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第伍譚

0050:以心霊信

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 ーーここは、アデル国立大劇場特別室『玻璃はりの間』ーー


「わんわわん‼︎(ノア、……とりあえず、着ぐるみのフードを被って霊信に応じて‼︎ 色々混乱中のパトリック殿下)」

『クエエエ‼︎(了解です‼︎ シュパッと親ペンギン着ぐるみさんのフードを目深に被るノア)』

「わんわんわん‼︎(よしっ! いつどこで誰かが盗聴しているか分からないから、周囲に気をつけてね‼︎ なかなか用心深いパトリック殿下)」

『クエエエ‼︎(ラジャー‼︎ ピシッと敬礼ノア)』

「わふわふわわん‼︎(正直な話、は想定外だったから、どうすればいいのか分からない。だから、月の砂のことをみんなに伝えて、対処方法を話し合ってみるよ。……考えがまとまったら霊信するから、ノアは、劇団の関係者と接触して、事の経緯を聞いてみて‼︎ はやる気持ちをおさえて、計画を立てるパトリック殿下)」

『クエエエ‼︎(ラジャーです‼︎ 動き出すノア)』

 ーーパト殿下はフードを下ろして、口を開いた‼︎ーー

「ミクル姉さん、リリアナ嬢、ベル殿下、……これから、スピカが開発したを配布するから、着用してほしい‼︎(めちゃくちゃ大真面目なパトリック殿下)」

「「「ーーーーっ⁉︎(着ぐるみ⁉︎)」」」

「もっふふう‼︎(パトリック殿下が持ってきていた大きな風呂敷包みを、さりげなく開いてるマリア嬢)」

「急いでサイズを合わせるから、協力をお願いします‼︎(シュパッと針と糸を手にするパトリック殿下)」

 ーー着ぐるみ屋さん『スピカ』の腕が、今試される‼︎ーー


 ◇  ◇  ◇


 ーー半刻約十五分後、大巫女は白狐さん、リリアナ嬢とベル殿下は黒猫さんのフード型着ぐるみさんに着替え終えていた‼︎ーー


「よしっ! 簡易的なサイズ合わせだけど、上手くいったよ‼︎(シュパッと裁縫道具を仕舞うパトリック殿下)」

「わふもふう‼︎(さすがですわ、パトリック様‼︎ さりげなくパトリック殿下の助手を務めていたマリア嬢)」

「ほう、この着物は、なかなか着心地が良いのう。(白ギツネ着ぐるみさんを着てご満悦な大巫女ミクル)」

「……もっふもふですわ。(マリア嬢と同じもふもふになれて、シンプルに嬉しいリリアナ嬢)」

「……リアとお揃いだ。(リリアナ嬢とお揃いの黒猫着ぐるみさんを着用できて、とても嬉しいけど、ちょっと気恥ずかしくて、照れてるムッツリなベル殿下)」

「ミクル姉さん、リリアナ嬢、ベル殿下、……この着ぐるみさんシリーズには、特別な霊力を施しています。フードを被ってみてください‼︎(大真面目パトリック殿下)」

 ーー三人はパト殿下の言う通り、フードを被った‼︎ーー

「わんわわん‼︎(ミクル姉さん、リリアナ嬢、ベル殿下、……マリア様は勿論ですが、僕の言葉が聞こえますか? 四人に霊信を送るパトリック殿下)」

「「「ーー‼︎(頭にパト殿下の声が響いてる三人)」」」

「もっふもっふう‼︎(パトリック様、通信テストオッケーですわよ‼︎ 左拳を振り上げるマリア嬢)」

「わんわんわわん‼︎(マリア様、確認してくれてありがとう‼︎ ……みなさん、この着ぐるみシリーズには、と呼ばれる通信機能と、外野には動物語に聞こえるような盗聴対策機能を施しています。フードを被ってさえいれば、同じ着ぐるみさんシリーズ間での長距離通信も可能です。……今、僕たちは、誰かからされている可能性があるので、発言する場合は、絶対にフードを被るようにしてください。 大真面目パトリック殿下)」

「「「キュー‼︎ フニャー‼︎(了解‼︎ 三人)」」」

「もっふもっふ‼︎(スピカでは、了解を『ラジャー』っと言っていますので、揃えていきましょう‼︎ さりげなくスピカ流を広めていくマリア嬢)」

「「「キュー‼︎ フニャーー‼︎(ラジャー‼︎)」」」

「わんわわわわん‼︎(じゃあ、本題に入るよ‼︎ ……舞台袖に、の大袋が数十袋置かれているところを、先鋒のノアが見つけてくれました。 神妙パトリック殿下)」

「「ーーーーっ⁉︎(驚愕大巫女とマリア嬢)」」

「ふにゃ?(月の砂、ですか? 疑問符リリアナ嬢)」

「ーーーーっ⁉︎(何故、が、舞台袖に⁉︎ 驚愕ベル殿下)」

「わわん、わん。(その反応ということは、月の砂の意味をご存知ですね、ベル殿下? 真面目パトリック殿下)」

「うにゃー。(ああ、知っている。 ジト目ベル殿下)」

「……?(置いていかれてるリリアナ嬢)」

「わわわんわわん、わんわわん。(リリアナ嬢、月の砂はからやって来た白い砂のことです。その白い砂は、人体にとって有害な物質で、浴びると謎の不治の病にかかります。 神妙パトリック殿下)」

