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序 譚
0000:断罪裁判は蜜の味
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「リリアナ嬢、君が今までにしてきた悪事を、やっと白日のもとに晒すときがきたーー。」
皆様ごきげんよう。私はリリアナ・ヘレン。ヘレン公爵夫妻の一人娘ですわ。
我が祖国ランドット王国の建国に携わった英雄ジョナサン・ヘレンの末裔にあたりますの。
そんな由諸正しい家系の出である私は、今しがた、宮殿の法廷にて婚約者である第二王子ロバート殿下から断罪裁判を起こされているのですが、どうしましょう。笑いが込み上げてきてしまって仕方がありません。
我慢しきれなくてふるふると震えれば、また、ロバート殿下から怒鳴られるかもしれません。
しかし、に、にやけが止まりませんわ。フフフ。
「リリアナ嬢、泣いても無駄だ! ……君が犯した罪は海よりも深く山よりも高いのだぞ‼︎」
「も、申し訳ありません、殿下。……一体、私が何をしたというのでしょうか?」
「……この期に及んで、罪の意識が無いのか、リリアナ嬢よ。ヘレン一族も随分と落ちぶれたものだな。」
ガタンっと傍聴席から音がしたので、振り向くと、父と母が立ち上がって怒りに身を震わせていますわ。
二人共、落ち着いてくださいまし。
これからが、本番ですわ!
「傍聴席の方、席にお直りください。原告のロバート殿下、リリアナ嬢の具体的な罪を発言してください。」
この法廷を取りまとめる裁判官の第一王子ベル殿下がロバート殿下を促します。
「皆のもの、手元にある資料に目を通してくれ。宮殿に仕える麗しいリノン男爵令嬢に対するいじめの数々をリストアップしてある。」
リノン男爵令嬢セラ・リノン様は、最近社交界デビューをはたした期待の星なのです!
私は、ロバート殿下が用意された資料に目を通してみました。
なになに、セラ嬢の髪飾りを隠し、セラ嬢を仲間外れにした罪ですか。……おかしいですね。髪飾りを隠した事実はありませんし、仲間外れにする理由がわかりません。
……確かに、セラ嬢が落とした髪飾りを拾いましたが、すぐにセラ嬢へ手渡しましたし、王女様主催のお茶会にセラ嬢のお名前が入っていませんでしたので、さりげなく入ろうとするセラ嬢に一言申し上げて退出してもらったのは事実なのですが……この資料は、なんだかとても大袈裟に書かれていらっしゃいます。
「証言者はこちらに控えている。リリアナ嬢、悪あがきは無駄だぞ!」
私は、ロバート殿下の背後に鎮座しているセラ嬢と取り巻き達に目を向けました。セラ嬢は、もの悲しそうな表情でロバート殿下にべったりとくっつき、取り巻き達は恐ろしいお顔でこちらを睨んでおります。
まぁ、なんて釣り合いの合わないメンツなのでしょう。
私は、ロバート殿下達のチグハグさに驚いてつい顔を背けてしまいました。
「被告リリアナ嬢、弁明はありますか?」
「……いいえ、ありません。」
いじめとは受け取る側の心次第で、それがたとえ厚意であろうとも、セラ嬢がいじめと判断するならば、それはいじめなのです。私は謹んで……罪の償いを受け入れましょう。
私は萎れた表情で罪を認めました。
「裁判官、リリアナ嬢の言う通り、彼女に裁きの鉄槌を‼︎」
「……そうですね。リリアナ嬢が罪を認めると言うのであれば、致し方ありません。……原告ロバート殿下、どのような裁きを要求されますか?」
ベル殿下はため息混じりにロバート殿下へ問いかけました。
「まずは、私とリリアナ嬢の婚約破棄だ! そしてリリアナ嬢を国外追放にしたい‼︎」
婚約破棄に、国外追放…………これですわ!
これが、今巷で話題になっている『悪役令嬢が男爵令嬢に骨抜きにされた婚約者と取り巻き達から断罪ざまぁされて婚約破棄と国外追放される』シナリオですのね!
