57 / 101
56
しおりを挟む僕は無知なことが自身をいずれ苦しめることをいままでの人生で嫌というほど味わっている。
だからなるべくわからないことや不思議に思ったことは調べるようにしていた。
それに元々人の顔色を伺って生きてきたんだ。
琥太郎さんや柚さんがリュカさんに向ける態度を見ていれば想像ができた。
3ヶ月の間、ただリュカさんとランチを楽しんでいたわけじゃない。
僕なりにリュカさんについて調べてみたことがあるんだ。
そうしたら、すぐ出てきた。
ルグゼンブルク家と西園寺家を両親に持つリュカさんのことが、それはもうザクザクと。
ひとつだけ確実にわかったことは住む世界が違うということ。
なぜ僕とりぃくんに会ってくれるかはわからないけれどいずれいなくなる存在なのはわかる。
リュカさんは世界から必要とされる人間。
僕はりぃくんからしか必要とされない人間。
しかも僕に至ってはりぃくんが独り立ちするまでの期限付きだ。
いずれ誰からも必要とされなくなる。
誰にも言っていないけれどりぃくんが就職して好い人ができて結婚してくれたら僕はそっと消えようと思ってる。
僕の存在がりぃくんの障害物にならないように。
重荷にならないように。
りぃくんがこれから生きていく世界の中で、少しでも僕の存在が邪魔になってはいけない。
りぃくんは優しい子だからいずれ老いる僕のことを気遣ってくれる。
りぃくんがそこまですることはないのだ。
そうなる前にひっそりと消えたい。
りぃくんの幸せが僕の幸せだから。
そんな僕がリュカさんに恋して、想いを告げたところでリュカさんが困るだけ。
前にお近づきになりたいなんて言ってくれたけれど、きっと気の迷いか、ただの興味か何かだろう。
以前、家の前でよく井戸端会議をしている人たちが、こどももいて、しかもΩなんて独占欲の強いαがもらうわけないじゃない。
βだってΩだって子持ちは嫌がるわよとこちらを見てにやにやと言っていた。
僕はりぃくんのような子が僕のもとにきてくれたのは奇跡で、子持ちで何が悪いんだと思っている。
でも世間では子持ちの片親のΩとしか見られない僕は恋愛対象としては見てもらえない。
リュカさんから見てもそうだろう。
僕はきっと恋愛対象としては見られない。
そもそも僕は穢れているからだめだ。
あれほどの人がわざわざΩの中でも最底辺にいるような僕を相手にするはずがない。
リュカさんの隣には綺麗な人が似合う。
白百合のような凛とした人。
紅薔薇のような華やかな人。
かすみ草のような清廉な人。
そんな人だといい。
間違っても僕のような花にすらなれない存在が横に立っていいわけない。
それでも、初めての恋なんだ。
きちんと心で飼い殺すから、貴方が僕の前から消えるまで、少しだけ想うことは許してもらえないだろうか。
それだけで僕は幸せだと思えるから。
りぃくんの成長を傍で見ることができて、明るい人たちと楽しい仕事ができて、すきな人を想うことができる。
あぁ、生きてきた中で一番幸せだ。
747
お気に入りに追加
1,139
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる