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第弐譚

0014:セト公が遊びにやってきた!

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 ーー新型爆弾お披露目から五ヶ月後の昼下がり。ーー


「やあ、・ロック。ようこそ、『スピカ』へ!」


 ーー殿下の天幕に、セト公が遊び(?)に来ていた‼︎ーー


「……お久しぶりだ、パトリック殿下。(大汗セト)」

「セトー、この性格悪そうな男、誰なの?(セトに抱き付いている触覚を生やしたモブロイド)」

「……結局、現状維持なんだ。(何故か苛立つ殿下)」

「……かなり悩んだが、こっちの選択の方が、と長い時間、一緒にいられるからな。仕事がひと段落するまでは、辛抱だ。(ジト目セト)」

「そう……。まあ、僕は別にいいけどね。」

「セトー、この男嫌いー。僕の事虐めてきそうだもん!」

「うるさい、このゴキブリが‼︎ 今から大事な話をするんだから、暫く眠ってもらうよ! ……(瞳孔ピカッ)」

「せ……と……スピー、スピー。(地面で寝るモブ)」

「…………。(あの瞳孔が光るのは一体何なんだ⁉︎)」

「よし、邪魔者も居なくなったし、本題に入ろうか‼︎」

「あ、ああ。(調子が狂って仕方ない。)」


 コンコン


「殿下ー、お茶持って来ましたよー。」


 ーーと、そこへ、ノアが入って来た‼︎ーー


「ノア、ありがとねー。……セト・ロック、遠慮しないで飲んでね‼︎(真っ黒の液体が入ったティーカップをセト公の前に突き出すブラック殿下)」

「あ、ああ……。(この液体は一体⁉︎)」

「では殿下、俺はこれで失礼させて頂きます!(面倒なことに巻き込まれたくないから素早く退出しようとするノア)」

「(ノアの袖をガシッと掴んで)まあまあ、……今から面白そうなお話をしてもらうから、残ってなよ。(有無を言わせない、にっこり殿下)」

「嫌ですよ‼︎ 殿下、面倒事を押し付けて来ないでください‼︎(必死に天幕から出ようとするノア)」

「……仕方がない。一家団欒には水を差したくないけれど、オリビアちゃん達には辺境伯領に帰ってもらおうかなー。」

「殿下、今日はどのようなご用事ですか? 早く話してくださいよ‼︎(態度を一変させるノア)」

「ええ? 聞きたいのー? 言っちゃっていいのー?」

「聞きたいです! 何でもどんとこい‼︎」

「……。(ノア殿の心労が窺えるな。 ほろほろ涙セト)」

「じゃあ、本題に入ろうか。……セト・ロック、ここに来たっていうことは、出来たのかな?(にんまり殿下)」

「ああ。先日受け取ったサンプルを、至急魔法分析にかけてみた。(懐から小瓶を取り出してテーブルに置くセト)」

「そう……。何か成果はあったの?」

「大アリだ。……このサンプルの成分は、でしか採取されない物質ということがわかった。」

「へえー。……月について詳しいんだね。」

「俺達ロック家の仕事は、の監視が一番だ。昔、色々とあったからな。それで月で仕事をしていたエドワード叔父さんが偶々たまたま月から持ち帰った物質と、成分が一致したんだ。」

「ふーーん。……エドワード・ロックがねー。」

「それだけではない。……エドワード叔父さんに頼んで、禁忌の書物『世界の始まり』を一緒に調べ上げた。……そこに、古代で使用されていた爆弾の作り方が書かれていて、その材料が、このサンプルと同じ物質だったんだ。」

「ほおー。……僕たちから見れば、新型だけど、中身は古代兵器そのものだってこと?(きゅるるん殿下)」

「……それは分からない。ただ一つだけ分かるとすれば、サンプルの物質は全てを物ということだけだ。」

「……まあまあ、予想していた通りだなー。」

「……。(サンプルって何なの⁉︎ ついていけないノア)」

「それと、……全てをに浄化する作用もある。」

「ーーーーっ‼︎ 成程、表裏一体ってわけだね‼︎」

「その通り。……爆弾の項目には、作り方の他に爆弾の使用による影響と、が書かれていた。」

「対策には、なんて書いてあったの?」

「……サンプルと同じ物質を大量に魔法分解して、被曝地域に散布すると、徐々に綺麗になっていくと書かれていた。(汗を拭うセト)」

「……一筋縄ではいかなさそうだね。(しょぼくれ殿下)」

「まず、大量の材料が必要だからな。どうやって月の住民に気づかれずに、材料を入手するのか考えないといけない。」

「……ほんとには面倒なことをしてくれるねー。」


 ーーと、そこへ、サネユキがやってきた‼︎ーー


「(ガバッと天幕の扉を開いて)パトリック、遠路はるばる帰って来たぞ‼︎ おやっ、先客か‼︎(元気なサネユキ)」

「ーーーーっ‼︎(隊長‼︎ 帰りを待ってましたよー!)」

「お帰り、サネユキ! こちらは、エドワード・ロックの甥っ子にあたるセト・ロックだよ!(丁度いいね。)」

「……どうも、セト・ロックです。(あの、温厚というか、回避しまくるニホン人がパトリック殿下の仲間なのか⁉︎)」

「イトー・サネユキだ! よろしく‼︎」

「ーーーーっ⁉︎(イトー姓ということは皇族だと⁉︎)」

「サネユキー、早かったじゃんー‼︎(興奮殿下)」

「色々あったのだ! パトリック、単刀直入に言うが、この白い粉を見てくれないか?(懐から小瓶を取り出しつつ)」

「「ーーーーっ⁉︎」」

「うん? どうした、二人とも?(きょとんサネユキ)」

「サネユキ、その粉はどこから取ってきたのかな?」

「とあるジャガイモ農家の倉庫からだ!」

「ジャガイモ農家?」

「ああ、正確には、から押し付けられた農薬だ!」

「あの、……ちょっと見せてもらってもいいですか?」

「……? いいですよ。セト殿、どうぞ。」


 ーーサネユキは、小瓶をセト公に手渡した‼︎ーー


「(魔法で小さな球体を作りその中に小瓶を封入して)……今から、この粉農薬とサンプルの粉の融合性を調べる。」

「よろしくー‼︎(なんだか展開が面白くなってきたぞ!)」

「…………?(どうしたのだ? きょとんサネユキ)」

「……。(この二つの粉が同じ成分ならいいんだよね?)」


 ーー小さな魔法球体の中で、農薬はぜまくる‼︎ーー


「ーーーー‼︎(同じだ。この爆ぜ方に、化学反応。エドワード叔父さんに確かめてもらうのが一番手取り早いな。)」

「……ってなんだか綺麗だねー。」

「ああ、そうだな! 霊力は地味だから、派手な魔法を見ていると、とても新鮮だ‼︎(いろいろと勉強になるぞ!)」

「……。(もっと魔法も勉強しとけばよかったな。)」

「(小さな魔法球体から農薬の小瓶を取り出して、パトリック殿下に手渡すセト)……おそらく、サンプルと同じ物質だ。出来ればエドワード叔父さんに確認を取りたいから、アデル皇国へ持って帰ってもいいだろうか?(月の資源が何故、農薬としてトルネード王国で流通しているんだ?)」

「いいよ、いいよ‼︎ 持って帰っちゃって‼︎ ……いいよね、サネユキ?(きゅるるん殿下)」

「いいぞ! とりあえず、ジャガイモ農家に保管されていた農薬全部を転送してきたから、持って行ってくれ‼︎」

「……ありがとう、サネユキ殿。(この人はいい人だ。)」

「なに、困ったときはお互い様だからな‼︎」

「……サネユキー、魔法使えないのに、どうやって転送したのー?(そういえば、モブジョナサンもいないなー。)」

「ああ、それはだな、……演習場で知り合った、リムル殿という魔法使いに手伝ってもらったのだ!(転送魔法はとても便利だな!)」

「ーーーーっ⁉︎ あの、その魔法使いは今、何処に?」

「うん? 天幕の外で煙草を吸っているぞ?(きょとん)」


 ーーセト公は聞くや否や、天幕から飛び出した‼︎ーー


「……セト殿は一体どうしたのだ?(きょとんサネユキ)」

「さあ、どうしたんだろうねー?(ニヤニヤ殿下)」

「……。(隊長がいるだけで、安心感が半端ない!)」



 ◇  ◇  ◇



 ーーところ変わって、天幕の外。ーー


「ーーお父さんリムル‼︎(リムルを魔法で捕獲するセト)」

「セト⁉︎(吸っていた煙草を地面に落とすリムル)」

「おう、セト、大きくなったな‼︎(腹筋してたリアム)」

「リアム叔父さんも一緒にいたのですね‼︎(リアムにも一応魔法で捕獲するセト)」


 ーーセト公、実父リムルと感動(?)の再会をする‼︎ーー


「とりあえず帰りますよ‼︎(二人を引きずるセト)」

「ま、待ってくれ、セト。……俺には、やらないといけないことが……。(物凄く焦っているリムル)」

「つべこべ言わないでください。……まずは、母上のお墓参りに行きますよ。(ジト目セト)」

「…………。(観念してしょぼくれるリムル)」

「見ない間に立派になったな! 流石リムルとマーガレットの息子! おじちゃん、嬉しいぞ!(涙を流すリアム)」

「……叔父さんも早く結婚したらどうですか?(ジト目)」

「くぅ‼︎ 痛いところを突かれてしまったな!」

「パトリック殿下に挨拶したらすぐに帰りますからね!」


 ーー若干不機嫌なセト公は、天幕を目指した‼︎ーー



 ◇  ◇  ◇



 ーーところ戻って、天幕の中。ーー


「(地面で眠っているモブを叩き起こし、肩に担いでから)パトリック殿下、サネユキ殿、ノア殿、此度はお世話になった。偶然にも父と叔父を発見したので、今日はこれで失礼する。(ペコリセト)」

「よかったねー、セト・ロック! それと、の調査、引き続きよろしく‼︎(きゅるるん殿下)」

「農薬は、全部持って行ってくれて構わないからな‼︎」

「ああ! ……それと、パトリック殿下、……土壌等の環境には、書物に書かれていた対策でいいのだが、に対しては、書かれていなかった。」

「……ということは、検体が必要なんだね?」

「ああ。……そのことに関して、エドワード叔父さんから話があるみたいだから、近いうちに会いに来るはずだ。」

「……わかった。いろいろと楽しみだね!」

「白い粉について何かあればまた来る。では……。」


 パアアアアアアア!(仄かなオレンジ色の光)


 ーーセト公一行は、アデル皇国へ帰って行った‼︎ーー


「さてと、……サネユキ、報告は明日でいいからね!」

「……今日は随分と優しいな。(有難いけれど。)」

「朝からずっと仕事ばっかりだったからさ、……癒しが欲しいんだよ。(そろそろ限界殿下)」

「癒しか……。故郷ニホン帝国に置いて来てしまったからな……。」

「今日は、マリア様が僕の為に料理をしてくれているからね、朝からご飯抜いててお腹ペコペコなんだよね!(舌舐めずりする殿下)」

「左様か! それは楽しみだな‼︎」

「……サネユキにはあげないよ?(真顔殿下)」

「ーーーーっ⁉︎(パトリック、器が小さ過ぎるぞ!)」

「(天幕の扉を開けて)失礼します。殿下、お食事の準備が出来ましたわ。(仕事顔のオリビア)」

「ーーーーっ‼︎ サネユキ、ノア、行こう‼︎」


 ーー四人は、食堂へと向かった‼︎ーー



 ◇  ◇  ◇



 ーーここは、『スピカ』野営地の食堂。ーー


「わふわふ‼︎(いらっしゃいませ~‼︎)」

「マリア様、……エプロン、とても似合ってますよ!(興奮しすぎてマリア嬢の周りをうろちょろする殿下)」

「わふふわふ‼︎(パトリック様、席について下さいな‼︎)」


 ーーパトリック殿下は、マリア嬢の前を陣取った‼︎ーー


「今日の献立は何ですか?(きゅるるん殿下)」

「わふっふ‼︎(お肉の入っていないシチューですわ!)」


 ーーマリア嬢は、慣れた手付きでシチューを出す‼︎ーー


「わふわふっふ‼︎(どうぞ召し上がれ~‼︎)」

「うわあ! 美味しそうだなー! ……マリア様、いただきます‼︎(嬉しすぎて涙が溢れる殿下)」


 パクっ。……モグモグモグ。(殿下の咀嚼音)


「わふふ?(ど、どうでしょうか?)」

「………………。(ひたすら黙々と食べる殿下)」

「わふう?(ま、不味いのかしら?)」

「……………しい。(一心不乱に手を動かす殿下)」

「ふうわ?(何やら様子がおかしいですわね。)」

「……マリア様、美味しすぎて、明日死んでもいいくらいです! おかわりもらってもいいですか?(嬉し涙をダバダバ流しながら完食する殿下)」

「わっふふふ‼︎(……よくわかりませんが、お口に合えばオールオッケーですわ! 殿下に慣れたマリア嬢)」

「本当なら、自分だけで独占したいけど、仕方ない。サネユキ、ノア、……食べてもいいよ。(やや嫌そうな殿下)」

「ほんとか、パトリック! 実はずっと腹ペコで、死にそうだったんだ!(殿下の隣に座るサネユキ)」

「俺もいただきます!(サネユキの隣に座るノア)」

「マリア様とオリビアちゃんも一緒に食べようよ‼︎」

「わっふふ?(いいのですか?)」

「当たり前だよ! 一緒に食べると、もっと美味しいからね!(自分の隣の席をバフバフ叩く上機嫌殿下)」

「マリア様、私がよそいますので、席についてくださいな!(マリア様は大事な御令嬢様なのに、お料理もお得意で素晴らしいですわ‼︎)」

「わふっわふ‼︎(オリビア様、ありがとうございます‼︎)」


 ーーシュパパっとマリア嬢は席についた‼︎ーー


「(シュパパっとシチューをよそったお皿を全員に配膳してノアの隣に座ったオリビア)殿下、いいですよ!」

「それじゃあ、いただきます!」

「「「「いただきます‼︎」」」」


 ーーちなみにアルトとアリスはお昼寝中なのであった‼︎ーー
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