長らく待った甲斐がありましたわ!
私は心の中で神様に感謝しました。
まさか、あの有名な大衆小説がまんま現実になるだなんて……今とても幸せです。
婚約者を奪われ、家から追い出された主人公はやがて異国の地でたくさんの困難辛苦を味わいながらも本当の幸せを見つけると言う涙無しではみられない、感動の名作なのです。
あまりにも好きすぎて、生まれて初めて作者のクリンゲル・ホームズ様にお手紙を書いてしまいましたわ。最近返信のお便りをいただいたのですが、今度またここでの出来事をご報告しないといけませんね。
私はルンルン気分を能面の下に隠して、裁判官であるベル殿下のお言葉を待ちました。
「…………良いでしょう。リリアナ・ヘレン公爵令嬢とロバート殿下の婚約を今ここで破棄にします。」
法廷内に、拍手と怒号の混ざり合った音が響き渡りました。
父と母は怒って強く抗議していますし、ロバート殿下の取り巻き達は、お互いに手を取り合ってガッツポーズしています。
ーーこれが、カオスというものですね。
ーー素晴らしい。
今夜は、この法廷内の出来事をおかずにして、もりもり晩御飯を食べられますわ‼︎
「……しかし、国外追放は看過できない。」
ベル殿下の一言に、法廷内はシーーーーンと静まり返りました。
……べ、ベル殿下、婚約破棄に国外追放は雛形・鉄則なのですよ!
国外追放されてからが本番なのです!
追放によって初めて得られるものがあるのですよ!
私は、少し冷や汗をかきながらことの成り行きを見守りました。
「リリアナ嬢は名家であるヘレン公爵家の大切な一人娘であり、これからもランドット王国には必要な人材だ。……彼女を国外追放すると言うことは、隣国の勢力拡大に影響を与えるだろう。」
べ、ベル殿下。なんて大それたことを仰るのでしょうか。
私には、なんの力もございませんのに、そのような表現をされると、国外追放しづらくなりますでしょう?
能面の裏でぼたぼたと脂汗をかきながら私はベル殿下にアイコンタクトを送りました。
ベル殿下はこちらに気がついて、深くゆっくりと頷かれました。
ベル殿下は、なかなかに素晴らしいお方なので、私の気持ちを分かっていただけるでしょう。
さぁ、ベル殿下、私を国外追放すると仰るのです‼︎
「よって、判決は、リリアナ嬢を私ベル・ナユタの婚約者にして、私の監視下におくことにする。以上。」
カンカン!
ベル殿下が小槌を鳴らして、裁判は閉廷致しました。
…………あれっ?
国外追放はどうなったのですか?
ぽかーーんと虚無モードに入っていた私は、父と母に叩き起こされて、そそくさと法廷を後にするのでした。
「ベル殿下、わ、私と婚約とはどういうことなのですか? ご冗談にも程がありますわよ。」
判決後のことです。公爵家のお屋敷にベル殿下が来られたので、私はそれとなく聞いてみました。
「リリアナ嬢、冗談ではない。先の判決通り、私とリリアナ嬢は婚約関係となった。」
涼し顔をこちらに向けてベル殿下は応えられました。
ジ・エンド・私
国外追放の夢が砕かれて、急に眩暈がしてきました。
よろけながら椅子に駆け寄ろうとすると、ベル殿下にグイッと引き寄せられ、私は何故か殿下にお姫様抱っこされた状態で見つめ合いました。
ーーいや、なぜ故ですか⁉︎
「で、殿下、降ろしてください。」
「……昔は私のことを『おにいさま』と呼んで追いかけ回してきてたのにな。リア、最近そっけないのではないか?」
「殿下…。む、昔のことはもう忘れました。」
……思い返すととてもお恥ずかしいことなのです。ベル殿下が王族の方とは知らずに、おにいさま呼びしてしょっちゅう後ろをほっつき歩いておりました。
ロバート殿下との婚約が決まった際にことの重大さに気づいて、自らベル殿下から距離を取ったのです。
「リア、法廷で言った通り、今日からリアは私の監視下のもとで生活するようになる。わかったな。」
「……了解致しました。(トホホ)」
国外追放という夢は破れましたが、いつかきっと異国の地を踏みまくります!
