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第参譚

0029:舞踏会当日‼︎

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 ーー夜空に満月が輝く今宵。ーー

 ーーここは、フィックスド家のお屋敷にある会議室。ーー


「みんな、準備はいいかい?(柴犬着ぐるみ殿下)」

「「「おおーー!(わふー‼︎)」」」


 ーーおや、全員、着ぐるみを着ているではないか⁉︎ーー


「僕ちんとアリスちんも一緒に行くでちゅ‼︎(ペンギン着ぐるみを着たアルトがバタバタマリア嬢の周りを回ってる)」

「だめよ、アルト。二人は私とお留守番ですよー。(ひょこっとアルトを抱き上げてアリスの元まで戻る親ペンギンの着ぐるみを着たオリビア)」

「すぴー、すぴー。(安らかにお眠なペンギンアリス)」

「オリビアさん、俺も子ども達を守る為に、お留守番します!(オリビアの周りでキャッキャしている親ペンギンの着ぐるみを着たノア)」

「…………ノアはだよ。(ギロリ殿下)」

「…………。(ダラダラ汗を流すノア)」

「ノアさん、いってらっしゃい。(微笑みオリビア)」

「……行ってきます、……オリビアさん。(泣泣ノア)」


 ーーノアは渋々と殿下達の輪に入っていった。ーー


「パトリック、アデルのマーキュリー殿下から、王城の地図を入手している。……予定通り、この抜け道から入っていこう。(大真面目サネユキ)」

「……アデル側がトルネードの王城の地図を持っているっていうのが、なんだか複雑だよね。(複雑な心境殿下)」

「仕方がないだろう。……元々、あの王城も首都の宮殿も、だったのだから。……それよりも、トルネード王国がアデルから独立した後も、王城内の中身が殆ど変わっていないことの方が問題だぞ。」

「大昔のアデルのすんごい設計士が考えに考え抜いた、渾身の作品だからね。このシステムを超える程のセキュリティは、トルネードの魔術部隊じゃ無理なんだろうなー。」

「わふうー。(何て書いてあるのかさっぱりですわ。)」

「マリア様、絶対に僕から離れちゃ駄目だからね! あと、フードもおろしちゃいけないよ! 盗聴されてる可能性があるからフードを被れないときは、迂闊に喋らない! いいね?(ギュウギュウにマリア様を抱き締める心配症殿下)」

「わふうー!(ラジャー、ですわ! 拳を振り上げて)」

「みんなも、王城内に入る前から、フードを被るんだよ! どこにいても、盗聴されているっていうことを忘れないでね!」

「「ラジャー‼︎(フードを被り出すサネユキとノア)」」

「今回も爆弾のときと同じメンバーで行くけど、危険だと感じたら、すぐに退却すること! おばちゃんリゲル殿下の実母の身柄を確保したら、すぐに霊力で知らせるから、サネユキとノアはすぐに逃げれるような体勢でいてね!」

「「キッキエー‼︎ クエエエ‼︎(ラジャー!)」」


 ーーちなみにサネユキは亀さん着ぐるみだぞ‼︎ーー


「じゃあ早速、マーキュリー殿下の転送用魔法陣を使って、王城へ飛ぶよ! みんな、心の準備はいいね?」

「「「キエー‼︎ クエエ‼︎ わふうー‼︎」」」

「……オリビアちゃん、ここのことは任せたよ。」

「承知致しました、パトリック殿下。(キリッとビア)」

「よしっ、魔法陣発動‼︎(シュパパっとフードを被る)」


 ーー橙色の暖かい炎が、四人を包む‼︎ーー

 ーー一瞬の内に、四人は消失した‼︎ーー


「パトリック殿下、マリア様、サネユキ様、ノアさん、……良いご武運を。(アルトを抱くかたわら、胸の前で、両手を組むオリビア)」


 ーーフィックスド家の会議室は静寂に包まれた。ーー



 ◇  ◇  ◇



 ーーここは、とある王城のとある一室。ーー


「王妃様、お逃げください!(とある侍衛)」

「…………いいえ、私はここにいます。」

「王妃様、…………しかし、…………‼︎」

「覚悟は出来ております……。(微笑む王妃)」

「………………。(言葉にならない侍衛)」

「トモヨシさん、貴方を道連れにするつもりはありません。今までありがとうございました。……今すぐここを出て、二度とトルネード王国に入って来ないように。……良いですね?(柔らかい表情の王妃)」

