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第壱譚(修正前)

0007:異なる能力者との遭遇

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 【side とあるモブ(ジョナサン)】


 ーーここは、トルネード王国首都中央広場。ーー


「……ジョナサン、スピカ団員にはちゃんと指示した?」

「ああ、はい、殿下。皆、各々おのおのの持ち場につきましたが……。(滝のような汗)」

「ありがとう。じゃあ、僕とマリア様は今からデートしないといけないからね、ジョナサンも後ろからついておいで。」

「ああ、はい。でも、僕も自分の持ち場があるんで……。」

「人足りてるから大丈夫だよ。ねっ、マリア様?」

「ワンワン!(にこっ)」

「ほら、マリア様も一緒に行こうって言ってるよ!」

「は、はあ、……それじゃあ、お言葉に甘えて、ご相伴ばんしょうにあずかりましょう。(嫌だ。一緒に歩きたくない。)」

「よかったね、マリア様!」

「わふわふ‼︎」


 …………どうも、クーデター組織『スピカ』平団員のジョナサンです。現在僕達は、第三王子リゲル殿下が企画した視察の為に首都中央広場に来ているのですが、…………今すぐ野営地に帰りたい。


「ジョナサンー、こっちこっち!」

「あ、はい、殿下。すぐに行きます。(汗)」


 無限に広がる青い空。活気に満ち溢れた首都の街並み。いつもなら、ここに来ると元気が湧いてくるのに、目の前の二人を見ていると、『あれ? ここは、どこだっけ?』と思ってしまう自分がいる。

 ……まあ、パトリック殿下はだから問題ない。問題はマリア様だ。……マリア様は現状、ニホン帝国の犬『』の着ぐるみを着て、首元に真っ赤な首輪を嵌められ、おまけに首輪に取り付けられたリードをパトリック殿下に握られている。

 …………いや、おかしいだろうっ⁉︎ パトリック殿下、もう少しマリア様のことを考えてあげてくださいよ。パトリック殿下が特注した衣装と聞いて安心した自分が馬鹿だった。全然大丈夫じゃない。変装以前に、めちゃくちゃ目立っててとても恥ずかし過ぎる! おまけに、マリア様が何故か『ワンワン』とか『わふわふ』とか、『クゥーン(困り眉)』とかしか言わなくなってしまった。……殿下、マリア様に一体何をしたのですか⁉︎ ……言いたいけど、言えない。そんな自分が不甲斐ない。僕は心の中で『マリア様、こんな棟梁でごめんなさい。』と懺悔した。


「わふっ、わふわふ、わっふふ!(にこにこ)」

「マリア様、そのペロペロキャンディ食べたいの?」

「わふっ‼︎」

「りょーかい! すみません、そのキャンディ一つください。(屋台の店主とキャンディと貨幣を交換して)……ありがとうございます。ほら、マリア様、キャンディだよー!」

「わふわふ!(パトリックさまー! ください!)」

「あ、待って、マリア様。はい、お手!(左手を出して)」

「わふ!(右手をパトリック殿下の手に乗せる)」

「おかわり!」

「わふ!(左手をパトリック殿下の手に乗せる)」

「伏せ!」

「わふふ!(伏せる)」

「三回、回ってワン!」

「…………(三回右回りして)ワン!(にこっ)」

「よくできました! ほら、ご褒美のキャンディだよ。」

「わふわふ!(パトリック様、ありがとう!)」

「…………。(恍惚パトリック殿下)」


 ……駄目だ! 見ていると頭がおかしくなりそうになる! というか、いつ殿下はマリア様にあのような芸当を仕込んだのかな? もう勘弁してくれ。僕は護衛の身分でありながら、お二人を出来る限り視界に入れないよう心がけた。


「わふわふ!(キャンディ美味しいですわ!)」

「マリア様、楽しそうでよかった。(うっとり)」

「わふわふわふ!(パトリック殿下、ありがとう!)」


 ーーと、三人の近くをとある二人組が横切った。ーー


「わふ…………わふふ。(急に力が抜けてパトリック殿下にしなだれ掛かるわんこマリア嬢)」

「ーーーーっ⁉︎ 敵襲ですか、殿下⁉︎」

「(マリア嬢を抱き込んで)……いや、この感覚は、……あのだ。(黒髪のモブを指差して)」

「ーーーーっ‼︎(ご、ゴキブリ⁉︎)」

「ジョナサン、とりあえずあの、……いやモブ顔を引き留めろ。(瞳孔開いてる)」

「は、はい!」


 僕は急いで、殿下が指差した人物とその同伴者に声を掛けて、人混みの少ない路地裏へと誘導するのであった。



 ◇  ◇  ◇



「あのー、いきなり呼び止めて、あなた達、一体何なのですか? 警察呼びますよ。(黒髪モブ)」

「……生憎、その(自称)警察とやらをやっている者なんだが。(黒パトリック殿下)」

「ーーーーっ‼︎」


 殿下の指示通り、黒髪の男(?)とその同伴者に路地裏へと入ってもらうと、言うまでもなく一触即発状態になってしまった。(汗)せめてもの救いは、マリア嬢が気絶してくださったお陰で、殿下の本領が発揮できると言う点ぐらい。(殿下はいつも怖いけど、マリア様の前だけは猫被ってるからね。)


「おい、そこの。お前、ここ中央広場に何をした⁉︎(黒髪のを指差して)」

「ーーーーっ? 何のことだよ! 僕はただこの美しい街並みを旅しているだけだ!(プンスカ)」

「……無自覚でやっているのか、この野郎。(激おこ)」

「……す、すまない。コイツ黒髪のモブは知らないんだ。許してやってくれ。(滝のような汗を流しながら言い訳する同伴者)」

「……そんなような輩をみすみす許すヤツが何処にいるんだ‼︎」

「た、頼む! 本当に不可抗力なんだ、今回だけは見過ごしてくれ。(めっちゃ頼み込む同伴者)」

「……ねえ、、どうゆうことなの? 僕、なんかしたの?(きょとん)」

「チッ、ゴキブリの分際でキョトン顔しやがって。(黒髪のモブを睨んで)……。(やっぱり瞳孔開いてる)」

「ーーーーっ‼︎(途端に気絶する黒髪のモブ)」

ー!(必死で黒髪のモブを抱き止める同伴者)」

 あちゃー、殿下ついにブチ切れて使っちゃったよー。(死んだ魚の目)……これ、隠蔽するのにどれくらいかかるのかな?(困り眉)


「おい、ゴキブリの同伴者、お前は知っているみたいだな。(ビシッと指差して)」

「…………ああ。(滝のような汗)」

「ジョナサン、急いで野営地へ帰るぞ。」

「えええっ! 殿下、まだ来たばかりではないですか⁉︎(視察は? 諜報活動は? マリア様とのデートは?)」

「……必要なものは取得済みだ。偵察も僕のがいるし、皆に任せればいい。…………それよりも、このをなんとかしないと気が済まない。(黒パトリック殿下)」


 うそーん。えー、そんなー、…………僕も一緒に帰るんですよねー。(残りたい。皆と都会エンジョイしたい。)……殿下達だけ帰ってくださいよー。(僕を巻き込まないで!)


「……おい、同伴者、……お前、転送魔法使えるんだろ?」

「あ、ああ。(滝のような冷や汗)」

「今すぐ僕達を指示した場所に転送しろ。勿論、そのも一緒だ。逃げようと思っても無駄だぞ。もし少しでもおかしい動きを見せるなら、地獄の沙汰まで追いかけてやるからな。(ギロリ)」

「わ、わかったよ。(俺の人生終わった。)」


 というわけで、僕達五人は、黒髪の男(?)の同伴者の転送魔法によって、至急『スピカ』の野営地に移動することになったのであった。(先輩ー、お土産よろしくですー。泣)


 ーー『ええええ! わし、こんな展開、聞いてないぞよ。(神様びっくり)』次回、が交差する‼︎ーー
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