そのチャンスがくるまで、あの小説の主人公のように、清く正しく聡明な生き方を目指しますわよ‼︎
《おまけ side ベル殿下 始》
「ベル殿下、お便りです。」
「ありがとう、ジェームズ。」
優秀な執事のジェームズを下がらせて、私は手紙の差出人を見た。
ーーリリアナ・ヘレン。
リア、普通ファンレターと言うものは、本名を隠してペンネームで送るものなのだぞ。
私は、綺麗に封を切って中身を取り出した。
ーー親愛なるクリンゲル・ホームズ様
クリンゲル様、先日、宮殿にて断罪裁判が開かれました!
そこで私は、ロバート殿下から婚約破棄されて国外追放になるはずだったのですが…………。以下略
新しい書籍お待ちしております。
クリンゲル様の信奉者 リリアナ・ヘレンよりーー
……ここまでくるのに、長い時間がかかった。
リリアナからの手紙を大事に文箱にしまって、私は達成感に浸った。
リリアナをロバートから取り戻すために、私はまずリリアナ自体の意識改革をしようと考え、悪役令嬢ものの小説を書きまくった。
書くもの全ての結末は、必ず婚約破棄とし、婚約破棄することにリリアナが抵抗することのないように一番神経を使って書き示した。
私の予想通り、リリアナは友人に勧められて、『クリンゲル・ホームズ』の小説を読み漁り、やがて悪役令嬢に魅入られることとなる。
いい頃合いで、男爵令嬢セラ・リノンを投入し、ロバート及び取り巻きを陥落させ、断罪裁判まで持ち込んだ。
結果、リリアナを手中におさめることができた。
このまま早く婚姻までもっていきたい。
次の新作は、悪役令嬢が幸せな結婚生活を送る内容にしようかな。
ーー不敵に笑う第一王子のことを誰も知る由はなかった。
《おまけ side ベル殿下 終》
皆様ごきげんよう。私はリリアナ・ヘレン。ヘレン公爵夫妻の一人娘ですわ。
我が祖国ランドット王国の建国に携わった英雄ジョナサン・ヘレンの末裔にあたりますの。
そんな由諸正しい家系の出である私は、今しがた、宮殿の法廷にて婚約者である第二王子ロバート殿下から断罪裁判を起こされているのですが、どうしましょう。笑いが込み上げてきてしまって仕方がありません。
我慢しきれなくてふるふると震えれば、また、ロバート殿下から怒鳴られるかもしれません。
しかし、に、にやけが止まりませんわ。フフフ。
「リリアナ嬢、泣いても無駄だ! ……君が犯した罪は海よりも深く山よりも高いのだぞ‼︎」
「も、申し訳ありません、殿下。……一体、私が何をしたというのでしょうか?」
「……この期に及んで、罪の意識が無いのか、リリアナ嬢よ。ヘレン一族も随分と落ちぶれたものだな。」
ガタンっと傍聴席から音がしたので、振り向くと、父と母が立ち上がって怒りに身を震わせていますわ。
二人共、落ち着いてくださいまし。
これからが、本番ですわ!
「傍聴席の方、席にお直りください。原告のロバート殿下、リリアナ嬢の具体的な罪を発言してください。」
この法廷を取りまとめる裁判官の第一王子ベル殿下がロバート殿下を促します。
「皆のもの、手元にある資料に目を通してくれ。宮殿に仕える麗しいリノン男爵令嬢に対するいじめの数々をリストアップしてある。」
リノン男爵令嬢セラ・リノン様は、最近社交界デビューをはたした期待の星なのです!
