22 / 31
第参譚
0022:トラップと魔法使い
しおりを挟む
「うーーん。どうしようかなー。」
「ツクヨミさん、どうなされたのですか?」
「灰かぶり姫、……君の継母達のことなんだけどね……。」
皆さん、こんにちは。灰かぶりです。現在、私とツクヨミさんは、アデル皇国第一魔法省イリアルテの修練場にいるのですが、ツクヨミさんが、なにやら頭を悩ませているようなのです。
「マーズ殿下達がアデル皇国を出て、早六日。明日になれば二人とも戻られてくると思うんだけど、先日の侵入者達について、どんな説明をすればいいのかなって思ってさ。(困り眉)」
「『私の身内が勝手に入って来ちゃいました‼(テヘペロ)』ではいけないのですか?」
「うーーん。それはちょっと軽いかもしれないね。(いやいやおかしいでしょ‼ 灰かぶり姫の危機管理意識が低すぎる!)」
「そうですか? でも雰囲気的には、私のことを迎えに来てくれた感じでしたよ。(満面の笑み)」
「……灰かぶり姫、一応ここは、魔法使いが管理している施設なんだ。だからね、本来イリアルテには簡単に入れないように魔法を駆使して細工が施されているんだけれど、彼女たちはいとも簡単に、全てのトラップを解除して侵入してきたんだよ。(難しい顔)」
「トラップをですか?」
「そう。……そして、トラップを設定したのは、僕とお師匠様の二人だけ。後から設定をいじることは可能なんだけれど、お師匠様の魔法はとても面倒くさい術式をわざと使うから、魔法省内で触ろうとする魔法使いは一人もいないんだ。」
「そうなのですね。……ということは、継母様達は、腕の立つ魔法使いさんなのでしょうか?」
「そうかもしれないし、……もしかすると、魔法省内に裏切り者がいる可能性もあるね。(悩)」
「ツクヨミさん、……あまり考えすぎると、身体によくありませんよ。物事というのは、成るように成るのです! 疑いは疑いを呼びますからね。だから、イリアルテに入って来られたご本人達へ聞くのが一番手っ取り早いと思います!」
私はそう言いますと、拘束された状態で壁際の隅っこに縮こまっていらっしゃるお三方を引きずり、ツクヨミさんの前まで連れてきました。
「さあ、ツクヨミさん。継母様達にいろいろと聞いてみましょう‼」
「う、うん。(そう簡単に口を割ってくれるのかな?)」
◇ ◇ ◇
「トラップ? そんなの知らないわ。リリー、トラップなんてあったかしら。(訝し気)」
「いいえ、お母様、ありませんでしたよ。ララ、無かったわよね。」
「ええ。私たち、ただの一般人なので、魔法とかトラップなんて、分かるわけないじゃない。」
「そうですよね、継母様方。でも、ここには簡単に入ることは難しいみたいなのですよ。どんな感じで入ったのか、触りだけでも教えていただけないでしょうか?(困り眉でうるうる)」
「そんなの、なんで灰かぶりなんかに教えないといけないの? 私たちはね、あんたのせいでこんな不気味な気持ちの悪い所へ来ないといけなかったのよ‼」
「「そうよ、そうよ‼」」
思っていた通り、継母様達のお口は固かったです。しかし、正直に話してもらわないと、ツクヨミさんが困ってしまいます。したがって、私は、奥の手を使うことに致しました。
「……継母様、義姉様、私の砂糖菓子が余程、お口に合ったみたいでよかったですわ。……たくさん作っているので、どうぞ、召し上がってくださいな!(砂糖菓子を携えてにっこり笑う)」
「は、灰かぶり⁉」
「継母様、義姉様、砂糖菓子で長い眠りにつくのか、正直にお話されて、おいしい晩ご飯を食べるのか、どちらがよろしいですか?(にっこり)」
「(灰かぶり姫、さすがにそれで、口を割ったりしないと思うよ。お三方も命がかかっているんだからね。)」
「……全身黒ずくめの男が私たちをあの赤い扉の部屋へ案内したのよ。(渋々)」
「「お母さま⁉」」
「(小声で)大丈夫よ、二人とも。……ここの入り口の門をこじ開けようとしていたら、その黒ずくめの男が門の内側から出てきたの。それ以外は知らないわ。(そっぽを向く)」
