17 / 31
第弐譚
0017:袂を分つとき
しおりを挟む
「灰かぶり姫、ツクヨミと一緒に今すぐアデルの魔法省へ逃げてくれ。」
皆さん、こんばんは。小さい頃にお世話になっていた剣術のお兄ちゃんが、実は本当の父だったということを知って、衝撃を受けている灰かぶりです。
「マーズ殿下、お兄ちゃ……父をどうなされるつもりなのですか?」
ツクヨミさんとマーズ殿下の表情からみて、ここも安全な場所とは言い切れないようです。しかし、父を置いて自分一人だけ逃げるのはなんだかとても嫌なのでした。
父には、何か理由があったのでしょう。……身分を隠してたくさんのことを私に教えてくれました。精神的に、助けてもらいました。ここで一生のお別れになるくらいなら、私もここに残って戦います!。
「安心してほしい。エドワードは、私の魔法で仮死状態にしてある。息はしていないが、心臓はまだ止まってはいない。設備の整った魔法省にてしかるべき治療を施せば、一命をとりとめることは可能だ。」
「灰かぶり姫、殿下を信じよう。」
「私にはこの国の第一後継者として、果たさねばならぬことがある。それが終わり次第、エドワードを連れて必ず二人と合流することを誓おう。」
……そうですね。私はマーズ殿下のお顔を見て、大きく頷きました。
そして、父の顔を目に焼き付けるのです。父さん、必ずまた元気な姿で会えるように、私、頑張りますからね!
私は背後に控えているツクヨミさんの方を振り向いて、首を縦に振りました。
「二人とも、気をつけてな。」
「殿下も、お気をつけて。」
「マーズ殿下、父のことをよろしくお願いします。」
「ああ、まかせておけ。(微笑み)」
私はツクヨミさんが差し出す左手を取って、魔法陣の中へと入りました。
「この手を離したら絶対に駄目だからね!」
「了解なのです!」
私とツクヨミさんは、マーズ殿下と父を残して、小さな広場から魔法省へと向かったのでした。
【side マーズ殿下 始】
「……父上、出てきてください。そこにいるのはわかっているのですよ。」
ツクヨミと灰かぶり姫が魔法陣にて転送された後、私は、暗闇へ向かって声をかけた。
おそらく、私とエドワードに用があるのだろう。
「マーズよ、その男を渡しなさい。」
「何故ですか、父上。」
「月国王との約束だ。」
「……お断りします。」
やはり、エドワードの言っていた通りだ。第三王子のリゲルだけではない。父上も、月国王『ユエ』に毒されていたのだ。
闇の武器商人の国『月国』との同盟を結ぶということは、トルネード王国も必然的に戦争屋になることを意味している。
それは、戦争をしないと、経済が回らなくなるということだ。
経済が回らなくなると、国家はいずれ衰弱する。そして、ぐちゃぐちゃになったところで、月国は勇者然として攻め入るはずだ。
遠くから月国王のスピーチを聞いてみたところ、彼の言っていることは月国側からの内政干渉を堂々と宣言していたにすぎない。
――甘い話には、必ず裏がある。
月国王の思惑に気づかない、父上とリゲルに、国民は信じて付き従うだろう。
……それが、民の総意であるならば、致し方ない。
「マーズよ、いい加減、目を覚ましなさい。その男はアデル側の人間だ。」
「……。(じっと実父を見る)」
「じきに、両国間で大きな戦争が起こる。そこでお前は……。」
「父上、私の命にかけて、戦争は絶対に起こさせません!」
「……いいや、起こすよ。……この私がね。(笑)」
父上の背後から腹違いの弟リゲルが現れた。
「……リゲル、本気なのか?」
「ええ、そうですよ、マーズ兄さん。(笑)」
「マーズよ、お前が遊んでいるなか、リゲルがこの国のことを良く考えてくれてだな、旧友である月国王との間も取り持ってくれたのだ。マーズもリゲルを見習って……。」
「父上、ここが私達の潮時ですね。」
「……なに?」
「かねてより哀願していた廃嫡の話を今すぐここで進めましょう。」
「何を言っているのだ、マーズ⁉」
「私はトルネード王国だけではない、世界の平和を願っております。したがって、父上やリゲルの考えに沿うことはできません。」
私は、王族の第一後継者に受け継がれるペンダントをその場で外し、地面に置いた。
「父上、……リゲル、今までありがとうございました。どうか、お元気で。」
「ま、待て、マーズ‼」
私はエドワードを大切に抱き上げて、瞬時に魔法陣を展開した。
目的地は、アデルの魔法省へ。
今はまだ、私の言うことがトルネード王国のみんなに理解されることはないだろう。
……しかし、真実の平和を実現するために出来ることはたくさんあるはずだ。
――私は、幸運な男だ。
信頼できる友がいる。大事な恩師がいる。
――これからが本番だ。
【side マーズ殿下 終】
――白い光はまるで流れ星のように夜を照らし、アデル皇国へと降り注ぐ‼――
皆さん、こんばんは。小さい頃にお世話になっていた剣術のお兄ちゃんが、実は本当の父だったということを知って、衝撃を受けている灰かぶりです。
「マーズ殿下、お兄ちゃ……父をどうなされるつもりなのですか?」
ツクヨミさんとマーズ殿下の表情からみて、ここも安全な場所とは言い切れないようです。しかし、父を置いて自分一人だけ逃げるのはなんだかとても嫌なのでした。
父には、何か理由があったのでしょう。……身分を隠してたくさんのことを私に教えてくれました。精神的に、助けてもらいました。ここで一生のお別れになるくらいなら、私もここに残って戦います!。
「安心してほしい。エドワードは、私の魔法で仮死状態にしてある。息はしていないが、心臓はまだ止まってはいない。設備の整った魔法省にてしかるべき治療を施せば、一命をとりとめることは可能だ。」
「灰かぶり姫、殿下を信じよう。」
「私にはこの国の第一後継者として、果たさねばならぬことがある。それが終わり次第、エドワードを連れて必ず二人と合流することを誓おう。」
……そうですね。私はマーズ殿下のお顔を見て、大きく頷きました。
そして、父の顔を目に焼き付けるのです。父さん、必ずまた元気な姿で会えるように、私、頑張りますからね!
私は背後に控えているツクヨミさんの方を振り向いて、首を縦に振りました。
「二人とも、気をつけてな。」
「殿下も、お気をつけて。」
「マーズ殿下、父のことをよろしくお願いします。」
「ああ、まかせておけ。(微笑み)」
私はツクヨミさんが差し出す左手を取って、魔法陣の中へと入りました。
「この手を離したら絶対に駄目だからね!」
「了解なのです!」
私とツクヨミさんは、マーズ殿下と父を残して、小さな広場から魔法省へと向かったのでした。
【side マーズ殿下 始】
「……父上、出てきてください。そこにいるのはわかっているのですよ。」
ツクヨミと灰かぶり姫が魔法陣にて転送された後、私は、暗闇へ向かって声をかけた。
おそらく、私とエドワードに用があるのだろう。
「マーズよ、その男を渡しなさい。」
「何故ですか、父上。」
「月国王との約束だ。」
「……お断りします。」
やはり、エドワードの言っていた通りだ。第三王子のリゲルだけではない。父上も、月国王『ユエ』に毒されていたのだ。
闇の武器商人の国『月国』との同盟を結ぶということは、トルネード王国も必然的に戦争屋になることを意味している。
それは、戦争をしないと、経済が回らなくなるということだ。
経済が回らなくなると、国家はいずれ衰弱する。そして、ぐちゃぐちゃになったところで、月国は勇者然として攻め入るはずだ。
遠くから月国王のスピーチを聞いてみたところ、彼の言っていることは月国側からの内政干渉を堂々と宣言していたにすぎない。
――甘い話には、必ず裏がある。
月国王の思惑に気づかない、父上とリゲルに、国民は信じて付き従うだろう。
……それが、民の総意であるならば、致し方ない。
「マーズよ、いい加減、目を覚ましなさい。その男はアデル側の人間だ。」
「……。(じっと実父を見る)」
「じきに、両国間で大きな戦争が起こる。そこでお前は……。」
「父上、私の命にかけて、戦争は絶対に起こさせません!」
「……いいや、起こすよ。……この私がね。(笑)」
父上の背後から腹違いの弟リゲルが現れた。
「……リゲル、本気なのか?」
「ええ、そうですよ、マーズ兄さん。(笑)」
「マーズよ、お前が遊んでいるなか、リゲルがこの国のことを良く考えてくれてだな、旧友である月国王との間も取り持ってくれたのだ。マーズもリゲルを見習って……。」
「父上、ここが私達の潮時ですね。」
「……なに?」
「かねてより哀願していた廃嫡の話を今すぐここで進めましょう。」
「何を言っているのだ、マーズ⁉」
「私はトルネード王国だけではない、世界の平和を願っております。したがって、父上やリゲルの考えに沿うことはできません。」
私は、王族の第一後継者に受け継がれるペンダントをその場で外し、地面に置いた。
「父上、……リゲル、今までありがとうございました。どうか、お元気で。」
「ま、待て、マーズ‼」
私はエドワードを大切に抱き上げて、瞬時に魔法陣を展開した。
目的地は、アデルの魔法省へ。
今はまだ、私の言うことがトルネード王国のみんなに理解されることはないだろう。
……しかし、真実の平和を実現するために出来ることはたくさんあるはずだ。
――私は、幸運な男だ。
信頼できる友がいる。大事な恩師がいる。
――これからが本番だ。
【side マーズ殿下 終】
――白い光はまるで流れ星のように夜を照らし、アデル皇国へと降り注ぐ‼――
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

