フィックスド辺境伯家の秘密(代表作:元夫の隠し子は、私が立派に育ててみせます‼︎)

星 佑紀

文字の大きさ
上 下
18 / 45
とある暴走族のリーダー、就職する‼︎

0012:爆弾を解除せよ!

しおりを挟む

こんなに気持ちが浮かない夏休み前なんて初めてだ。

いつもなら待ち遠しくて堪らないのに...。

食堂で列に並んでいると、俊也に気づいた一部の生徒がなにやらコソコソ話してる。

黒髪になってるのが珍しいんだと思うけど...髪色の変化くらいで注目を浴びる俊也、て気の毒だな、て感じる。

もし俺が俊也のように金髪で黒髪にしたとしても特に話題なんかにはならないだろう。

不意に食堂を見渡し、視線が辿り着いた先には遥斗くんと和斗くんが並んで食事していた。

仲良さそうな笑顔の二人。
...やっぱり、付き合ってるとかなのかな。

トレイに食事を乗せて貰い、俺は意を決して遥斗くんと和斗くんの前に向かった。

「ちょ、樹」

涼太が驚いた様子で引き止めようとしたけど。

二人の前にトレイを置き、立ち竦んだ俺を二人が見上げた。

その瞬間、なんとも言えない違和感を覚えた。

一卵性の双子だから、同じ顔なのは確かなのに、遥斗くんはきょとん、とした眼差し、兄の和斗くんの瞳は細められ険しかった。

「なに?てか、誰?お前」

...和斗くんのセリフに、遥斗くんは俺の事を和斗くんに話してない事に気づいた。

遥斗くんが、

「知らない。席間違えてない?」

と、まるで、俺をそこから離したいかのようだった。

ゴクリ、喉を鳴らして、席に座った。

「....質問があって」

「....質問?」

和斗くんが険しさを変えずに訝しんだ。

「....徒歩で移動中のあなたですが、うっかり寝坊してしまい、このままでは大事な待ち合わせに遅れてしまいそうです。さて、どうしますか?」

以前、俊也にされた心理テストだ。

その後、涼太からアレはサイコパス診断だと聞いた。
サイコパスは事故や事件を作り上げて理由にするのらしい。

「なにそれ。心理テストかなんか?」

遥斗くんの問いに頷くと、しばらく、遥斗くんは斜め上を向き、うーん、と唸り、

「ごめん、もう一回」

先程の俊也の心理テストを反芻した。

「大事な待ち合わせ、か。相手とかその待ち合わせの事情もあるな。友達とかなら待ってて貰うし、無理なら帰って貰う。けど、大事な人だったり、遊びじゃない、こう、今は学生だけど、仕事とかだったら、上司に連絡したりあるだろうし...」

思いがけず、遥斗くんは真剣に考えてくれた。

「まあ、そうだな。悪い、遥斗、自販機でコーヒー買って来てくんない?いつもの奴」

「えっ、うん、いいけど」

「悪いな」

和斗くんの笑顔に遥斗くんも微笑みを返し立ち上がり、食堂の入口にある自販機に向かっていく。

その背中を見つめた。

「サイコパス診断だろ、それ」

「えっ」

慌てて和斗くんに視線を戻す。

和斗くんは箸を持ったまま口元を歪め、笑みを含んでた。

「しょーもな。てかさ、俺たちをサイコパスとでも思った訳?めっちゃ失礼だよな」

「....ごめん」

「つーか、サイコパスとは無縁なんで、俺はさ」

....俺は?

遥斗くんはどうなるんだろう。

真剣に考えていた遥斗くんとは明らかに違う。

「....和斗くん、このテスト知ってたんだね」

「まあな」

「...遥斗くんを自販機に行かせたのは...診断の内容を知ってたから....?」

はっ、と和斗くんが笑った。

「勘繰りすぎ。サイコパスなんじゃねー?お前」

「....」

唖然とし、言葉を失った。

「お待たせ、兄さん」

「ああ、サンキュ」

「ううん」

途端、和斗くんは狡猾な笑みを消し、遥斗くんを見上げ優しく微笑み、缶コーヒーを受け取った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!

158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・ 2話完結を目指してます!

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

処理中です...