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第弐譚

0021:タイミング

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 ーここは、満月が輝く『百鬼夜行の大通り』ーー


 ゴォーー、グゴォー、ウォーー‼︎


「……マリア様、あれがトルネード王国軍の戦闘機だよ。(マリア嬢の両耳を両手で蓋する殿下)」

「……わふう。(恐ろしい機械ですわ。見た事のない形をしているのですね。 困り眉なマリア嬢)」

の技術を取り入れているからね。他国では、このタイプの機体はまだ作られていないはずだ。」

「パトリック、この大通り一帯に結界は張り終えたぞ。」

「ありがとう、サネユキ。結界が効けばいいんだけどね。(神妙な表情の殿下)」


『マーズ、ツクヨミ、今から落ちてくる物体を、ありったけの空気で包んで着地させろ‼︎ 絶対に裸の状態で落とすなよ‼︎(空中から声を張り上げるロック公爵)』

『『ラジャーー‼︎(空中から応える二人)』』


 ーーと、戦闘機から無数の球体が落ちてきた‼︎ーー


『およよーー⁉︎(サッと避けるツクヨミ)』

『避けるな、ツクヨミ‼︎ エアークッション‼︎』


 ーーロック公爵の魔法で球体はゆっくりと着地した‼︎ーー


『さすがです、お師匠様‼︎(拍手するツクヨミ)』

『馬鹿タレ‼︎ まだまだ降ってくるんだから、お前もどうにかキャッチしろ‼︎』

『ラジャーー‼︎(空中で身体を捻るツクヨミ)』

『エドワード、これでよいか?(複数の球体を操って、地面にゆっくり降ろすマーズ殿下)』

『上出来だ‼︎ ツクヨミもマーズを見習ってやれ‼︎』

『ラジャーー‼︎』


 ーー三人の魔法使いは地味に球体を降ろし続けた‼︎ーー


「……すごい。これが魔法の力。(目を輝かせる殿下)」

「そうだな。やってることは地味だが、霊力では難しいことを成し遂げられる。まさにの力。(納得サネユキ)」

「……隊長、ずっと疑問に思っていたのですが、って何が違うのですか?」

「……難しい質問だな。……簡単に言うと、は原理原則に基づくものである。」

「原理原則ですか?(ほへーなノア)」

「そうだ。全てのエネルギーの総和を操るから、周囲にエネルギーがあって、それに気づけるならば、誰でもできる。……それに反して、は、生きとし生けるもののに起因する。(神妙サネユキ)」

「……『やる気』とかってことですか?」

「そんな感じだ。次第でなんとかするのが霊力。呪いとかもこの類いだな。」

「概念理屈は違うけれど、ある意味どっちも、目には見えないものを利用しているんだよね。(考え込む殿下)」


 ーーと、戦闘機は向きを変えて去って行った‼︎ーー


「……案外早くに終わったね。(冷や汗殿下)」

「ああ。……パトリック、……気をつけろよ。」

「うん。……エドワード・ロック、上手いこと避けてくれよ。(ガタガタ震える殿下)」

「わふ。(殿下の背中をさするマリア嬢)」

「……マリア様、ありがとう。それ、続けてくれますか?」

「わふ。(勿論ですわ。 手を止めないマリア嬢)」

「……幾分かやりやすくなった。みんな、爆風に備えててね。(ロック公爵を凝視して、焦点を定める殿下)」

「「「ラジャー。(わふ。)」」」


 ーーアデルの魔法使い達は、全球体を降ろし終えた‼︎ーー


『エドワード、戦闘機が帰って行ったぞ‼︎』

『ああ。二人とも、油断するなよ。エアークッションは絶対に外すな。(地面に着地するロック公爵)』

『結構あっけなかったですね。(地面に着地して、球体を脇にゴロゴロ転がすツクヨミ)』

『……なんか嫌な予感がするな。(汗だくロック公爵)』

『エドワード、この物体は、第壱イリアルテの危険物保管庫へ転送するぞ。(地面に降りて球体を集めるマーズ殿下)』

『ああ。……これ以外は全て送ってくれ。』


 ーーロック公爵は一番怪しそうな球体をキープした‼︎ーー


『……どうするつもりなんだ?(きょとんマーズ殿下)』

『……調べたいことがある。……これ以外は、すぐに送ってくれ。(球体に手をかざすロック公爵)』

『わかった。……ツクヨミ、準備はいいぞ。』

『了解です。ーーーー物体転送‼︎』


 パアアアアアアア、シュパっ‼︎


 ーー青白い光と共に、沢山の球体は消失した‼︎ーー


『……マーズ殿下、危険物保管庫への転送確認終わりました‼︎(目を煌々と光らせるツクヨミ)』

『よくやった、ツクヨミ。……エドワード、球体は、第壱イリアルテ部隊で解体させるが、いいか?』

『そうしてくれ。……二人はちょっと俺から離れろ。』

『うん? 分解なら俺達も手伝うぞ?(きょとんマーズ)』


 ーーと、球体からチックタックと音が鳴り出した‼︎ーー


「ーーーーっ⁉︎ まずいっ‼︎(焦るパトリック殿下)」

『時限装置付きか⁉︎ (マーズ殿下と、ツクヨミに対して)エアークッション‼︎』

「マリア様、僕が居なくなっても、元気に生きるんだよ。(マリア嬢に微笑んでエドワードの前に飛び出る殿下)」


 ーーその瞬間。ーー


 ドッカーーーン‼︎(強い火薬臭)


 ーー球体の爆発によって、は空中へ舞い上がる‼︎ーー


「「「ーーーーっ⁉︎」」」

『『ーーーーっ⁉︎』』


 ーーパトリック殿下の身体は丸い弧を描いて、マリア嬢の足元へ着地した‼︎ーー


「わふー⁉︎(パトリック様ーー⁉︎ 絶叫して殿下を抱き締めるパニック状態のマリア嬢)」

「パトリック……何故なのだ。(狼狽えるサネユキ)」

「…………。(青褪めた顔で気を失っている殿下)」

「……隊長、とりあえず俺の屋敷へ殿下を運びましょう‼︎」

「……わかった。……マリア嬢、これから運ぶから、パトリックを絶対に離してはならない。大丈夫か?」

「わふう‼︎(わかりました。実雪様、お願いします‼︎)」

「よし、いくぞ‼︎(瞳孔ピカッ)」


 ウゴゴゴゴゴゴゴオオオオオーー‼︎


 ーー『スピカ』の四人は消失したのであった‼︎ーー


 ーー一方アデルの魔法使い達は……。ーー


『エドワードーー‼︎(ロック公爵の身体を抱き締めて絶叫するマーズ殿下)』

『お師匠様……。(ほろほろと涙を流すツクヨミ)』

(おい、お前たち、しっかりしやがれ‼︎)

『『ーーーーっ⁉︎』』

『……え、えどわーどなのか?(驚愕マーズ殿下)』

(ああ、お前たちは無事みたいだな。)

『お師匠様は無事なのですか?(鼻水ズピズピ)』

(さあな。よくわからんが、お前たちに俺の言葉が伝わっているなら、なんとかなるんじゃないのか?)

『エドワード、他人事過ぎるぞ‼︎(大泣マーズ殿下)』

(どうなるかなんて、誰にもわからねーからな。……お前たちに頼みがある。……まず、俺の身体は、トルネード国王城に安置してくれ。)

『『ーーーーっ⁉︎』』

(約一カ月後に、王城で大きな舞踏会があるはずだ。それが終わるまでは、俺の身体を動かすな。)

『し、しかし、エドワード……。(困り眉マーズ殿下)』

(命令だ。舞踏会が終わるまで俺の身体は王城に安置だ。ついでにマーズ、お前の父親と決着をつけてこい。いいな?)

『……ああ、わかった。』

(それとツクヨミ、一番大事な仕事をお前に与える。)

『な、なんでしょう、お師匠?(ゴクリ)』

(……じきに戦争が起こる。いいか、俺の娘、ルナ・ロックを全力で守れ。俺の娘を戦争の武器に、兵器に使われる前に、から奪い返せ! それが、俺と妻の願いだ‼)

『『ーーーーっ⁉︎』』


 ーー今宵の満月はいつもよりも一層輝くのであった。ーー
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