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第肆譚

0041:夫婦になるための試験

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 ーーここは、サネユキの執務室。ーー


「サネユキさまー、よそ見しないで、僕だけを見てよー。(サネユキのお膝に座って謎のうるうる顔なジョナサン)」

「ごめんよジョナサン。寂しかったのか? 許しておくれ。(さりげなく身体を密着させるサネユキ)」

「サネさま大好きー。(虚ろな瞳ジョナサン)」


 ーー二人のよくわからないイチャイチャ(?)を見させられたパトリック殿下御一行達は、かなり困惑した‼︎ーー


「ね、ねえ、サネユキ……。(動揺殿下)」

「うん? どうした?(きょとんサネユキ)」

「ジョナサンの様子がおかしい気がするんだけど……。」

「そうか? 前からこんな感じだったぞ?」

「…………。(いやいや全然違うでしょ⁉︎ 驚愕ノア)」

「そうだっけ? もっとこうさ、男っぽい感じで、サバサバしてたというか、人前でサネユキとイチャイチャするようなヤツではなかったと思うんだけど……。(困惑殿下)」

「……確かに、スピカの前では恥ずかしがって、いつも塩対応だった。しかし今は、私とジョナサンしかここにはいないからな。……日頃蓄積していた私への想いが爆発したのだろう。(何故か顔を赤らめるサネユキ)」

「…………。(怪しい。 眉間に皺を寄せる殿下)」

「スピスピイ……。(殿下の腕の中でおねむなマリア嬢)」

「……。(マリア様がお昼寝中でよかった。 安堵殿下)」

「……んなわけあるか、馬鹿弟よ‼︎(大声大巫女)」

「姉上……。(謎の酔いしれた表情のサネユキ)」

「サネユキ、おぬし、……ジョナサンに対してまじないをかけておるだろう‼︎ 我は、許さぬぞ‼︎(激おこ大巫女)」

「…………。(沈黙を貫くサネユキ)」

「(小声で)殿下、まじないってなんですか?(ノア)」

「うん? ああ、そっか。スピカの訓練では、そこまで進んでなかったよね。……よく僕やサネユキが目をピカッと光らせてるときがあるでしょ?」

「はい。……かなりありますね。」

「あれが、まじないをかけるときの合図だよ。」

「ーーーーっ⁉︎ ……いつもよくピカピカさせてるやつですか⁉︎ あれ結構、怖いですよ‼︎」

「そういうこと。まじないは大抵二種類に別れる。『いわい』か『のろい』かのどちらかさ。ノアには、諜報活動に必要なと、何かあったときに対象者の動きを一時的に止めたり、都合の良い状況を作り出すため対象者を意識朦朧の状態にもっていくを体得させてから、次はまじないかなって思ってたけど、爆弾落ちたりとか舞踏会行ったりとかで忙しすぎて出来なかったから、今度、いろいろと教えてあげる!(にっこりブラック殿下)」

「……謹んでお断りさせていただきます。(確かに霊止は、急いでいたからオリビアさんの結婚式のときに使ってしまった。……でもやっぱり、霊力の多用はあんまりしない方がいいと思うんだよね。 自身の妻に霊止をかけてしまったことを後悔しているノア)」

「そう? 呪いって結構便利なんだけどなー。」

「サネユキ、なんでもいいからうんとかすんとか言いなさい‼︎(ムキーッな大巫女)」

「……だって、仕方がないじゃないですか‼︎ こうやってイチャイチャしておかないと、叔父上が、私からジョナサンを取り上げようとするんですよ⁉︎(悲劇のヒロインばりな表情を醸し出すサネユキ)」

「「「ーーーーっ⁉︎(ええええええ⁉︎)」」」

「どどどどういうことだ⁉︎ ちゃんと説明しなさい、サネユキ‼︎(意味がわからなさすぎてテンパる大巫女)」

「ーーそれは、私が致しましょう、大巫女ミクル様。(シュトッーーといきなり殿下達の前へ現れた一つの影)」

「「「ーーーーっ⁉︎」」」

春霖しゅんりん殿ではないか⁉︎(何故叔父上の侍衛春霖がここに⁉︎)」

「ミクル様に、トルネードのパトリック殿下、ラーズベルト公爵家のマリア嬢、フィックスド辺境伯、そして、、……誠に申し訳ございませんが、現在、サネユキ様とジョナサン様は、夫婦としてやっていけるのか否かの試験真っ只中なのです。どうか、お引き取りをお願い致します。(頭を下げる春霖)」

