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しおりを挟む結局、作り始めて4日目に突入しても完成していない。
「花束ひとつ作るのにこんなに時間かかるやつ、初めて見たぜ。」
ずっと付き合ってくれている木蓮さんはもはや苦笑いを零していた。
基本はお客様のオーダーがあって、僕はそれに沿うように花束を作ってきた。
でも、自分が誰かに花束を贈るっていうのは初めてで、オーダーも何もないから、すごく悩んでしまう。
「よし、陽、一度帰れ。」
「え?」
「一度花のことから離れてみろ。
そもそも今日は陽、休日だろ。」
理人と遊ぶなりして頭の中を空っぽにしてみろと-shiki-から追い出されるように帰されてしまった。
まぁ最近りぃくんと遊べていなかったし丁度いいか……。
「りぃくん、公園に寄って帰ろうか!」
「いいの!?」
家に帰る途中にある、ブランコとすべり台と鉄棒とベンチしかない小さな公園。
「陽!ちゃんと押してね!」
「はーい!」
お気に入りのブランコを精一杯押す。
いつもなら遊び道具なども持ってくるのだが今日は生憎持っていなかった。
-shiki-からまっすぐきたから仕方がないのだけれど。
ブランコに飽きたりぃくんの興味はすべり台に移ったので僕はベンチに座って休憩。
きちんと日に焼けない予防していないからこれ以上はりぃくんの肌がまっかになってしまう、と思ったところで切り上げた。
「次はボールとか持ってこようか!」
「うん!リュカも一緒ね!」
「……そうだねぇ。」
手を繋いで夜ごはんを決めながら帰る。
悩みからも離れてりぃくんとの穏やかな時間。
じんわりとした幸せが心に広がっていく。
しかしそれはわずかな時間しか続かなかった。
いつもより早い夜ごはんを済ませ、りぃくんとパズルでもしようか、と話していたとき
ピンポン
軽快なチャイム音が響いた。
誰だろう?
この家に来る人なんて限られている。
「はーい。」
リュカさんに夜は必ずチェーンロックをかけることって言われていたから、かけたままドアを開ける。
「夜分遅くにすみません。
望月 陽様でございますね?」
そこにはふたりの男性がいた。
反射的にドアを閉める。が、ガンッと足を挟まれてしまいそれも叶わなかった。
「リュカ=フラヴィオ=イオリ=ルグゼンブルク様の件で話があるのです。
今ここを開けないというのなら、無理やりにでも開けることもできますが、なるべくならそんなことをせず話を聞いてもらいたいものです。
それに、我々がいつまでもここにいれば確実に明日には近所で噂になってしまうかもしれません。」
足を挟んで来た男性がその穏やかな口調とは裏腹に半ば脅しにも聞こえる口ぶりでそう言った。
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