「ーーっ⁉︎(な、ん、で、す、と⁉︎ 驚愕リリアナ嬢)」

「わんわわん、わんんわん。(ちなみに、白い砂へ無毒化するための魔法分解を施すと、銀色の砂に変化して、体内に入っても身体的にはダメージを受けません。……しかし、銀色の砂を一定量以上摂取すれば、今度は心を失い、ロボット化します。)」

「ーーっ⁉︎(どっちにしろ、ヤバすぎですわよ⁉︎ ガクブルなリリアナ嬢)」

「……ふにゃー、ふにゃふにゃ、ふふーにゃー。(古代の話だが、月で腐るほどに手に入り、尚且つ、輸送性、利便性、変容性に最も優れていた毒であるから、数々の争いで使用されてきた。別名とも呼ばれ、捕虜に銀色バージョンの粉を摂取させてから、戦闘ロボットとして使役するなど、めちゃくちゃむごい使われ方もされている。……あくまで、『月の砂使用禁止条約』が発布される前までの話だがな。 妙に詳しいベル殿下)」

「キュー、クルクル。(そう言うことだ。……特に、銀色の砂バージョンは、争い事を複雑怪奇にしてたらしい。ロボット化した捕虜達をイクサに投入することで、同じ仲間同士で争わせるという、なんともひどくて腹立たしい話だ。 顔をしかめる大巫女ミクル)」

「わんんわん、わわわわわん。(今、その古代兵器が、舞台袖で待機しているみたいです。……マリア様。 複雑な顔でマリア嬢を見つめるパトリック殿下)」

「もふふもっふう。(パトリック様、……やりましょう。 覚悟をキメたマリア嬢)」

「わう……。(まりあさまあ……。 うるうるパト殿下)」

「もっふもっふもふもふもふう‼︎(この日のために、私は、寝る間も惜しんで間食をしまくっていたのです‼︎ 白かろうが、銀色だろうが、どんとこい、ですわ‼︎ 張り切っているマリア嬢)」

「……わん、……わんんわん‼︎(……分かりました。……僕も、マリア様の力になれるように、頑張ります‼︎ まだ始まっていないのに、もう号泣しているパトリック殿下)」

「もっふもっふう。(嬉し泣きをするのは、終わってからですわよ、パトリック様。 柴犬ハンカチを取り出して、パトリック殿下の涙を拭うマリア嬢)」

「わん‼︎ わふわんわふわふ‼︎(はい‼︎ 一生懸命、マリア様について行きます‼︎ 覚悟をキメるパトリック殿下)」

「ふにゃー、ふふふにゃふにゃ?(パトリック殿下、何か私達にも、出来ることはありませんか? マリア嬢の力になりたいリリアナ嬢)」

「わうん、……わふわふ?(そうですね。……僕とマリア様が、舞台袖へ移動してから、ロバート殿下とセラ嬢を、この部屋へ転送させます。その時に、ロバート殿下達が逃げ出さないよう、ミクル姉さんと一緒に、監視してもらってもいいですか? パラパラっと計画を頭の中で立てて、リリアナ嬢達に伝えるパトリック殿下)」

「ふにゃー!(ラジャー、ですわ‼︎ 敬礼リリアナ嬢)」

「うにゃ。(二人のことは任せてくれ。 敬礼ベル殿下)」

「キュー、クルクル。(パトリック、マリア嬢、……舞台上で何が起こるのか、我にもわからん。用心して、難しそうであるならば、すぐに帰ってくるように。……我は、リリアナ嬢とベルの護衛と、あの二人が逃げ出さないように、まじないをかけようぞ。 安定感抜群の大巫女ミクル)」

「わん、わふわわん。(ミクル姉さん、ありがとうございます。よろしくお願いします。……リリアナ嬢、ベル殿下、……あのお二人と対峙するのは、お辛いでしょうが、よろしくお願いします。……マリア様、心の準備はいいですか? マリア嬢を後ろから抱きしめるパトリック殿下)」

「もっふう!(ラジャー、ですわ! もふもふ)」

「わんわわん‼︎(じゃあ行くよ! 指定人物魔法転送……。 瞳孔ピカッと殿下)」


 ーー橙色の光とともに、二匹の柴犬が、今、向かう‼︎ーー
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