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58 side リュカ
しおりを挟むすー、と微かな寝息をたてて眠る陽にタオルケットを被せベッドを出る。
りぃくんはぬいぐるみに抱きついているから、お腹にだけタオルケットをかけた。
居間に戻ってテーブルの上に置きっぱなしにしていた陽からのプレゼントをそっと取る。
まっかな顔で照れながらプレゼントを渡してきた陽は最高にかわいかった。
「その照れを隠すのに酒をそのまま飲んだのは想定外でしたけどね……。」
おかげで生殺しだ。
呂律のまわってない口調に、いつもの自分とりぃくんを守るための鎧を外して無防備になった彼がどれほどかわいくて愛しいか……。
もう少し彼は自覚したほうがいい。
それにしてもプレゼントをくれた後のあの嬉しさの中に混ざった悲しそうな顔。
私の考えすぎだろうか……?
しかし彼は賢い。
濃すぎる人生で培った知恵と地頭もいいのでそこらへんのαより賢い。
だからもし私の立場を悟っていたら……?
徐々に私から距離を置き始めてしまう。
まぁでもその問題も早いか遅いかの違いで、いずれ超えなきゃいけない問題だ。
プルルルルル…プルルルルル…
「なんです?こんな遅くに。」
それは私の秘書の御影からの電話だった。
『これくらいの時間でないと貴方は出てくれないでしょう?
護衛から報告が入りましたが今日幾度となくその護衛を撒いたんですって?
貴方の立場を弁えてください。』
立場……。
生まれたときから私を縛りつける面倒なモノ。
「それで用件は?
まさか、仕事がもう手に負えませんって連絡ではないでしょう?
重要案件はすべて片づけて休みを取ったのですから。」
りぃくんの誕生日の1週間前から、陽とランチをする時間も詰めてこの2日間の休みを取ったのだ。
『私の手に負えませんって仕事がそれでも入って来てますけどなんとか処理していますよ。
それよりも貴方の兄上が少しこちらの様子を訝しがってます。
日本に留まり続けてなにかしているのではないか、と。』
「こちらはその地位は興味ないとずっと言っているのですがね……。
まぁ、なんとかしましょう。」
レイ=ロレンツォ=ルグゼンブルク、私の兄。
ルグゼンブルク家は現在、次期当主が決まっていない。
現当主である祖父が誰を後継者にするのか示していないからだ。
国際色豊かな名前を子や孫につけた祖父は変わり者と周りから言われている。
貴族の家柄だからといってそれに胡座をかくことなく世界で活躍しろ、いうことらしいが……。
現にルグゼンブルクはシェーンというジュエリーブランドで有名だが実際には空運業や海運業を始めホテル経営など幅広く手を出している。
そしてそんな祖父の元にいる兄は青い血が流れるこのルグゼンブルク家に誇りを持っていて継ぎたくて仕方ない。
基本的に長兄が継ぐというのにそれでも私を警戒しているのだ。
私が身の振り方を明示していないから、というのも原因のひとつなのだが……。
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