灰かぶり姫と月の魔法使い

星 佑紀

文字の大きさ
上 下
21 / 31
第参譚

0021:砂糖菓子と侵入者

しおりを挟む
 ーーマーズとマーキュリーが旅立って六日後の午後。ーー


「灰かぶり姫、何作っているの?」


「砂糖菓子なのです‼(にぱっ)」



 皆さん、こんにちは。灰かぶりです。

 マーズ殿下はマテリア帝国へ、マーキュリー殿下はランドット王国へと外出なされている今、私はアデル皇国第一魔法省イリアルテ内の台所で、父の大好きな砂糖菓子を沢山作っています。



「……とても美味しそうなお菓子だね。(よだれを垂らしながら)」


「ツクヨミさん、食べてみますか?」


「えっ、いいの?(嬉)」


「どうぞ、召し上がれ‼」



 私は、出来上がったひとかけらをツクヨミさんに手渡しました。



「いっただっきまーす‼  ガブッ……もぐもぐもぐ…………。」


「ツクヨミさん、どうですか?(わくわく)」


「う、うん。……オイシイヨ。(甘すぎて胸やけ)」


「そうですよね! これは、お兄ちゃ……父に作り方を教わった思い出深いお菓子なのですよ‼」


「そ、そうなんだ。(お師匠様ー、なんてことを灰かぶり姫に教えているんですかー⁉)」


「たくさん作っていますからもっと食べてくださいね‼(満面の笑み)」


「う、うん。……しょ、食後のデザートにとっておこうかなー。(目が泳いでる)」



 カンカンカンカンカンカンカンカン‼



 すると、台所中に強烈な音が鳴り響いたのです‼ 横で食べかけのお菓子を持っていらしたツクヨミさんは、途端に顔色を険しくして、辺りを見回します。



「灰かぶり姫、敵襲だよ‼(キリッ)」


「て、敵襲⁉」


「ああ、……魔法省の名簿に載っていない人間が省内へ入り込むと、鳴るようになっているんだ。(真剣)」


「……わ、私は魔法省のメンバーではありませんが、大丈夫なのですか?」


「お師匠様の娘さんは、顔パスさ‼」



 ツクヨミさんは、その場でローブを脱ぎ捨てて駆け出しました。私も、ツクヨミさんの後を全速力で追いかけます。

 なんとなくですが、どうやらツクヨミさんは、敵がどこから入ってきたのかが分かるみたいですね。分岐点で迷うことなく、くねくねした廊下を駆け抜けていきます。

 ……やがてツクヨミさんは、とある赤い扉の前で立ち止まりました。



「……灰かぶり姫、おそらくこの扉の先に、侵入者がいると思う。(汗)」


「……行きましょう、ツクヨミさん。」



 私達は一つ深呼吸をして、赤い扉を開くと、そこには……。



「……灰かぶり、迎えに来たわよ。(睨)」



 ……継母様おかあさまと、義姉様おねえさま達が佇んでいらっしゃったのでした。(汗)



「お、継母様おかあさま義姉様おねえさま、……お久しぶりですわ。(愛想笑い)」


「久しぶりどころではないわ、灰かぶり‼ なぜお屋敷から出るようなマネをしたの⁉ 心配したじゃない。……さあ、帰るわよ‼」


「生憎ですが私は帰りません、継母様おかあさま。(微笑)」


「(溜息をつく)貴方に拒否権は無いの。……が灰かぶりの帰りを待っているのよ。(呆れた顔)」


お父様には、いずれ会いに行きます。……今は父の傍にいたいのです、継母様おかあさま。」


「いいえ、貴方は私たちが連れて帰ります‼」



 継母様おかあさまは、ドレスの中からサバイバルナイフを取り出して、私に襲い掛かってきました。



「灰かぶり姫‼(焦)」



 私は突っ込んでこられる継母様おかあさまを華麗にかわして、継母様おかあさまのお口へと砂糖菓子を入れてみます。



「――――ッ⁉」



 継母様おかあさまはガリっと砂糖菓子を噛んだ途端、何故だか、泡を吹いて倒れてしまいましたわ。



「お母さまーー⁉(絶叫) ……あんた、よくもお母さまをーー‼」



 義姉様おねえさま達が二人がかりでやってきましたので、今度は砂糖菓子を二つ、指の間に挟み込み、お二人のお口に目がけてシュパパッと飛ばしてみました。



「フガッ――⁉」


「フゴゴッ――⁉」



 義姉様おねえさま達は、何故か砂糖菓子を咥えたまま、床の上へと倒れられてしまわれました。



「ふぅーー。いつも、継母様おかあさま達、私の砂糖菓子をお口にされると、倒れてしまわれますのよね。この砂糖菓子には、何かしらの催眠効果があるのでしょうか?(本気) …………ツクヨミさん、このお三方、どうされますか?(にっこり)」


「……あ、ありがとう。あとは、僕に任せて!(ええええ、あれって殺人兵器だったの⁉)」



 ――イリアルテ内が揺れている⁉――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家計を支える為宮殿に出仕した子爵令嬢は、憧れの麗人の侍女となる

星 佑紀
恋愛
【旧題】悪役令嬢の小説に憧れて宮殿に出仕した子爵令嬢は、公爵令嬢から溺愛される 生まれながらに貧乏な下級貴族の出である、リッツ子爵令嬢アデリア・リッツは、実家の生活費を稼ぐために、自ら宮殿へ出仕することを決意する。 彼女は、とある一冊の本を胸に、魔の巣窟であるマテリア帝国の宮殿へと一歩足を進めた。 「一生懸命働いてお給金をもらいつつ、憧れの公爵令嬢様のお顔を陰ながら拝見させていただきますわ‼︎(恍惚)」 彼女が胸に抱く本は、世界を股に掛ける小説作家クリンゲル・ホームズ氏 著書の『悪役令嬢は能無し婚約者に印籠を渡す』という大衆小説であり、なけなしのお金をはたいて購入した彼女の大切な宝物だった。 「あら、あの子は……。(ジト目)」 ……一心不乱に憧れを追いかけ回す彼女には、密かに舌舐めずりする公爵令嬢の重たい思いに気づく暇はなかったのであった。 ※大幅な加筆修正を行いました。(2023.08.19〜09.07) ※ 続編を連載中です。 ※本編より、自作小説『断罪裁判は蜜の味』の一部キャラクターが登場します。 ※続編より、自作小説『灰かぶり姫と月の魔法使い』の一部キャラクターが登場します。 ※尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。) ※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。 ※予告なく加筆修正致します。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

断罪裁判は蜜の味

星 佑紀
恋愛
「リリアナ嬢、もう、君にはついていけない。婚約は破棄だ‼︎」 「了解仕りましたわ♡」 私、リリアナ・ヘレンは、本日、婚約者であるロバート殿下から、断罪裁判を起こされる予定ですの。謎の男爵令嬢(ヒロイン)の出現によって、ロバート殿下及び殿下の取り巻き達は骨抜きな状態となり、王宮内の人間関係に亀裂が生じた結果なのです。 私は、この機会を今か今かと待っておりました。 婚約破棄されて国外追放されるために、私リリアナ・ヘレンは頑張って悪役令嬢を務め上げます! 「いや、逃がさないよ♪」 ーー本当の敵は味方にいることをリリアナ嬢は知らなかった……。 ※続編を連載することに致しました。 ※続編より、自作小説『灰かぶり姫と月の魔法使い』の一部キャラクターが登場します。 ※尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。) ※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。 ※予告なく加筆修正致します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

山小屋の男をたぶらかそうとした雪女は、三児の母となる

星 佑紀
恋愛
「……すみませんが、今晩ここに泊めてもらえないでしょうか?」 雪が降り積もるニホン帝国のとある山奥に、一人の女性が立っていた。 どうやら、彼女は山小屋を一軒ごとに回って、若い男性を誑かしている雪女らしい。 今夜も雪女は、ニヤニヤしながら凍てつく山小屋の扉を叩くのであった。 ――六年後―― 彼女は三児の母となって、山小屋から出られない状況に陥っていた!(汗) 「な、なんでなの~⁉」 「ユキちゃん、大好きだよ‼ ……勿論、逃げたりしないよね?(圧)」 「ひいいいい‼(ガクブル)」 これは、大好きな家族から逃げようとする雪女と、最愛の雪女を逃すつもりのない、とある男のお話。 ※関連作品 『断罪裁判は蜜の味』 『国外追放された魔法使いの不思議な館』 ※クロスオーバー作品になります。尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。) ※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。 ※予告なく加筆修正致します。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

腐女子な女兵士がボロボロな少女を助けたら…。

星 佑紀
恋愛
『班長、本日をもって、私エリン・マラスカスは除隊致します!』 トルネード王国のとあるカルスト台地にて、軍事演習に参加していた救護班所属兵士エリン・マラスカス(隠れ腐女子)は、とある草むらで横たわっている少女を発見する。エリンは、すぐさま上司に報告するが、上司は、既に被爆した少女がもう助からないと告げ、少女に対してサーベルを振り下ろす。サーベルで切られる寸前だった少女を庇って負傷したエリンは、除隊を申し出て、少女を背負って部隊から外れることになった。しかし、エリンが助けた少女は、指名手配されていた、とある王族のお方で……。 『皆に、エリンが腐女子ってこと黙っておいてあげるから、……わかるよね?(真顔)』 『な、なんでそうなるの〜⁉︎』 ※関連作品 『親友に裏切られて国外追放された悪役令嬢は、聖女になって返り咲く』

処理中です...