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第弐譚
0011:テロ
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「私は、廃嫡するつもりだったんだ。」
皆様、どうも、口をあんぐり開けている灰かぶりです。
トルネード王国第一王子マーズ殿下は、私の反応に頷いて、ゆっくりと話し始められました。
「私がトルネード王国へ帰ったのは、つい最近のことだ。数年前から両国で取り交わされた密約は解除されており、いつでも帰国することはできたのだが、私は、エドワードの側にいたかった。」
「……元々、僕とお師匠様はアデル皇国魔法省の特別戦闘部隊所属だったんだけどね、殿下が入りたいってじらを言っては現場に来るものだから、両国間でとある組織が結成されたんだ。」
「二国共同特別魔術部隊、いわゆる国際警察だ。私達三人は、チームで秘密裏に活動していた。………そして、一ヶ月前に事件は起きた。」
「国境沿いでのテロ行為ですね。」
「て、テロ行為⁉」
「そうだ。両国の新聞には記事が出ていないはずだから、灰かぶり姫は知らないだろう。……実は、トルネード王国の第三王子一派が両国の国境沿いにて最新鋭の爆弾を仕掛けたんだ。」
「僕達三人は、そのとき現場へ駆けつけて、どうにか事なきを得たんだよ。」
「たまたま一般市民に目撃されなかったから、上手いこと揉み消すことができた。けれど、もし、両国中にこの騒動が広がれば…………。」
「せ、戦争ですか?」
「そうだ。」
「トルネード王国の第三王子はね、以前より闇の武器商人との親交が深いことで有名なんだ。……僕たちの推測では、その武器商人が、今回のテロ事件の首謀者だとみているよ。」
「……現場で使用された爆弾が、市場に出回っている普通の爆弾だったならば、まだよかったんだがな。」
「殿下……。」
「事後処理を終えて帰還するときに、事態は急変した。」
「……灰かぶり姫、不発の爆弾が一発だけ残っていたんだ。」
「最新の時限装置付きの気味の悪いヤツがな。」
「そ、それで、その爆弾は……。」
「気づいたときには遅かった。エドワードだけが火薬が弾ける寸前、条件反射で私達に結界を張ってくれていた。そして、エドワード自身は……生身でその爆弾をくらったんだ。」
「そ、そんな……。」
「この責任は、全て私にある。灰かぶり姫、父親であるエドワード・ロックを守りきれなくて、すまなかった。」
「マーズ殿下……。」
マーズ殿下とツクヨミさんは私に向かって、深く頭を下げられました。
――殿下もツクヨミさんも、何も悪くないじゃないですか。ただの事故だったのです。
……私は、お二人をまっすぐに見て、おずおずと口を開きました。
「マーズ殿下、ツクヨミさん、……お二人は、なにも悪くありません。どうか、頭を上げてください。」
「だが、しかし…………。」
「父(?)は、……エドワード・ロックは、平気なはずです。爆弾にぶつかろうが、火炎放射器をふっかけられようが、おそらく、不死身です。」
「いやいや、灰かぶり姫、流石にお師匠様でも、そこまで傷めつけられたら命の保証はないよ。(困り眉)」
「私の勘がそう言っているのです!」
その途端、私のワンピースのポケットが赤く光りだしました。
おもむろに、ポケットの中へと手を入れましたら、あたたかい小石が私の手に触れてきたのです!
パァ――――――
ザンッ
その瞬間、私は意識を手離しました。
「……お前達、モタモタしやがって。俺の言ったこと、忘れてねえだろうな?」
「殿下、どうしましょう? 灰かぶり姫がとうとうブチ切れちゃいましたよ⁉(困り眉)」
「いや違うだろーが! ……俺だよ俺‼」
「…………エドワードか⁉」
「ああ、そうだ。」
「えっ、お師匠様⁉」
――灰かぶり姫もとい、エドワード・ロックは、二人を睨んで言い放った。――
「俺の事は二の次だ。まずは、俺の愛娘、ルナを守れ。あのとき、言っただろう?」
――あのときとは。――
――爆風に煽られ、息が途切れる直前のエドワード・ロックは愛弟子達にテレパシーを送っていた。――
『じきに、戦争が起こる。いいか、俺の娘、ルナ・ロックを全力で守れ。俺の娘を戦争の武器に、兵器に使われる前に、ヤツらから奪い返せ! それが、俺と妻の願いだ――‼』
――偉大なる魔法使いは、二人に未来を託したのであった。――
皆様、どうも、口をあんぐり開けている灰かぶりです。
トルネード王国第一王子マーズ殿下は、私の反応に頷いて、ゆっくりと話し始められました。
「私がトルネード王国へ帰ったのは、つい最近のことだ。数年前から両国で取り交わされた密約は解除されており、いつでも帰国することはできたのだが、私は、エドワードの側にいたかった。」
「……元々、僕とお師匠様はアデル皇国魔法省の特別戦闘部隊所属だったんだけどね、殿下が入りたいってじらを言っては現場に来るものだから、両国間でとある組織が結成されたんだ。」
「二国共同特別魔術部隊、いわゆる国際警察だ。私達三人は、チームで秘密裏に活動していた。………そして、一ヶ月前に事件は起きた。」
「国境沿いでのテロ行為ですね。」
「て、テロ行為⁉」
「そうだ。両国の新聞には記事が出ていないはずだから、灰かぶり姫は知らないだろう。……実は、トルネード王国の第三王子一派が両国の国境沿いにて最新鋭の爆弾を仕掛けたんだ。」
「僕達三人は、そのとき現場へ駆けつけて、どうにか事なきを得たんだよ。」
「たまたま一般市民に目撃されなかったから、上手いこと揉み消すことができた。けれど、もし、両国中にこの騒動が広がれば…………。」
「せ、戦争ですか?」
「そうだ。」
「トルネード王国の第三王子はね、以前より闇の武器商人との親交が深いことで有名なんだ。……僕たちの推測では、その武器商人が、今回のテロ事件の首謀者だとみているよ。」
「……現場で使用された爆弾が、市場に出回っている普通の爆弾だったならば、まだよかったんだがな。」
「殿下……。」
「事後処理を終えて帰還するときに、事態は急変した。」
「……灰かぶり姫、不発の爆弾が一発だけ残っていたんだ。」
「最新の時限装置付きの気味の悪いヤツがな。」
「そ、それで、その爆弾は……。」
「気づいたときには遅かった。エドワードだけが火薬が弾ける寸前、条件反射で私達に結界を張ってくれていた。そして、エドワード自身は……生身でその爆弾をくらったんだ。」
「そ、そんな……。」
「この責任は、全て私にある。灰かぶり姫、父親であるエドワード・ロックを守りきれなくて、すまなかった。」
「マーズ殿下……。」
マーズ殿下とツクヨミさんは私に向かって、深く頭を下げられました。
――殿下もツクヨミさんも、何も悪くないじゃないですか。ただの事故だったのです。
……私は、お二人をまっすぐに見て、おずおずと口を開きました。
「マーズ殿下、ツクヨミさん、……お二人は、なにも悪くありません。どうか、頭を上げてください。」
「だが、しかし…………。」
「父(?)は、……エドワード・ロックは、平気なはずです。爆弾にぶつかろうが、火炎放射器をふっかけられようが、おそらく、不死身です。」
「いやいや、灰かぶり姫、流石にお師匠様でも、そこまで傷めつけられたら命の保証はないよ。(困り眉)」
「私の勘がそう言っているのです!」
その途端、私のワンピースのポケットが赤く光りだしました。
おもむろに、ポケットの中へと手を入れましたら、あたたかい小石が私の手に触れてきたのです!
パァ――――――
ザンッ
その瞬間、私は意識を手離しました。
「……お前達、モタモタしやがって。俺の言ったこと、忘れてねえだろうな?」
「殿下、どうしましょう? 灰かぶり姫がとうとうブチ切れちゃいましたよ⁉(困り眉)」
「いや違うだろーが! ……俺だよ俺‼」
「…………エドワードか⁉」
「ああ、そうだ。」
「えっ、お師匠様⁉」
――灰かぶり姫もとい、エドワード・ロックは、二人を睨んで言い放った。――
「俺の事は二の次だ。まずは、俺の愛娘、ルナを守れ。あのとき、言っただろう?」
――あのときとは。――
――爆風に煽られ、息が途切れる直前のエドワード・ロックは愛弟子達にテレパシーを送っていた。――
『じきに、戦争が起こる。いいか、俺の娘、ルナ・ロックを全力で守れ。俺の娘を戦争の武器に、兵器に使われる前に、ヤツらから奪い返せ! それが、俺と妻の願いだ――‼』
――偉大なる魔法使いは、二人に未来を託したのであった。――
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