私は、ロバート殿下が用意された資料に目を通してみました。
なになに、セラ嬢の髪飾りを隠し、セラ嬢を仲間外れにした罪ですか。……おかしいですね。髪飾りを隠した事実はありませんし、仲間外れにする理由がわかりません。
……確かに、セラ嬢が落とした髪飾りを拾いましたが、すぐにセラ嬢へ手渡しましたし、王女様主催のお茶会にセラ嬢のお名前が入っていませんでしたので、さりげなく入ろうとするセラ嬢に一言申し上げて退出してもらったのは事実なのですが……この資料は、なんだかとても大袈裟に書かれていらっしゃいます。
「証言者はこちらに控えている。リリアナ嬢、悪あがきは無駄だぞ!」
私は、ロバート殿下の背後に鎮座しているセラ嬢と取り巻き達に目を向けました。セラ嬢は、もの悲しそうな表情でロバート殿下にべったりとくっつき、取り巻き達は恐ろしいお顔でこちらを睨んでおります。
まぁ、なんて釣り合いの合わないメンツなのでしょう。
私は、ロバート殿下達のチグハグさに驚いてつい顔を背けてしまいました。
「被告リリアナ嬢、弁明はありますか?」
「……いいえ、ありません。」
いじめとは受け取る側の心次第で、それがたとえ厚意であろうとも、セラ嬢がいじめと判断するならば、それはいじめなのです。私は謹んで……罪の償いを受け入れましょう。
私は萎れた表情で罪を認めました。
「裁判官、リリアナ嬢の言う通り、彼女に裁きの鉄槌を‼︎」
「……そうですね。リリアナ嬢が罪を認めると言うのであれば、致し方ありません。……原告ロバート殿下、どのような裁きを要求されますか?」
ベル殿下はため息混じりにロバート殿下へ問いかけました。
「まずは、私とリリアナ嬢の婚約破棄だ! そしてリリアナ嬢を国外追放にしたい‼︎」
婚約破棄に、国外追放…………これですわ!
これが、今巷で話題になっている『悪役令嬢が男爵令嬢に骨抜きにされた婚約者と取り巻き達から断罪ざまぁされて婚約破棄と国外追放される』シナリオですのね!
長らく待った甲斐がありましたわ!
私は心の中で神様に感謝しました。
まさか、あの有名な大衆小説がまんま現実になるだなんて……今とても幸せです。
婚約者を奪われ、家から追い出された主人公はやがて異国の地でたくさんの困難辛苦を味わいながらも本当の幸せを見つけると言う涙無しではみられない、感動の名作なのです。
あまりにも好きすぎて、生まれて初めて作者のクリンゲル・ホームズ様にお手紙を書いてしまいましたわ。最近返信のお便りをいただいたのですが、今度またここでの出来事をご報告しないといけませんね。
私はルンルン気分を能面の下に隠して、裁判官であるベル殿下のお言葉を待ちました。
「…………良いでしょう。リリアナ・ヘレン公爵令嬢とロバート殿下の婚約を今ここで破棄にします。」
法廷内に、拍手と怒号の混ざり合った音が響き渡りました。
父と母は怒って強く抗議していますし、ロバート殿下の取り巻き達は、お互いに手を取り合ってガッツポーズしています。
ーーこれが、カオスというものですね。
ーー素晴らしい。
今夜は、この法廷内の出来事をおかずにして、もりもり晩御飯を食べられますわ‼︎
「……しかし、国外追放は看過できない。」
ベル殿下の一言に、法廷内はシーーーーンと静まり返りました。
……べ、ベル殿下、婚約破棄に国外追放は雛形・鉄則なのですよ!
国外追放されてからが本番なのです!
追放によって初めて得られるものがあるのですよ!
私は、少し冷や汗をかきながらことの成り行きを見守りました。
「リリアナ嬢は名家であるヘレン公爵家の大切な一人娘であり、これからもランドット王国には必要な人材だ。……彼女を国外追放すると言うことは、隣国の勢力拡大に影響を与えるだろう。」
べ、ベル殿下。なんて大それたことを仰るのでしょうか。
私には、なんの力もございませんのに、そのような表現をされると、国外追放しづらくなりますでしょう?