「…………だめです。王妃様が何をしたというのですか? 王妃様は何も悪いことなんてしていないのに、……こんなのおかしいではないですか⁉︎(両目に涙を溜める侍衛)」

「……ありがとう。……その一言だけで、私の心は救われます。……そして、この命を掛けて最後の最後までやり切れるのですよ。(ゆっくりと声に出す王妃)」

「……王妃様。(ぐずぐずと鼻を鳴らす侍衛)」

「もうすぐマーズとユエ様がやって来ます。貴方だけでも、姿を隠しなさい。……いいですね?」


 ーーと、そこへ…………。ーー


『敵襲だーーー⁉︎ 敵が侵入したぞー!』

『敵はおかしな服を着ているー! 気をつけろー‼︎』


 ーーなにやら、廊下が騒がしいみたいだが……⁉︎ーー


「ーーーーっ⁉︎ 王妃様、ちょっと確認して……。」


 ゴゴゴゴゴ、ガタン、…………バッターーン‼︎


「ーーーー。(落下物の下敷きになって気絶した侍衛)」


 ーー侍衛の頭上から落ちてきたものは……。ーー


「わんわん‼︎(おばちゃん発見‼︎ ビシッと殿下)」

「わっふふう‼︎(王妃様、お久しぶりですわ‼︎)」

「ぱ、パトリックとマリアちゃん⁉︎(パニック王妃)」


 ーーパトリック殿下とマリア嬢なのであった‼︎ーー


「わんわわん‼︎(おばちゃん、逃げるよ‼︎)」

「…………。(パトリック、心まで柴犬になってしまったのね。 可哀想な眼差し王妃)」

「わっふふう!(そこを動かないでくださいまし!)」

「…………。(マリアちゃんも、パトリックに毒されちゃって。……でも、可愛いから許す‼︎)」

「わんわわわん‼︎(サネユキ、ノア、おばちゃん確保したから、今から撤収するよ! ……マリア様、準備はいいね‼︎ 瞳孔ピカッ)」

「わふわふ‼︎(ラジャー‼︎ 下敷き侍衛を掴んで)」

「わわわわん‼︎(指定人物魔法転送‼︎ 瞳孔ピカッ)」


 ゴゴゴゴゴ、……ガガガガガガー、ギュバーっ‼︎


 ーー橙色の炎は、一瞬で部屋中を包み込んで消えた‼︎ーー

 ーーと、そこへ……。ーー


「母上、いらっしゃいますか‼︎(ノックもせずに、扉をあけるリゲル殿下)」

「おやおや、これは、してやられましたね。(微笑ユエ)」


 ーー王妃のお部屋はもぬけの殻であった‼︎ーー


「母上…………。(無表情なリゲル殿下)」

「さっきの不審者騒動といい、第三王妃の失踪といい、……なかなか面白くなってきました。(微笑の月国王ユエ)」

「ユエ陛下、私はどうすれば…………。(虚ろな瞳)」

「心のままに、……リゲル殿下の心のままに、やればいいのですよ。(微笑ユエ)」

「心のままに……ですか……。(虚無リゲル殿下)」


 ーーおやおや、リゲル殿下の様子がおかしいぞ⁉︎ーー



 ◇  ◇  ◇



 ーーアルトとアリスがお眠りになった時間。ーー

 ーーここは、オリビアが待つ会議室。ーー


 ガガガガガガ、ゴゴゴゴゴ、ガハアッ‼︎


「……何ですの、この音は。(眉を顰めるオリビア)」


 ーーと、橙色の炎とともに、見知った人物が現れた‼︎ーー


「わんわわん?(マリア様、大丈夫? マリア嬢を背後からギュウギュウに抱き締めてる殿下)」

「わふう!(へっちゃらですわ!)」

「わんわんわわん‼︎(逞しくなったね、マリア様。)」

「わっふふ‼︎(パトリック様が一緒ですからね‼︎)」

「ーーーーっ‼︎(顔を赤らめる殿下)」

「キッキエー‼︎(パトリック、でかしたぞ!)」

「クエエエエ‼︎(流石です、パトリック殿下‼︎ でも隊長、俺達のやったことって意味ありましたかね? なんか、異様に目立ってた気がするんですが……。 汗を拭うノア)」

