フィックスド辺境伯家の秘密(代表作:元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎)

星 佑紀

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とある暴走族のリーダー、就職する‼︎

0029:カメラに映された真実

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⭐︎ ここは、フィックスド辺境伯邸母屋会議室。中央には、呆然としたお顔の殿下とサネユキ及びノアが、椅子からズリ落ちそうになっている。そして、三人の対面上には、黒のシルクハットに黒マントを装着したフローレンス家の裏当主と、裏当主のお膝の上で驚愕しているコレクトが、長い間、見つめ合って座っていた。

「あ、あの、……アル。(お顔が茹で蛸なコレクト)」

「なんだ……。(ジト目の裏当主)」

「えっと、……アルは時たま突拍子のない事を言って、周りを困惑させる大天才なんだけどさ、流石にアルトの産みの親は、メアリーなんじゃないかな?(言葉を選ぶコレクト)」

「いいや、……アルトの産みの親は、正真正銘コレクトだ。(圧の強い裏当主)」

「ででもね、私はその、……記憶が無いというか、身に覚えがないのだ。アル、一から説明してほしい。(コレクト)」

「……いいだろう。このことは、コレクトが知っておかなければならないからな。……アルトの為にも。(裏当主)」

⭐︎ すると裏当主は、黒マントの中から二台のお高級そうな小型のカメラを取り出して、ノアに視線を向けた。

「ヤンキー辺境伯、……映写機を持っていないか?」

「──っ‼︎ 今すぐ用意します‼︎(走り出すノア)」

⭐︎ ノアは、映写機の準備をする為、一旦退出した‼︎

「カメラ……もしかして、コレクト君がアルト君のお母さんである証拠を撮影していたの⁉︎(色々とドン引きな殿下)」

「まあ、そういうことだ。(ジト目裏当主)」

「そんなこと、ないと思うんだけどな。(悩むコレクト)」

「……トルネードには、便利な道具が沢山あって羨ましい。(にこやかなサネユキ)」

「ああ、このカメラは、準ニホン製だ。(裏当主)」

「──っ‼︎ ニホンにもカメラという器械があるのですか?(ほえーなサネユキ)」

「なに、……カメラの設計士がニホン人で、製造したのが、マテリア帝国の会社だからな。ルーセント辺境伯に言って、いくつか見繕ってもらおうか?(目を細める裏当主)」

「それは、とても有り難いお話ですね。でも、結構お高いのでしょう?(値段を気にするサネユキ)」

「大丈夫ですよ、サネユキ様! マテリア帝国側の領地を管理しているルーセント辺境伯とアルは、竹馬の友ですからね‼︎ 私もアルと一緒に、マテリアの最新カメラを破格な値段で横流ししてもらったんだけど、とてもよかったですよ!(とても満足顔のコレクト)」

「それは、まことか! ちょっと、実家に聞いてみよう‼︎(目がキラキラと輝くサネユキ)」

「へえ、……のルーセント辺境伯との繋がりか。……なんだか意外だね。(ほえーな殿下)」

「そうですね。領地の境がとても微妙な位置にあるルーセント辺境伯とフローレンスは、犬猿の仲とよく噂されますが、実は、その噂に隠れて古くからヒッソリと交流を深めていたりします! ここだけの話ですが、ルーセント辺境伯は、マテリア帝国との貿易でなかなか儲かっているから、節税の意味で、こっちにでストックしておきたいらしいのです。(嬉しそうに説明するコレクト)」

「なるほどね。……乾燥して程よい低気温を一定に保っているフローレンス領では、作物を育てることは、とても難しいけれど、……機械の長期保管には、最適な立地だもんね。(納得の殿下)」

「そういうことだ。……フローレンスは、ルーセントに対して、相場よりかなり安い最新倉庫(場所)を提供する。逆にルーセントは、作物が取れなくて産業も無いフローレンスが破綻しないように、裏でそれなりの支援をする。……お互いの利害が一致しているから、関係も長く続いているのだ。(目が穏やかな裏当主)」

「利害の一致か……。(マイノートにメモする殿下)」

⭐︎ と、バタバタ足音を立てながら、ノアが戻ってきた‼︎

「映写機一式を持ってきました‼︎(汗だくのノア)」

「ノア君、お疲れ様‼︎(微笑むコレクト)」

「よし、今からのフィルムを写す。(裏当主)」

⭐︎ 裏当主はコレクトを横抱きにしてから立ち上がった‼︎



 ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎



 カラカラカラ……。(映写機が回転する音)


⭐︎ 裏当主は、一つのフィルムを映写機に通す。

「まず、この場面を見てくれ。(四人に促す裏当主)」

⭐︎ 映写機から出た光が、白い帆布に映し出された‼︎

「これは、……えっと、……コレクト君と、メアリーさん? と、……コレクト君の奥様? がバッタリ鉢合わせちゃったところかな?(二対一で言い合いをしている場面を見て、気分が悪くなる殿下)」

「そうだ。丁度あのが、フローレンスの屋敷にやってきた、初日の修羅場のときだった。(遠い目裏当主)」

「えっと、……はははずかしいな。……珍しくメアリーと、こんなにもイチャイチャして、ドギマギだったから。(顔を赤らめてモジモジするコレクト)」

「……ちょっと、暴力女って、誰の事ですか? まさか、奥様のことではないですよね? 奥様は素晴らしいお方ですよ!(地獄耳のノア)」

「(ガシャンとフィルムを取り換えて)それでこれが、の映像だ。(さりげなくノアを無視するジト目裏当主)」

⭐︎ 取り換えかれたフィルムは、カラカラと音を立ててゆっくりと回り出す。そこでの映像は……。

「「「「──っ⁉︎(言葉にならない四人)」」」」

「えっ?(口をポカーンと開けて固まるコレクト)」

「うそ、でしょ⁉︎(信じられない殿下)」

「だが、あの以外の人物や物は、先ほどの映像と一致しているな。(冷静に真実を見極めようとするサネユキ)」

「いやいやいや、どっちにしても、先輩が可哀想すぎる‼︎(気持ちが昂って涙が溢れ出すノア)」

⭐︎ 映写機によって映された映像は、イチャイチャしているコレクトと裏当主を見て、声を荒げているコレクトの妻オリビアの、怒りに満ちた表情だった。

「今かけているフィルムは、特殊な魔法処理を施したの場面だ。そして、先ほどかけたフィルムは、私がフローレンスの屋敷にかけた『幻影マジック』つまり、虚像の映像を映しているただの紛い物。……フローレンス家全員は、私のことをコレクト、コレクトのことをメアリーと思い込んで、今まで過ごしてきたのだ‼︎(ドヤ顔の裏当主)」

「そそそんなのおかし過ぎるよ! だだだって、……私の記憶では、私がメアリーとイチャイチャしている筈なんだ‼︎ ……確かに、アルと夫婦ゴッコをしていた記憶もあるけれど、毎日メアリーとも顔を合わせている‼︎ オリビアの前で、アルとイチャついたりなんかしてないよ‼︎(頭がこんがらがっているコレクト)」

「…………幻影。……それって、マジック。……魔法ってことだよね?(考え込む殿下)」

「そうだ。……私は、フローレンス家全員に幻影魔法『マジックイリュージョン』をかけ、尚且つ、コレクトには、頭の中を操作する洗脳魔法『マジックブレイン』もかけた。(裏当主)」

「……どうして。……アル、……どうして、親友の私に、そんな洗脳紛いなものをかけたんだ⁉︎ こたえてよ、アル‼︎(混乱のコレクト)」

「……答えは、一つ。……コレクトを、いや、本物の正統継承者を、から取り戻す為。(深く深呼吸する裏当主)」

「「「「───っ⁉︎(よく分からない四人)」」」」

⭐︎ 裏当主は、ゆっくりと顔を上げて、ノアを見据えた。

「……ヤンキー辺境伯、……頼みがある。……もうじき、暴力女オリビアとアルトが、フローレンス家から追い出される。二人を助けてくれ……。(真剣な表情の裏当主)」

「────っ⁉︎(どういうこと⁉︎ 困惑しかないノア)」


⭐︎ 謎多きフローレンス家裏当主の真意とは⁉︎
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