能面の裏でぼたぼたと脂汗をかきながら私はベル殿下にアイコンタクトを送りました。
ベル殿下はこちらに気がついて、深くゆっくりと頷かれました。
ベル殿下は、なかなかに素晴らしいお方なので、私の気持ちを分かっていただけるでしょう。
さぁ、ベル殿下、私を国外追放すると仰るのです‼︎
「よって、判決は、リリアナ嬢を私ベル・ナユタの婚約者にして、私の監視下におくことにする。以上。」
カンカン!
ベル殿下が小槌を鳴らして、裁判は閉廷致しました。
…………あれっ?
国外追放はどうなったのですか?
ぽかーーんと虚無モードに入っていた私は、父と母に叩き起こされて、そそくさと法廷を後にするのでした。
「ベル殿下、わ、私と婚約とはどういうことなのですか? ご冗談にも程がありますわよ。」
判決後のことです。公爵家のお屋敷にベル殿下が来られたので、私はそれとなく聞いてみました。
「リリアナ嬢、冗談ではない。先の判決通り、私とリリアナ嬢は婚約関係となった。」
涼し顔をこちらに向けてベル殿下は応えられました。
ジ・エンド・私
国外追放の夢が砕かれて、急に眩暈がしてきました。
よろけながら椅子に駆け寄ろうとすると、ベル殿下にグイッと引き寄せられ、私は何故か殿下にお姫様抱っこされた状態で見つめ合いました。
ーーいや、なぜ故ですか⁉︎
「で、殿下、降ろしてください。」
「……昔は私のことを『おにいさま』と呼んで追いかけ回してきてたのにな。リア、最近そっけないのではないか?」
「殿下…。む、昔のことはもう忘れました。」
……思い返すととてもお恥ずかしいことなのです。ベル殿下が王族の方とは知らずに、おにいさま呼びしてしょっちゅう後ろをほっつき歩いておりました。
ロバート殿下との婚約が決まった際にことの重大さに気づいて、自らベル殿下から距離を取ったのです。
「リア、法廷で言った通り、今日からリアは私の監視下のもとで生活するようになる。わかったな。」
「……了解致しました。(トホホ)」
国外追放という夢は破れましたが、いつかきっと異国の地を踏みまくります!
そのチャンスがくるまで、あの小説の主人公のように、清く正しく聡明な生き方を目指しますわよ‼︎
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「ベル殿下、お便りです。」
「ありがとう、ジェームズ。」
優秀な執事のジェームズを下がらせて、私は手紙の差出人を見た。
ーーリリアナ・ヘレン。
リア、普通ファンレターと言うものは、本名を隠してペンネームで送るものなのだぞ。
私は、綺麗に封を切って中身を取り出した。
ーー親愛なるクリンゲル・ホームズ様
クリンゲル様、先日、宮殿にて断罪裁判が開かれました!
そこで私は、ロバート殿下から婚約破棄されて国外追放になるはずだったのですが…………。以下略
新しい書籍お待ちしております。
クリンゲル様の信奉者 リリアナ・ヘレンよりーー
……ここまでくるのに、長い時間がかかった。
リリアナからの手紙を大事に文箱にしまって、私は達成感に浸った。
リリアナをロバートから取り戻すために、私はまずリリアナ自体の意識改革をしようと考え、悪役令嬢ものの小説を書きまくった。
書くもの全ての結末は、必ず婚約破棄とし、婚約破棄することにリリアナが抵抗することのないように一番神経を使って書き示した。
私の予想通り、リリアナは友人に勧められて、『クリンゲル・ホームズ』の小説を読み漁り、やがて悪役令嬢に魅入られることとなる。
いい頃合いで、男爵令嬢セラ・リノンを投入し、ロバート及び取り巻きを陥落させ、断罪裁判まで持ち込んだ。
結果、リリアナを手中におさめることができた。
このまま早く婚姻までもっていきたい。
次の新作は、悪役令嬢が幸せな結婚生活を送る内容にしようかな。
ーー不敵に笑う第一王子のことを誰も知る由はなかった。
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