「キッキエエ‼︎(私もよくわからん‼︎)」

「……皆様、お帰りなさいませ。(ウルウルオリビア)」

「わふう!(オリビア先生、華麗にただいまですわ‼︎)」

「わわん‼︎(ただいま、オリビアちゃん‼︎)」

「きえええ‼︎(ノアは無事だぞ、オリビア殿!)」

「くえええ‼︎(オリビアさーん‼︎ よくわかんないけど、どうにか帰ってこれたよー‼︎ オリビアに抱き付くノア)」

「……。(みなさまが無事で何より。 しんみりビア)」

「(フードをおろして)オリビアちゃん、急で悪いけど、客間を二部屋用意してもらえるかい?」

「(ノアをガバッと外して)お安い御用ですわ‼︎」

「オリビアさーーーん⁉︎(行かないでー‼︎)」


 ーーオリビアは、シュパパッと会議室を後にした‼︎ーー


「(気絶している王妃を見て)おばちゃんは大丈夫そうだね。それと、下敷きにしちゃってた……。(ダウンしている侍衛を覗き込んでる殿下)」

「(フードをおろしたサネユキ)トモヨシ殿ではないか‼︎」

「うん、丁度着地点にいてさ、どうしようもないから、やっちゃった‼︎(テヘペロ殿下)」

「…………。(トモヨシ殿が可哀想なのだ。)」

「(フードを外したノア)隊長、この人って……。」

「ああ、私の故郷ニホン帝国出身の忍び、トモヨシ殿だ。(謎のドヤ顔サネユキ)」

「ーーっ⁉︎(ニホン帝国の忍びが王妃様の従者なの⁉︎)」

「僕とサネユキの親がトモヨシお兄ちゃん家の忍びと仲が良いんだよね。(トモヨシ殿をおりゃあーっと起こす殿下)」

「何はともあれ、リゲル殿下に見つからなくてよかった、よかった!(一安心サネユキ)」

「…………ギリギリ間に合ってよかったよ。」

「うん、パトリック、どうした?(きょとんサネユキ)」

「わっふふう?(パトリック様、大丈夫ですか? 殿下の額に手を当てるマリア嬢)」

「ありがとう、マリア様。……みんな、今日はお疲れ様。ゆっくり休んでね。(さりげなくマリア嬢を腕の中に閉じ込める謎殿下)」

「「「ラジャー!(わふふう‼︎)」」」


 ーーサネユキとノアはオリビア嬢を手伝いに行った‼︎ーー


「(王妃の顔を見て)……もう、後戻りは出来ないんだな。……なにもかも。(神妙殿下)」

「わふう?(パトリック様?)」

「マリア様、……リゲルとヨリを戻したいって思ったことは無いの?(やや不安げ殿下)」

「わ……ふう。(そう言えば、ありませんねえ。)」

「ーーーーっ‼︎」

「わっふ、わっふ‼︎(パトリック様達が側にいてくださいましたから、リゲル殿下のことは、あまり考えたりしていなかったですわ‼︎  満面の笑みなマリア嬢)」

「……それを聞けて安心したよ。(赤面殿下)」

「ーー‼︎ わっふふう!(あっ、……パトリック様、お部屋の準備が出来たみたいですよ‼︎)」

「そうだね。……一緒に二人を運ぼっか‼︎(微笑み殿下)」

「わっふふう‼︎(勿論ですわ‼︎)」


 ーーとある王城で舞踏会のクライマックスに差し掛かったとき、とあるお屋敷では、仲睦まじい柴犬着ぐるみさんが、えっさ、ほらさ、と何やらやっているのであった。ーー
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