パトリック殿下。……どうなさいました?」

「ジョナサンの戸籍をしたいから、明日、サネユキと一緒に役場に行ってほしいんだ。(にっこり)」

「こ、戸籍の抹消ですか⁉︎(僕の存在消すの⁉︎)」

「そうだよ、当たり前じゃないか。ジョナサンは、体格も小柄で特徴的な顔立ちでもないだからね。……諜報活動には打ってつけの人材だから、予め実家の戸籍から除籍しておきたいんだ。(ニヤリ)」

「そ、そうですか。……しかし、僕が行ったらややこしくなりませんかね?」

「大丈夫大丈夫。……とりあえず、結婚を理由に戸籍を抜いて、それからは、……ねっ?(にっこり)」

「は、はあ。(パトリック殿下怖えええ‼︎)」

「心配しないでよ。ここトルネード王国では、死んでる事になるから、結婚出来ないけどさ、に行けばいくらでも出来るし、何より君にはもう結婚相手もいるしね!(ウインク)」

「…………。(ええええ! うそーーん。)」

「気晴らしと思って、サネユキと行っておいで。」

「あ、ありがとうございます? 殿下。」

「うんうん、そうだね! お土産よろしくね!」

「は、はい。(殿下、怖えええ。)」


 ということなので、僕と隊長は、役場まで行く事になった。(実家に寄れるかなー?)



 ◇  ◇  ◇



 ーーここは、トルネード王国郊外の村役場。ーー


「……隊長、ここが僕の戸籍がある役場です。」

「うむ。では行こうか。」

「…………。(モジモジ)」

「……? ジョナサン、どうしたのだ?」

「……実はここ役場、以前働いていた勤め先でして……。」

「……何かあったのだな?(真面目な顔付き)」

「……仕事は楽しかったのですが、……新しい上司がやってきてから、みんなから虐められて……。(モジモジ)」

「わかった。……ジョナサンのことは私が必ず守る!」

「ーーーーっ‼︎(やっぱり良い人だ!)」

「私に任せなさい‼︎」

「はい、隊長‼︎」


 退職してから、一歩も入れなかった前の職場。……パトリック殿下に頼まれたときは、とても嫌だなって思ったけれど、隊長に来てもらって、本当に良かった。


「では入るぞ!」

「はい‼︎」


 ガチャッ

 チリンチリーン


 扉を開くと懐かしい呼び鈴が鼓膜を震わせる。……以前の僕にとっては、戦闘のゴングだが、今は、別れを告げる惜別の鐘だな。


「こんにちはー、如何なされましたか?(きゅるるん)」


 受付には、お局のミリリンがいた。……ミリリンは、私のお手製弁当を、平気でゴミ箱に捨てまくってきた人だから、で何度ボコ殴りしたか……。(遠い目)


「あら! ジャスミン、久しぶりー‼︎(根暗で気味の悪いただのモブがノコノコやってきたわ。)」

「…………どうも。(ジト目)」

「……すまないが、結婚するので彼の戸籍を抜きに来た。(なんだ、この化粧お化けは⁉︎)」

「えええー⁉︎ ジャスミン、結婚するのー⁉︎(なんて良い男! イケメンだし、お金持ってそうだし、……前みたいにっちゃおうかなー♡)」

「無駄話はいいから、早く手続きをしてくれ。……これが、婚姻証だ。(ジョナサンが嫌がる理由がわかったぞ。)」

「そうですね! 待合室にて暫くお待ちくださいな!(なかなかの硬派! これは奪うしかないわね!)」

「……。(ミリリン、がダダ漏れなんだよなー。)」


 ……そうなのである。の特訓を始めてから、生けとし生きるものたちのが聞こえるのだ。……ちなみに、訓練次第で、聞く聞かないのオンオフ(切り換え)ができるのだが、僕にはまだできない。……そんでもって、パトリック殿下や隊長や、『スピカ』の先輩方のように、能力値が一定以上に高くなると、心の声を誰にも聞かせないようにシャットアウトする事も可能だ。……だから、隊長の心の声は聞こえないが、……表情でなんとなく嫌そうなのはわかった。……早く終わればいいなー。(死んだ魚の目)

 すると、事務手続きをしていたミリリンがこちらにやってきて、僕の耳元で小さく囁くではないか。


「ジャスミン、向こうで部長が呼んでいるわよ。(小声)」

「ーーーーっ‼︎(何だって⁉︎)」

「部長、ジャスミンが辞めてからずっと元気がないのよ。会ってあげなさいよ!(邪魔な根暗は部長にお任せよ!)」

「……すまないが、彼はもうここ役場の人間ではない。勝手なことを言わないでくれ。(ゴミ虫を見るような顔)」

「ーーーーっ‼︎(隊長、やっぱり良い人だ‼︎)」

「そうですか。……ジャスミン、ごめんなさいね。」

「い、いえ……。」


 助かったー。危うく、部長に会うところだった。…………そりゃそうだよね。同僚が全員残っているわけなんだから。部長だっているよね。


「ジョナサン、顔色が悪いぞ。大丈夫か?」

「だ、大丈夫です、隊長。……ありがとうございます。」

「気にしなくていい。終わったらジョナサンの実家で、少し休もう。(親御さんに挨拶しないといけないからな。)」

「ーーーーっ! 本当ですか‼︎(やったー!)」

「ああ、甥っ子君も、ジョナサンの帰りを心待ちにしているはずだ。(甥っ子君にも餌付けしておこう。)」

「そうですね!」


 隊長の粋な計らいによって、急降下していたやる気が少し上がった。もう少しで、自分のベッドでお昼寝できるぞー!

 と思っていた矢先に、出鼻を挫くような出来事が起こってしまったのだ!(何でだよー⁉︎)


「ジャスミン、久しぶりだなー!」


 聞き慣れた声が背後からする。振り返ってはいけないと思うのだが、身体に染み込んだ動作は自分でも止められない。


「ぶ、部長…………。」


 ……振り返ると、僕がここ役場を辞める要因となった人物が、我が物顔で突っ立っていたのだ。(大汗)


 ーージョナサン、大ピンチ⁉︎ーー
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