灰かぶり姫と月の魔法使い

星 佑紀

文字の大きさ
上 下
20 / 31
第参譚

0020:月と継母と義姉

しおりを挟む
「……三人共、灰かぶり姫がお屋敷から逃げました。」


「「「――――っ‼」」」



 ここは、トルネード王国宮殿内のとある一室である。灰かぶりの継母と義姉は、ユエから呼び出されていた。



「ゆ、ユエ様、申し訳ございません。……私共がお屋敷から離れたばっかりに……。」


「……いいですよ、今回は私が貴女方をトルネード王国へと招集したのですから。……私が灰かぶり姫を貴女達へ預けて、もう十数年近く経ちました。長い間、彼女を監視してくれて、とても感謝していますよ。(微笑)」


「もったいなきお言葉です、ユエ様。(赤面)」


「今宵の舞踏会は如何でしたか、ルージュ?」



 薄ら笑いを浮かべるユエは、灰かぶりの継母ルージュ・トランスに尋ねた。



「……とても素晴らしかったです‼ その中でも特に、ユエ様の愛溢れる演説を、会場内の皆様は聴き惚れていらっしゃいましたわ‼(恍惚)」


「それはよかったです。……リリーはどうです?」


「私は、会場内の雰囲気がとてもエレガントでよかったです! 一歩入るだけで、まるで異世界に迷い込んでしまったかのような非現実感が心に刺さりました‼(赤面)」


「あの会場も、私が指示してセッティングしてもらいました。舞踏会に参加される皆さんの喜ぶお顔を思い浮かべながら考えたのですよ。(にっこり)……ララはどうでしたか?」


「はい、ユエ様、リゲル殿下とユエ様が握手をなされた場面にググっと胸を打たれました‼ 大好きな祖国トルネード王国を離れて長い間アデルのお屋敷で我慢して頑張ってきた甲斐があったなと、涙が溢れて止まらなかったです‼(嬉し涙)」


「……王族を陥落させるまでに、長い年月を要しました。第一王子と第二王子は私の思惑に歯向かい、第三王子も最後まで抵抗していましたが、貴女方のような魅力的な女性と協力して、どうにかお披露目までに彼の心を掌握することが出来たのです。今度、貴女方をねぎらうパーティーへ彼女を連れてきますね。(にっこり)」



 三人は、真剣に頬を真っ赤にしながら、ユエが主催した舞踏会について語りまくるのであった。



 ◇ ◇ ◇



「……おっと、そろそろお時間ですね。……三人共、灰かぶり姫は今、アデル皇国の宮殿内へ身を隠しています。」



「――――っ‼」



 三人の間に衝撃が走る。



「私は、あの内部へ入り込むことはできません。……三人共、私の言いたいことがわかりますね?(にっこり)」



「「「はいっ‼」」」


「灰かぶり姫は、私がこれから起こそうとしている素晴らしいエンターテイメントに必要な存在です。至急、アデルの宮殿内へ入り込み、彼女を取り返してきてください。」



「「「御意‼」」」



 ――暗闇に、三人の足音が響き渡る‼――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家計を支える為宮殿に出仕した子爵令嬢は、憧れの麗人の侍女となる

星 佑紀
恋愛
【旧題】悪役令嬢の小説に憧れて宮殿に出仕した子爵令嬢は、公爵令嬢から溺愛される 生まれながらに貧乏な下級貴族の出である、リッツ子爵令嬢アデリア・リッツは、実家の生活費を稼ぐために、自ら宮殿へ出仕することを決意する。 彼女は、とある一冊の本を胸に、魔の巣窟であるマテリア帝国の宮殿へと一歩足を進めた。 「一生懸命働いてお給金をもらいつつ、憧れの公爵令嬢様のお顔を陰ながら拝見させていただきますわ‼︎(恍惚)」 彼女が胸に抱く本は、世界を股に掛ける小説作家クリンゲル・ホームズ氏 著書の『悪役令嬢は能無し婚約者に印籠を渡す』という大衆小説であり、なけなしのお金をはたいて購入した彼女の大切な宝物だった。 「あら、あの子は……。(ジト目)」 ……一心不乱に憧れを追いかけ回す彼女には、密かに舌舐めずりする公爵令嬢の重たい思いに気づく暇はなかったのであった。 ※大幅な加筆修正を行いました。(2023.08.19〜09.07) ※ 続編を連載中です。 ※本編より、自作小説『断罪裁判は蜜の味』の一部キャラクターが登場します。 ※続編より、自作小説『灰かぶり姫と月の魔法使い』の一部キャラクターが登場します。 ※尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。) ※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。 ※予告なく加筆修正致します。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

断罪裁判は蜜の味

星 佑紀
恋愛
「リリアナ嬢、もう、君にはついていけない。婚約は破棄だ‼︎」 「了解仕りましたわ♡」 私、リリアナ・ヘレンは、本日、婚約者であるロバート殿下から、断罪裁判を起こされる予定ですの。謎の男爵令嬢(ヒロイン)の出現によって、ロバート殿下及び殿下の取り巻き達は骨抜きな状態となり、王宮内の人間関係に亀裂が生じた結果なのです。 私は、この機会を今か今かと待っておりました。 婚約破棄されて国外追放されるために、私リリアナ・ヘレンは頑張って悪役令嬢を務め上げます! 「いや、逃がさないよ♪」 ーー本当の敵は味方にいることをリリアナ嬢は知らなかった……。 ※続編を連載することに致しました。 ※続編より、自作小説『灰かぶり姫と月の魔法使い』の一部キャラクターが登場します。 ※尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。) ※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。 ※予告なく加筆修正致します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

山小屋の男をたぶらかそうとした雪女は、三児の母となる

星 佑紀
恋愛
「……すみませんが、今晩ここに泊めてもらえないでしょうか?」 雪が降り積もるニホン帝国のとある山奥に、一人の女性が立っていた。 どうやら、彼女は山小屋を一軒ごとに回って、若い男性を誑かしている雪女らしい。 今夜も雪女は、ニヤニヤしながら凍てつく山小屋の扉を叩くのであった。 ――六年後―― 彼女は三児の母となって、山小屋から出られない状況に陥っていた!(汗) 「な、なんでなの~⁉」 「ユキちゃん、大好きだよ‼ ……勿論、逃げたりしないよね?(圧)」 「ひいいいい‼(ガクブル)」 これは、大好きな家族から逃げようとする雪女と、最愛の雪女を逃すつもりのない、とある男のお話。 ※関連作品 『断罪裁判は蜜の味』 『国外追放された魔法使いの不思議な館』 ※クロスオーバー作品になります。尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。) ※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。 ※予告なく加筆修正致します。

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

腐女子な女兵士がボロボロな少女を助けたら…。

星 佑紀
恋愛
『班長、本日をもって、私エリン・マラスカスは除隊致します!』 トルネード王国のとあるカルスト台地にて、軍事演習に参加していた救護班所属兵士エリン・マラスカス(隠れ腐女子)は、とある草むらで横たわっている少女を発見する。エリンは、すぐさま上司に報告するが、上司は、既に被爆した少女がもう助からないと告げ、少女に対してサーベルを振り下ろす。サーベルで切られる寸前だった少女を庇って負傷したエリンは、除隊を申し出て、少女を背負って部隊から外れることになった。しかし、エリンが助けた少女は、指名手配されていた、とある王族のお方で……。 『皆に、エリンが腐女子ってこと黙っておいてあげるから、……わかるよね?(真顔)』 『な、なんでそうなるの〜⁉︎』 ※関連作品 『親友に裏切られて国外追放された悪役令嬢は、聖女になって返り咲く』

処理中です...