「夫婦の試験だって⁉︎(意味がわからない殿下)」

「誰だ、そんなよくわからん試験とやらを考えたのは⁉︎(顔を真っ赤にして怒っている大巫女)」

「陛下です。(無表情の春霖)」

「「「ーーーーっ‼︎」」」

「みんな、本当にすまない。……叔父上の了承を得られないと、冗談抜きでジョナサンが実家へ返されるんだ。……私も不可抗力というか、……嬉しい、……ジョナサンが私だけを欲してくれて、満足している、……ではなく、ジョナサンに対して申し訳ないと思っている。許してくれ……。(涙を流すサネユキ)」

「「「…………。(唖然な殿下と大巫女とノア)」」」

「もう、サネさまー、また泣いてるー。(サネユキの涙を拭いつつ頭を撫で撫でするジョナサン)」

「ジョナサンっーー‼︎(ジョナサンに甘えるサネユキ)」

「サネさまー、……僕、サネさまが一瞬マリア様に見惚れてたこと知ってるんだよ。浮気だよね。サネ様、浮気したよね‼︎ 僕だけだって言ったのに、嘘ついたよね‼︎ サネさまも僕のこと裏切るんだ? 僕のことなんかどうでもいいんだ? 僕はこんなにもサネさまのこと大好きで愛してるのに、……ひどいよ、ひどすぎるよ、サネさま‼︎(いきなりメンヘラ化してサネユキをポカポカ叩きだすジョナサン)」

「ああ、……愛されてる。……嬉しい。(何故か頬を赤らめてポカポカ叩かれまくってる嬉しそうなサネユキ)」

「サネさま、答えてよ! 僕とマリア様、どっちがいいの⁉︎(ポカポカ叩きながら、不意に涙が込み上げてきて顔を歪めるジョナサン)」

「ジョナサンだけに決まっているだろう‼︎ 私の一番は、昔も今も、これからも、ジョナサンただ一人だ‼︎(ジョナサンを強く抱き締めるサネユキ)」

「サネさま……。(涙腺崩壊なジョナサン)」

「ジョナサン……。(ジョナサンと見つめ合うサネユキ)」

「「「…………。(ドン引きな殿下と大巫女とノア)」」」

「……はい、本日の夫婦イチャイチャ度、百点。(おもむろに胸元から手帳と筆を取り出して、メモメモする春霖)」

「…………あの、春霖しゅんりんさん?(困惑殿下)」

「……? どうなされました?(顔を上げる春霖)」

「何を書いているのですか?」

「ああ、これですか。……これは、陛下へ報告する試験項目の一覧表です。(パトリック殿下へ手帳を渡す春霖)」

 ーー殿下達は、試験項目表を覗き見た‼︎ーー

『代々皇族と夫婦になるための試験項目

 其壱 とにかく愛し合うこと

 其弐 とにかく助け合うこと

 其参 浮気をしたら死刑‼︎

 其四 とりあえずが大事‼︎』


「……これが試験項目なんですか?(絶句の殿下)」

「はい。……ジョナサン様は、四番目の項目以外は、オール百点です。特に、生まれながらの精神力の強さと身体的なポテンシャルがとても素晴らしく、二、三度、お庭番へのスカウトをしてしまったほどです。……しかし、ジョナサン様は、将来サネユキ様の奥方になられるお方。私は、ジョナサン様が、立派な奥方様になられるよう、サネユキ様にご助言致しました。(涙ながらに語る春霖)」

「……えっとー、春霖さんが、サネユキに、ジョナサンをメンヘラ化させるように助言したっていうことですか?(ドン引きしながら聞いてる殿下)」

「いえ、……メンヘラは、サネユキ様の趣味です。(キリッと春霖)」

「「「ーーーーっ⁉︎(絶句な三人)」」」

「ちなみに、陛下もメンヘラが好みです。(ドヤ顔春霖)」

「……ミクル姉さん、……ニホンはこれで大丈夫なんですか?(冷や汗をかきながら、大巫女に水を向ける殿下)」

「……大丈夫ではないだろう。(一気に十歳くらい老けた大巫女ミクル)」


「ジョナサン、愛しているぞ! 死ぬ時も一緒だ‼︎」

「当たり前ですよ、サネさま‼︎ 僕を置いて行ったりしたら、絶対に許さないんですからね!(サネユキにしがみつくジョナサン)」


 ーーサネユキとジョナサンは互いに抱擁し合う‼︎ーー

 ーーそして、二人に目を光らせる殿下が動き出した‼︎ーー


「(マリア様を抱っこしつつもトコトコサネユキ達の方へ歩み寄って)…………解呪っーー‼︎(瞳孔ピカッな殿下)」

「「ーーーーっ‼︎(びっくりなサネユキとジョナサン)」」

「えへへ、……とりあえず、二人とも、……離れようか。(こらえきれずに目が地走ってるブラック魔王殿下)」

「「ーーーーっ⁉︎(ひいいいい⁉︎ なサネユキ達)」」


 ーーパトリック殿下のターンが今、はじまる‼︎ーー
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