家計を支える為宮殿に出仕した子爵令嬢は、憧れの麗人の侍女となる
星 佑紀
恋愛
【旧題】悪役令嬢の小説に憧れて宮殿に出仕した子爵令嬢は、公爵令嬢から溺愛される
生まれながらに貧乏な下級貴族の出である、リッツ子爵令嬢アデリア・リッツは、実家の生活費を稼ぐために、自ら宮殿へ出仕することを決意する。
彼女は、とある一冊の本を胸に、魔の巣窟であるマテリア帝国の宮殿へと一歩足を進めた。
「一生懸命働いてお給金をもらいつつ、憧れの公爵令嬢様のお顔を陰ながら拝見させていただきますわ‼︎(恍惚)」
彼女が胸に抱く本は、世界を股に掛ける小説作家クリンゲル・ホームズ氏 著書の『悪役令嬢は能無し婚約者に印籠を渡す』という大衆小説であり、なけなしのお金をはたいて購入した彼女の大切な宝物だった。
「あら、あの子は……。(ジト目)」
……一心不乱に憧れを追いかけ回す彼女には、密かに舌舐めずりする公爵令嬢の重たい思いに気づく暇はなかったのであった。
※大幅な加筆修正を行いました。(2023.08.19〜09.07)
※ 続編を連載中です。
※本編より、自作小説『断罪裁判は蜜の味』の一部キャラクターが登場します。
※続編より、自作小説『灰かぶり姫と月の魔法使い』の一部キャラクターが登場します。
※尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。)
※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。
※予告なく加筆修正致します。


断罪裁判は蜜の味
星 佑紀
恋愛
「リリアナ嬢、もう、君にはついていけない。婚約は破棄だ‼︎」
「了解仕りましたわ♡」
私、リリアナ・ヘレンは、本日、婚約者であるロバート殿下から、断罪裁判を起こされる予定ですの。謎の男爵令嬢(ヒロイン)の出現によって、ロバート殿下及び殿下の取り巻き達は骨抜きな状態となり、王宮内の人間関係に亀裂が生じた結果なのです。
私は、この機会を今か今かと待っておりました。
婚約破棄されて国外追放されるために、私リリアナ・ヘレンは頑張って悪役令嬢を務め上げます!
「いや、逃がさないよ♪」
ーー本当の敵は味方にいることをリリアナ嬢は知らなかった……。
※続編を連載することに致しました。
※続編より、自作小説『灰かぶり姫と月の魔法使い』の一部キャラクターが登場します。
※尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。)
※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。
※予告なく加筆修正致します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

山小屋の男をたぶらかそうとした雪女は、三児の母となる
星 佑紀
恋愛
「……すみませんが、今晩ここに泊めてもらえないでしょうか?」
雪が降り積もるニホン帝国のとある山奥に、一人の女性が立っていた。
どうやら、彼女は山小屋を一軒ごとに回って、若い男性を誑かしている雪女らしい。
今夜も雪女は、ニヤニヤしながら凍てつく山小屋の扉を叩くのであった。
――六年後――
彼女は三児の母となって、山小屋から出られない状況に陥っていた!(汗)
「な、なんでなの~⁉」
「ユキちゃん、大好きだよ‼ ……勿論、逃げたりしないよね?(圧)」
「ひいいいい‼(ガクブル)」
これは、大好きな家族から逃げようとする雪女と、最愛の雪女を逃すつもりのない、とある男のお話。
※関連作品
『断罪裁判は蜜の味』
『国外追放された魔法使いの不思議な館』
※クロスオーバー作品になります。尚、本作品と自作の他作品の世界は全て繋がっており、時系列もほぼほぼ一致しております。(多少のズレはあります。)
※アプリで閲覧される際は縦読み推奨です。
※予告なく加筆修正致します。

シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

腐女子な女兵士がボロボロな少女を助けたら…。
星 佑紀
恋愛
『班長、本日をもって、私エリン・マラスカスは除隊致します!』
トルネード王国のとあるカルスト台地にて、軍事演習に参加していた救護班所属兵士エリン・マラスカス(隠れ腐女子)は、とある草むらで横たわっている少女を発見する。エリンは、すぐさま上司に報告するが、上司は、既に被爆した少女がもう助からないと告げ、少女に対してサーベルを振り下ろす。サーベルで切られる寸前だった少女を庇って負傷したエリンは、除隊を申し出て、少女を背負って部隊から外れることになった。しかし、エリンが助けた少女は、指名手配されていた、とある王族のお方で……。
『皆に、エリンが腐女子ってこと黙っておいてあげるから、……わかるよね?(真顔)』
『な、なんでそうなるの〜⁉︎』
※関連作品
『親友に裏切られて国外追放された悪役令嬢は、聖女になって返り咲く』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる