僕の幸せ

朝比奈和花

文字の大きさ
上 下
99 / 101

98*

しおりを挟む




ふたつの飾りを弄っていたリュカさんがその長い指を僕の後ろに伸ばしてきた。

ピーッ、カシャン…

首に広がる解放感でプロテクターが外されたのがわかった。
それと同時に僕の後ろに移った気配が、過去の床に押さえつけられたのと重なる。

いつもはリュカさんが前にいてくれて、後ろに回られたことはなかった。

「やぁっ!やだやだっ!っふ、やっ!
こわ、こわい!……こわいぃっ」

「っ陽!落ち着いて!落ち着いて……

今、貴方の前にいるのは、私です
怖いことは絶対にしません……だから、ね?」

後ろから強く強く抱きしめてきたリュカさんが僕の目を覗き込んで視線を逸らさない。

そしてそのまま指が僕の後ろをこじ開けてきた。

とても怖くて、でも目の前で視線を外さないで見つめてくれているのは紛れもなく僕の愛しい人で、僕を呑みこんできそうな怖さを紛らわすように、力強く抱きしめてくる腕に縋りつく。

「そう、そのまま私を見ていて……。
快楽を与えてあげられるのは私だけです。」

ふたりだけの空間に響く水音に混ざって気持ち良さが湧き出てきた。
それに気づいたリュカさんもたくさんくちづけをくれて、指で僕のイイトコロを擦ってくる。

「あっあっ、リュカ、さん、ふっ……
そのまま、んぁっ、抱きしめて……いて……っ」

「っ、はい、抱きしめて、いますよ……っはぁ、かわいい……ん」

巧みに動く指が僕の中の擦りあげるたびどこかに連れ去られそうになる。

「んやぁっ、まっ、て、まって……!

ん、は、へん、へんんんっ!
なんかくるっ……くるっ!
や、や、やぁぁぁぁっ……っ」

制止の声は聞いてもらえず快楽の世界へ放り投げられた。

「はーっ……はー、はー……。」

ずるり、と縋りついていた腕に顔をつけて、脱力していてもリュカさんは僕を離さないでくれた。

僕にひどいことは決してしないリュカさんに、いつの間にか恐怖は消えてなくなっていた。




指だけでこんな快感の海に落ちるのかと少しの間呆然としていれば、目を覚まさせるように頬に、おでこに、鼻に、キスの雨を降らせてくる。

「ふ、とても、かわいかったですよ」

そう言って見つめてくる目がとても甘くて、恥ずかしさにもぞりと動けば太ももの裏にリュカさんの怒張が布越しにごり、とあたった。

……たまに艶っぽいけど普段の佇まいからこういう性的なものを一切感じさせないリュカさんがこうなっているのはちょっぴりクるものがある。


ぼやけた思考の中、手探りでそっとそれに手を伸ばした。
ちょっと怖いけど、リュカさんなら怖くない。


「……くっ、陽、今触られるとっ」

焦りを帯びたリュカさんの声に寛げていたパンツの中にそろーっと手を入れた。


「……ん、おおき」

「……煽り、すぎだっ」

「え、あっ!……んぅっ」

口と口を合わせるちゅぅ。

なんて、優しいものじゃなくてリュカさんの熱い舌が口に入ってきて、絡めとられるそれが気持ちよくてますます熱くなるそんな大人なキス。

「っちゅ、ふ、ここ、物欲しそうにひくついてます、よっ」

「ひぁぁっ、そんないっき、にぃっ……ん……」

リュカさんの指が何本かまとめて入ってきて、さっきよりもはしたないぐちぐちとした水音がダイレクトに耳に入ってくる。

口から、耳から、胸から、後ろから翻弄されて全てが気持ちいい。

でもなんか奥が物足りない……。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

頑張って番を見つけるから友達でいさせてね

貴志葵
BL
大学生の優斗は二十歳を迎えてもまだαでもβでもΩでもない「未分化」のままだった。 しかし、ある日突然Ωと診断されてしまう。 ショックを受けつつも、Ωが平穏な生活を送るにはαと番うのが良いという情報を頼りに、優斗は番を探すことにする。 ──番、と聞いて真っ先に思い浮かんだのは親友でαの霧矢だが、彼はΩが苦手で、好みのタイプは美人な女性α。うん、俺と真逆のタイプですね。 合コンや街コンなど色々試してみるが、男のΩには悲しいくらいに需要が無かった。しかも、長い間未分化だった優斗はΩ特有の儚げな可憐さもない……。 Ωになってしまった優斗を何かと気にかけてくれる霧矢と今まで通り『普通の友達』で居る為にも「早くαを探さなきゃ」と優斗は焦っていた。 【塩対応だけど受にはお砂糖多めのイケメンα大学生×ロマンチストで純情なそこそこ顔のΩ大学生】 ※攻は過去に複数の女性と関係を持っています ※受が攻以外の男性と軽い性的接触をするシーンがあります(本番無し・合意)

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

処理中です...