「そうなのですか、継母様。詳しく教えてくださって、ありがとうございます。(にこっ)」
「ふんっ!」
「(ええええええ⁉ 言っていいの⁉ ……いや、言ってもらえた方が助かるからいいんだけどさ。まがりなりにも、お三方から見たら、僕たちは敵だからね‼ ……灰かぶり姫の砂糖菓子の威力がすごすぎる‼)」
「ちなみに、何故私がここにいるって、わかったのですか?」
「それはユエ様に教えてもらって……。」
「「お母さま⁉」」
「――――っ‼(キッと三人を睨むツクヨミ)」
「継母様、ユエ様(?)とは一体、どのようなお方なのですか?(きょとん)」
「あ、あんたは知らなくていいの‼(声を大きくしてはぐらかす)」
「そうですか。(しょんぼり)」
「灰かぶり姫、もういいよ。ありがとう。」
「ツクヨミさん?(困り眉)」
「もうすぐ夕ご飯の時間だからね、お三方には、魔法省特製のディナーをいただいてもらおう。」
「はい、そうですね‼(にぱっ)」
「お三方のお世話は、僕の後輩に頼んであるからそのままで大丈夫だよ。」
「了解なのです‼」
「じゃあ、灰かぶり姫、(小声で)僕の部屋に移動しようか。」
「えっ? どうしてなのですか?(きょとん)」
ツクヨミさんは、少し考えてから、難しいお顔をしたまま私の耳元で囁いたのです。
「僕たちは、盗聴されている。魔法省内に、裏切り者がいるかもしれない――。(囁き声)」
――イリアルテ内に、激震が走る‼――
「ツクヨミさん、どうなされたのですか?」
「灰かぶり姫、……君の継母達のことなんだけどね……。」
皆さん、こんにちは。灰かぶりです。現在、私とツクヨミさんは、アデル皇国第一魔法省イリアルテの修練場にいるのですが、ツクヨミさんが、なにやら頭を悩ませているようなのです。
「マーズ殿下達がアデル皇国を出て、早六日。明日になれば二人とも戻られてくると思うんだけど、先日の侵入者達について、どんな説明をすればいいのかなって思ってさ。(困り眉)」
「『私の身内が勝手に入って来ちゃいました‼(テヘペロ)』ではいけないのですか?」
「うーーん。それはちょっと軽いかもしれないね。(いやいやおかしいでしょ‼ 灰かぶり姫の危機管理意識が低すぎる!)」
「そうですか? でも雰囲気的には、私のことを迎えに来てくれた感じでしたよ。(満面の笑み)」
「……灰かぶり姫、一応ここは、魔法使いが管理している施設なんだ。だからね、本来イリアルテには簡単に入れないように魔法を駆使して細工が施されているんだけれど、彼女たちはいとも簡単に、全てのトラップを解除して侵入してきたんだよ。(難しい顔)」
「トラップをですか?」
「そう。……そして、トラップを設定したのは、僕とお師匠様の二人だけ。後から設定をいじることは可能なんだけれど、お師匠様の魔法はとても面倒くさい術式をわざと使うから、魔法省内で触ろうとする魔法使いは一人もいないんだ。」
「そうなのですね。……ということは、継母様達は、腕の立つ魔法使いさんなのでしょうか?」
「そうかもしれないし、……もしかすると、魔法省内に裏切り者がいる可能性もあるね。(悩)」
「ツクヨミさん、……あまり考えすぎると、身体によくありませんよ。物事というのは、成るように成るのです! 疑いは疑いを呼びますからね。だから、イリアルテに入って来られたご本人達へ聞くのが一番手っ取り早いと思います!」
私はそう言いますと、拘束された状態で壁際の隅っこに縮こまっていらっしゃるお三方を引きずり、ツクヨミさんの前まで連れてきました。
「さあ、ツクヨミさん。継母様達にいろいろと聞いてみましょう‼」
「う、うん。(そう簡単に口を割ってくれるのかな?)」
◇ ◇ ◇
「トラップ? そんなの知らないわ。リリー、トラップなんてあったかしら。(訝し気)」
「いいえ、お母様、ありませんでしたよ。ララ、無かったわよね。」
「ええ。私たち、ただの一般人なので、魔法とかトラップなんて、分かるわけないじゃない。」
「そうですよね、継母様方。でも、ここには簡単に入ることは難しいみたいなのですよ。どんな感じで入ったのか、触りだけでも教えていただけないでしょうか?(困り眉でうるうる)」
「そんなの、なんで灰かぶりなんかに教えないといけないの? 私たちはね、あんたのせいでこんな不気味な気持ちの悪い所へ来ないといけなかったのよ‼」
「「そうよ、そうよ‼」」
思っていた通り、継母様達のお口は固かったです。しかし、正直に話してもらわないと、ツクヨミさんが困ってしまいます。したがって、私は、奥の手を使うことに致しました。
「……継母様、義姉様、私の砂糖菓子が余程、お口に合ったみたいでよかったですわ。……たくさん作っているので、どうぞ、召し上がってくださいな!(砂糖菓子を携えてにっこり笑う)」
「は、灰かぶり⁉」
「継母様、義姉様、砂糖菓子で長い眠りにつくのか、正直にお話されて、おいしい晩ご飯を食べるのか、どちらがよろしいですか?(にっこり)」
「(灰かぶり姫、さすがにそれで、口を割ったりしないと思うよ。お三方も命がかかっているんだからね。)」
「……全身黒ずくめの男が私たちをあの赤い扉の部屋へ案内したのよ。(渋々)」
「「お母さま⁉」」
「(小声で)大丈夫よ、二人とも。……ここの入り口の門をこじ開けようとしていたら、その黒ずくめの男が門の内側から出てきたの。それ以外は知らないわ。(そっぽを向く)」
「そうなのですか、継母様。詳しく教えてくださって、ありがとうございます。(にこっ)」
「ふんっ!」
「(ええええええ⁉ 言っていいの⁉ ……いや、言ってもらえた方が助かるからいいんだけどさ。まがりなりにも、お三方から見たら、僕たちは敵だからね‼ ……灰かぶり姫の砂糖菓子の威力がすごすぎる‼)」
「ちなみに、何故私がここにいるって、わかったのですか?」
「それはユエ様に教えてもらって……。」
「「お母さま⁉」」
「――――っ‼(キッと三人を睨むツクヨミ)」
「継母様、ユエ様(?)とは一体、どのようなお方なのですか?(きょとん)」
「あ、あんたは知らなくていいの‼(声を大きくしてはぐらかす)」
「そうですか。(しょんぼり)」
「灰かぶり姫、もういいよ。ありがとう。」
「ツクヨミさん?(困り眉)」
「もうすぐ夕ご飯の時間だからね、お三方には、魔法省特製のディナーをいただいてもらおう。」
「はい、そうですね‼(にぱっ)」
「お三方のお世話は、僕の後輩に頼んであるからそのままで大丈夫だよ。」
「了解なのです‼」
「じゃあ、灰かぶり姫、(小声で)僕の部屋に移動しようか。」
「えっ? どうしてなのですか?(きょとん)」
ツクヨミさんは、少し考えてから、難しいお顔をしたまま私の耳元で囁いたのです。
「僕たちは、盗聴されている。魔法省内に、裏切り者がいるかもしれない――。(囁き声)」
――イリアルテ内に、激震が走る‼――
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

家計を支える為宮殿に出仕した子爵令嬢は、憧れの麗人の侍女となる
星 佑紀
恋愛
【旧題】悪役令嬢の小説に憧れて宮殿に出仕した子爵令嬢は、公爵令嬢から溺愛される
生まれながらに貧乏な下級貴族の出である、リッツ子爵令嬢アデリア・リッツは、実家の生活費を稼ぐために、自ら宮殿へ出仕することを決意する。
彼女は、とある一冊の本を胸に、魔の巣窟であるマテリア帝国の宮殿へと一歩足を進めた。
「一生懸命働いてお給金をもらいつつ、憧れの公爵令嬢様のお顔を陰ながら拝見させていただきますわ‼︎(恍惚)」
彼女が胸に抱く本は、世界を股に掛ける小説作家クリンゲル・ホームズ氏 著書の『悪役令嬢は能無し婚約者に印籠を渡す』という大衆小説であり、なけなしのお金をはたいて購入した彼女の大切な宝物だった。
「あら、あの子は……。(ジト目)」
……一心不乱に憧れを追いかけ回す彼女には、密かに舌舐めずりする公爵令嬢の重たい思いに気づく暇はなかったのであった。
※大幅な加筆修正を行いました。(2023.08.19〜09.07)
※ 続編を連載中です。
※本編より、自作小説『断罪裁判は蜜の味』の一部キャラクターが登場します。
