引きこもりニートが、クーデター組織に入った話

星 佑紀

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第壱譚(修正前)

0000:引きこもりニート、就職する⁉︎

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 ーーここは、トルネード王国郊外の一軒家。ーー


「ジャスミン、イー君のこと見てて!」

「あいよー、姉貴ー。(死んだ魚の目)」

「おぎゃあ、おぎゃあ!(イヤだバブ!)」

「おー、甥っ子、元気だな。(イー君を抱っこして)」

「バブバブ、フギャー!(お前、あっちいけ!)」

「なになに? ジャスミンお姉ちゃん、超美人だって? さすが甥っ子! よくわかっているじゃないか‼︎」

「バブー、ばぶばぶ!(うるさい、引きこもりニートが! 鏡を見てから言え! ただのモブ顔を近付けるな‼︎)」

「まあまあ落ち着けって。……僕はニートだからどこにも行きはしないよ。(ニヤリ)」

「ばぶばぶばぶう‼︎(どっか行け! 大の大人が実家でだらけてんじゃねえよ‼︎)」

「あー、引きこもり楽しー!」

「ばぶぶ、ばぶ、ばぶ、ばぶ!(楽しむ余裕があるなら、外で働いてこい! この穀潰しが‼︎)」


 こんにちは皆さん。僕の名前はジャスミン・レイヤー。正真正銘女だ。少し前までは、役所勤めをしていたのだが、上司からの執拗な虐めに嫌気が差して、泣く泣く仕事を辞めてしまった。それからはずっと実家で、悠々自適な引きこもりニート生活を謳歌している。大の大人がニートをしているだなんてと、周囲の人たちは嘲笑ってくるが、なんら気にしていない。毎日怒鳴られるよりも、今の生活が快適だからだ! ……家事育児の手伝いはしているから、何もしていない訳ではないのだし、ゆっくりこれからのことを考えていけばいいのだ!

 そんな僕が、姉貴の長男であるイー君の子守りをしていると、父がトコトコやってきた。


「ジョナサン、いいところにいた。」

「父よ、僕はジャスミンだよ!」


 父は、何故か僕のことをジョナサンと呼ぶ。


「今日街に行ってみたら、こんなビラを貰ってな。(ビラをジャスミンに手渡す)」

「なになに、『みんなで母国を守るぞ! スピカ団員 募集中!』だって? アホくさ。(笑)」

「ばぶばぶばぶ!(行け! なんでもいいから面接受けて来い! ニートおばちゃん!)」

「ほら、甥っ子もやめた方がいいって言ってるよ。」

「ばぶぶ、ばぶ!(勘違いするな、ボケが‼︎)」

母国トルネード王国を良くする為の自警団らしいぞ。…………腕が立つジョナサンにピッタリじゃ。(ふぉっふぉっふぉ)」

「……ごめんけど、父よ。これ、だけの採用らしいよ。(ビラの文字を叩きながら)」

「……? ジョナサンは男だろう?(きょとん)」

「いや、女だって! なあ、甥っ子。」

「ばぶぶ、ばぶばぶ!(おばちゃん大丈夫! 男に見えるから! それよりも給料高いぞ! 行ってこい! そして、僕に貢ぐのだ!)」

「……まあ、面接を受けてみたら雰囲気も掴めるし、とりあえずチャレンジじゃ!」

「ばぶばぶばぶ!(行け! 貢げ!)」

「えええー、でも、甥っ子の面倒も見ないといけないからね。……残念だけど、今回は見送るよ。」

「大丈夫じゃ。『子ども同伴可』って書いてあるぞ!」

「ーーーーっ⁉︎(イクメン募集中だと⁉︎)」

「ばぶばぶばぶ!(勿論僕は置いて行け!)」


 と、そこへ姉貴がドタバタやってきた。


「ジャスミンー、イー君の粉ミルクが切れちゃった! お願い、街まで買いに行ってちょうだい!」

「ええー、うそーん。(マジか。)」

「ジョナサン、わしも一緒に行ってあげるから、粉ミルク買うついでに、面接を受けるのじゃ!」

「ばぶばぶ!(よし、おばちゃん、行ってこい!)」

「あっ、イー君も連れて行ってね!」

「なんですと⁉︎(反論したいけど姉貴怖くて言えん。)」

「ばぶー⁉︎(ええええ! 僕もでちゅか⁉︎)」


 というわけで、僕と甥っ子と父は、急いで街へと向かうことになったのであった。(トホホ)



