僕の幸せ

朝比奈和花

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僕は無知なことが自身をいずれ苦しめることをいままでの人生で嫌というほど味わっている。
だからなるべくわからないことや不思議に思ったことは調べるようにしていた。


それに元々人の顔色を伺って生きてきたんだ。


琥太郎さんや柚さんがリュカさんに向ける態度を見ていれば想像ができた。

3ヶ月の間、ただリュカさんとランチを楽しんでいたわけじゃない。
僕なりにリュカさんについて調べてみたことがあるんだ。



そうしたら、すぐ出てきた。
ルグゼンブルク家と西園寺家を両親に持つリュカさんのことが、それはもうザクザクと。

ひとつだけ確実にわかったことは住む世界が違うということ。

なぜ僕とりぃくんに会ってくれるかはわからないけれどいずれいなくなる存在なのはわかる。


リュカさんは世界から必要とされる人間。
僕はりぃくんからしか必要とされない人間。

しかも僕に至ってはりぃくんが独り立ちするまでの期限付きだ。
いずれ誰からも必要とされなくなる。

誰にも言っていないけれどりぃくんが就職してい人ができて結婚してくれたら僕はそっと消えようと思ってる。

僕の存在がりぃくんの障害物にならないように。
重荷にならないように。
りぃくんがこれから生きていく世界の中で、少しでも僕の存在が邪魔になってはいけない。

りぃくんは優しい子だからいずれ老いる僕のことを気遣ってくれる。
りぃくんがそこまですることはないのだ。
そうなる前にひっそりと消えたい。



りぃくんの幸せが僕の幸せだから。



そんな僕がリュカさんに恋して、想いを告げたところでリュカさんが困るだけ。

前にお近づきになりたいなんて言ってくれたけれど、きっと気の迷いか、ただの興味か何かだろう。

以前、家の前でよく井戸端会議をしている人たちが、こどももいて、しかもΩなんて独占欲の強いαがもらうわけないじゃない。
βだってΩだって子持ちは嫌がるわよとこちらを見てにやにやと言っていた。


僕はりぃくんのような子が僕のもとにきてくれたのは奇跡で、子持ちで何が悪いんだと思っている。

でも世間では子持ちの片親のΩとしか見られない僕は恋愛対象としては見てもらえない。

リュカさんから見てもそうだろう。
僕はきっと恋愛対象としては見られない。
そもそも僕は穢れているからだめだ。

あれほどの人がわざわざΩの中でも最底辺にいるような僕を相手にするはずがない。


リュカさんの隣には綺麗な人が似合う。
白百合のような凛とした人。
紅薔薇のような華やかな人。
かすみ草のような清廉な人。
そんな人だといい。

間違っても僕のような花にすらなれない存在が横に立っていいわけない。








それでも、初めての恋なんだ。


きちんと心で飼い殺すから、貴方が僕の前から消えるまで、少しだけ想うことは許してもらえないだろうか。



それだけで僕は幸せだと思えるから。



りぃくんの成長を傍で見ることができて、明るい人たちと楽しい仕事ができて、すきな人を想うことができる。


 
あぁ、生きてきた中で一番幸せだ。



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