※続編より、自作小説『灰かぶり姫と月の魔法使い』の一部キャラクターが登場します。
※尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。)
※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。
※予告なく加筆修正致します。


断罪裁判は蜜の味
星 佑紀
恋愛
「リリアナ嬢、もう、君にはついていけない。婚約は破棄だ‼︎」
「了解仕りましたわ♡」
私、リリアナ・ヘレンは、本日、婚約者であるロバート殿下から、断罪裁判を起こされる予定ですの。謎の男爵令嬢(ヒロイン)の出現によって、ロバート殿下及び殿下の取り巻き達は骨抜きな状態となり、王宮内の人間関係に亀裂が生じた結果なのです。
私は、この機会を今か今かと待っておりました。
婚約破棄されて国外追放されるために、私リリアナ・ヘレンは頑張って悪役令嬢を務め上げます!
「いや、逃がさないよ♪」
ーー本当の敵は味方にいることをリリアナ嬢は知らなかった……。
※続編を連載することに致しました。
※続編より、自作小説『灰かぶり姫と月の魔法使い』の一部キャラクターが登場します。
※尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。)
※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。
※予告なく加筆修正致します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

山小屋の男をたぶらかそうとした雪女は、三児の母となる
星 佑紀
恋愛
「……すみませんが、今晩ここに泊めてもらえないでしょうか?」
雪が降り積もるニホン帝国のとある山奥に、一人の女性が立っていた。
どうやら、彼女は山小屋を一軒ごとに回って、若い男性を誑かしている雪女らしい。
今夜も雪女は、ニヤニヤしながら凍てつく山小屋の扉を叩くのであった。
――六年後――
彼女は三児の母となって、山小屋から出られない状況に陥っていた!(汗)
「な、なんでなの~⁉」
「ユキちゃん、大好きだよ‼ ……勿論、逃げたりしないよね?(圧)」
「ひいいいい‼(ガクブル)」
これは、大好きな家族から逃げようとする雪女と、最愛の雪女を逃すつもりのない、とある男のお話。
※関連作品
『断罪裁判は蜜の味』
『国外追放された魔法使いの不思議な館』
※クロスオーバー作品になります。尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。)
※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。
※予告なく加筆修正致します。

シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

腐女子な女兵士がボロボロな少女を助けたら…。
星 佑紀
恋愛
『班長、本日をもって、私エリン・マラスカスは除隊致します!』
トルネード王国のとあるカルスト台地にて、軍事演習に参加していた救護班所属兵士エリン・マラスカス(隠れ腐女子)は、とある草むらで横たわっている少女を発見する。エリンは、すぐさま上司に報告するが、上司は、既に被爆した少女がもう助からないと告げ、少女に対してサーベルを振り下ろす。サーベルで切られる寸前だった少女を庇って負傷したエリンは、除隊を申し出て、少女を背負って部隊から外れることになった。しかし、エリンが助けた少女は、指名手配されていた、とある王族のお方で……。
『皆に、エリンが腐女子ってこと黙っておいてあげるから、……わかるよね?(真顔)』
『な、なんでそうなるの〜⁉︎』
※関連作品
『親友に裏切られて国外追放された悪役令嬢は、聖女になって返り咲く』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる