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第弐譚

0020:アデルの三人の魔法使い

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 ーー新型爆弾投下予定日の黄昏時。ーー

 ーーここは、元『スピカ』の野営地内。ーー


「わふっ‼︎(パトリック様‼︎)」

「うん、マリア様、時間だね。そろそろ移動しようか。」

「そうだな。……パトリック、場所は特定できるか?」

「(瞳孔ピカッ)……予想していた通り、の陣営は、に設置されてるね。……ノア達は上手いこと避難させられたかな?」

「便りが来ないってのは、大概成功しているときに限るからな。『スピカ』のまとめ役なんだから、大丈夫だろう。」


 ーーと、そこへ、遠くからノアがやって来た‼︎ーー


「でんかー! 上手くいきましたよ!(ゼェハァ)」

「おかえり、ノア! アルトの実家はどうだった?」

「ゲフゲフ……いろいろと地獄絵図でした。」

「わっふふ‼︎(先輩様、お茶どうぞ‼︎)」


 ーーマリア嬢は、ノアにお茶を差し出した‼︎ーー


「ーーーーっ‼︎ マリア様、ありがとうございます!(コップにかぶりついてゴクゴクと飲み干すノア)」

「それで、……フローレンス家の人達と交渉できたの?」

「ハアハア……ギリギリどうにかなりました。」

「わふわふ!(ノア様、おかわりはいりますか?)」

「ありがとうございます、マリア様。今ので充分足りました。(コップを手拭いで清めてマリア嬢に返すノア)」

「わふ!(了解ですわ! コップを受け取るマリア嬢)」

「殿下、フローレンス家の方々には、一旦、ルーセント辺境伯領に避難してもらいました。」

「マテリア帝国側に位置するルーセント領か。……よく話がまとまったね。(考え込む殿下)」

「最初は俺たちの話を信じてもらえなかったんですけど、三日前からトルネード帝国軍がどかどかと押し入って来て状況が一変しました。『古くから交流のあるルーセント辺境伯の領地になら行ってやる。』とフローレンス家側が主張したので、その通りに致しました。」

「ルーセント家は、フローレンス家の弟分みたいな間柄でもあるからね。……何はともあれ、アルトの家族が巻き込まれないように対処できてあっぱれだ!」

「はい! フローレンス家のオリビアさんに対する仕打ちは、俺は絶対に許しませんが、アルトと血の繋がりのある家族ですから、必要最低限のことは出来たと思います。」

「了解。もう帰っていいよ。今から始まるはずだから、オリビアちゃん達の側についてあげて。」

「いえ、殿下。オリビアさんから『殿下の手足となって働いて来てください。私達は大丈夫だから。』って言われて。俺、感激し過ぎて泣きそうです‼︎(ゴーゴー涙なノア)」

「……いや、もう泣いてるじゃん。(ドン引き殿下)」

「オリビアさん達のためにも、俺、ここで頑張ります‼︎」

「そうだな! 人数が多いとなんとかなるからな‼︎」

「わっふふう!(私もいますわよ!)」

「……よし、四人での援護をするぞ‼︎」

「「「ラジャーー‼︎(わふう‼︎)」」」


 ーー四人は『百鬼夜行の大通り』へと向かった‼︎ーー


 ◇  ◇  ◇


 ーーここは、『百鬼夜行の大通り』。ーー


「マーズ、ツクヨミ、しっかりばら撒くぞ‼︎(銀色の粉が大量に入った大袋を抱えるエドワード・ロック公爵)」

「……、このは何なのだ?」

「ああ? なんでもいいから、さっさとやれ‼︎」

「……エドワードがつれない。私は寂しいぞ。(しょんぼりしつつも、言われた通りに粉を撒き出すマーズ殿下)」

「お師匠様、こんな気味の悪いところにどうしてやって来たのですか?(黒い前髪で顔を隠している男)」

「……いろいろあるんだよ。いいか、この粉全部撒ききらなかったら、夕飯抜きだ‼︎」

「ーーーーっ‼︎(お師匠様がスパルタ過ぎてつらい‼︎)」


 ーー三人は地味に銀色の粉を撒きまくった‼︎ーー


「エドワード、こんな感じでよいか?」

「……ああ。上出来だ。(上手くいけばいいのだが。)」

「お師匠様、あのー、勤務時間を超えちゃいましたね。」

「おう。今から時間外だ。(ギロリ)」

「……ですよねー。(残業いやだー‼︎)」

「それで、……エドワード、を待っているのだ?」

「……さあな。ただ、よくおけよ。」

「…………?」

「おそらく一瞬だからな。」

「お師匠様、サンドイッチ食べますかー?」

「……おう、マーズも食べておけ。今から忙しくなるからな。(地べたに腰掛けるロック公爵)」

「そうだな。ツクヨミ、私の分もあるか?」

「ありますよー! チャチャっと食べちゃいましょー‼︎」


 ーーの魔法使いツクヨミは、大風呂敷を広げた‼︎ーー



 ◇  ◇  ◇



 ーー一方パトリック殿下御一行は、草木の茂みから使を覗き見していた‼︎ーー


 ーーここから先の『スピカ』会話は全て小声です。ーー


「わあ! マリア様、あの背の高い男性がね、僕のお兄様なんだよ‼︎(目をキラキラさせる殿下)」

「わふっ⁉︎(あ、あれが噂のマーズ殿下ですか?)」

「そうそう、一回だけ会った事があるんだけどね、すっごく真面目で優しいんだ! そんでもって、マーズ兄さんの横にいるのが、この前スピカにやって来たエドワード・ロックでしょ?」

「わふわふう!(そうですわね!)」

「それで、あの黒髪の男は……要注意だな。」

「わふう?(きょとんマリア嬢)」

「うん? パトリック、どうしたのだ?」

「いや、あの顔面を黒髪で覆っている男、……このの人間じゃない気がするんだ。(ガタガタ震え出す殿下)」

「わ、わふ⁉︎(パトリック様、大丈夫ですか?)」


 ーーマリア嬢は、殿下に抱きついた‼︎ーー


「……ハアハア、……ありがとう、マリア様。少し落ち着いたよ。(マリア嬢を強く抱きしめ返す殿下)」

「わふう‼︎(発作になったらちゃんと言って下さいね‼︎)」

「うん。……心強いな。(マリア嬢に微笑む殿下)」

「……殿下が身震いするほど、あの黒髪の男性は異常なんですか?(殿下のセンサーが反応するのは久しぶりだな。)」

「……どうなんだろう? こんなの初めてだからね。」

「だが確かに、パトリックの言い分は合ってるかもしれんぞ。……あの男には、が無いからな。」

「「「ーーーーっ‼︎(わふっ?)」」」

「……僕も気が付かなかった。日が暮れて見えにくいから判断が難しいけど、サネユキの言う通り彼だけね。」

「日中に確かめた方が確実だな。」

「うん。……エドワード・ロックが一緒に行動しているってことは、安全なのかもしれないけれど、念のため、マリア様はあの男に近づいてはいけないよ。」

「わふわふわふ‼︎(はいなのです‼︎)」


『お師匠様、サンドイッチ食べますかー?』

『……おう、マーズも食べておけ。今から忙しくなるからな。(地べたに腰掛けるロック公爵)』

『そうだな。ツクヨミ、私の分もあるか?』

『ありますよー! チャチャっと食べちゃいましょー‼︎』


「……ピクニック?(こんな状況で? 驚愕殿下)」

「わふわふ‼︎(パトリック様、アンパンは常備してますからね! おもむろにアンパンの入った籠を見せつけるマリア嬢)」

「うん、マリア様も用意周到だね。……落としてはいけないから、僕の式神に持たせておくよ。(瞳孔ピカッ)」


 ーーアンパンの入った籠は一瞬で消失した‼︎ーー


「わふぅ⁉︎(アンパン、カムバーック‼︎)」

「ほんとマリア様、癒し系なんだから。(万が一、爆弾の影響でアンパンが汚染されたら勿体無いからね。)」


 ーーパトリック殿下はマリア嬢の頭をナデナデした‼︎ーー


「……なんかアデルの魔法使いって和気藹々わきあいあいとしていますね。(冷たいインテリの集団だと思ってたノア)」

「あの三人は稀だぞ、ノア。(きょとんサネユキ)」

「稀、ですか?」

「ああ、彼らは確かの所属だったはずだ。おまけに今は、トルネード国王の計らいで、二国共同特別魔術部隊の部員も兼任している所謂中立派の魔法使いだな。」

「そうなのですね。(ほへー。)」

が厄介でな、実家ニホン帝国もアデルと交流があるが、……の取り締まりがなかなかに厳しいのだ。」

「へえー、ニホンってアデルとの国交開いてたんだ。」

「約十年前からだ。ニホン人は霊力を扱えるから、アデルの零側は、ニホン人を警戒しているらしい。」

「いろいろと大変なんだね。(ほへーな殿下)」


 ーーと、そこへ、プロペラの爆音が近づいてきた‼︎ーー


「「「「ーーーーっ‼︎」」」」

「……マリア様、絶対に僕から離れちゃ駄目だよ。(マリア嬢を背後からグイッと抱き締める殿下)」

「わふふう‼︎(ラジャーなのですわ‼︎)」

「ノア、結界を張るぞ‼︎」

「了解です、隊長‼︎」


『…………来たな。マーズ、ツクヨミ、行くぞ‼︎』

『『ラジャーー‼︎』』


 ーー戦い(?)の火蓋が切られた瞬間だった‼︎ーー
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