 ◇  ◇  ◇



 ーーここは、トルネード王国郊外にある街。ーー


「よーーし、甥っ子の粉ミルクは無事ゲットできたぞー。甥っ子ー、父ー、迅速に帰ろうかー!」

「ジョナサン、面接を忘れておるぞ。(ガシッとジャスミンの肩を掴んで離さない)」

「ち、父よ…………。(滝のような汗)」

「まあ、落ちる確率も高いらしいのじゃから、大船に乗った気持ちでうけるのじゃ!」


 というわけで、僕達三人は、自警団『スピカ』の面接会場へと向かうことになった。(ちなみに甥っ子は、スピスピ夢の中です。)



 ◇  ◇  ◇



「……それで、今日から来れるのかな?」

「えっ? いや、流石に準備がありますので……。」

「今からでも大丈夫なのじゃ。」

「父ー⁉︎(なんで横に座ってるんだよ⁉︎)」

「即時働けるね。……おんぶしている赤ん坊を預けられる場所はあるのかな?」

「い、いえ、……僕がいつもお世話していますので。」

「実家で育てるから大丈夫なのじゃ。」

「いや、父、勝手に答えるなよ‼︎」

「子育てもクリアっと……。僕達の『スピカ』では、集団行動が主だけど、大丈夫かな?」

「あー、それは無理そうですね。」

「役所で十五歳から十年間働いた実績があるのじゃ。」

「父、口出しするなって‼︎」

「集団行動オッケーね。……最後に、『スピカ』は男性しか雇用しない決まりなんだ。だから、女性の方の志願者には、丁重にお断りしているんだけど、男性で間違いはない?」

「あっ、僕、女です! 男ではありません!」

「ジョナサンは完全なる男なのじゃ!」

「いや、父、いい加減に黙れって!(怒)」

「はい、性別もクリアね。」

「す、すみません。……もし、女性が男装して『スピカ』に入団したあとに、性別が女性だと発覚した場合は、どうなるのでしょうか?」

「その場合は、対象者の記憶を消して実家に送るかなー。」

「ーーーーっ‼︎(やばい組織だぞ‼︎)」

「……まあ、君は正真正銘男だから、そうなることは無いと思うけどね。……時たまいるんだよねー。玉の輿狙って入ってこようとする女性が。」

「ーーーーっ‼︎ すみません、僕、女なので、辞退させていただきます!(大汗)」

「……大丈夫だよ、君、男でしょ? それよりも、今から僕達の仲間になるんだから、もっと打ち解けようよ。」

「な、なんですと⁉︎(目ん玉飛び出てる)」

「親御さんに赤ん坊くん、……大変申し訳ないのですが、今から極秘の内容をジョナサン君にお話したいので、お帰りいただいても宜しいでしょうか?」

「了解なのじゃ!」


 父はそう言うと、私がおんぶしていた甥っ子をシュパパッと剥ぎ取って、今までに見たことのない速さで部屋から出て行ってしまった。(薄情者ーー!)


「……さてと、ジョナサン・レイヤー。……『スピカ』へ、ようこそ‼︎」

「く、クーデター組織⁉︎」


 な、何を言っているんだ、この人は⁉︎


「パトリック、……ジョナサン君が驚いているぞ。」

「まあ、しょうがないよね。……でもさ、ジョナサン君、……僕達の秘密を知ってしまったからにはね、ただでは抜け出せないのだよ。(ニヤリ)」

「ひいいいいい⁉︎(恐怖)」

「おい、初っ端からそんなにビビらすなって。……ごめんな、ジョナサン君。うちの棟梁がすまない。(ペコリ)」

「い、いえ。(ああ、この人はまともな人だ。)」

「突然だが、ジョナサン君、……君に惚れてしまった。愛している。男同士だが結婚してくれ。(かなり真剣)」

「………………ええええええ⁉︎(白目剥いてる)」

「あちゃー、サネユキ、振られちゃったねー。」

「いや、まだだ。いずれジョナサンの全てを手に入れるぞ!」


 ……そう。あの時の僕は、わかっていなかった。面接試験官のうちのお一人が、トルネード王国第二王子のパトリック殿下で、もう一人が、パトリック殿下の従兄弟にあたるサネユキ・イトー様ということに。……わかっていたからって、何か出来たわけではないんだけどね。(トホホ)


 ーーとあるモブ、クーデター組織に入団する‼︎ーー
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