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しおりを挟むふらふらと居間のテーブルに突っ伏している僕の傍に近寄ってくるリュカさんの気配がした。
「……陽さん、なにか飲みますか?」
「いらない……。
うぅ、りぃくん……。
りぃくんに断られた……。
りぃくんが大人になっちゃった……。
うぅぅ……あのゴマちゃんとおーちゃんにりぃくん取られた……。」
リュカさんに敬語を使う、なんてことすら忘れるほどショックだった。
「こどもの成長は早いですね。
よければどうぞ、飲みやすいですよ。」
コトン、と目の前に置かれたのは空のグラスと水の入ったピッチャー。
そして柚の果実酒の瓶を置いてリュカさんは机を挟んで左斜め前に座った。
「最近、りぃくんがなんでもひとりでこなしてどんどん大人になっちゃう……。」
テーブルに涙の湖ができているだろう。
ボソボソとリュカさんに話す。
「それも成長だと思いますけれど……。
そうですね、りぃくんを大事に育てている陽さんにとってはより一層寂しいと感じるでしょうね。」
そう言って腕を伸ばして頭を撫でてくれるから少し落ち着いた。
そして落ち着いたと同時にこのシチュエーションが恥ずかしいことにも気づく。
頭をブンブンと振ってリュカさんの手をよけた。
「っあ、あー、と……あ、僕、リュカさんに渡したいものがあったんです。」
手をよけるために頭を振ったときに僕のバッグが目に入り、お昼に買ったものを思い出した。
「……?」
不思議そうな顔をしているリュカさんを無視してバックの中をごそごそと探る。
……あった!
バレないように奥底にしまっていたから綺麗な和紙がよれていないかと後ろにいるリュカさんにバレないようこっそり点検した。
そしてリュカさんの傍に行きその綺麗な和紙に包まれた木箱を差し出した。
「これは……?」
「お礼です。
こんな素敵な旅をさせてくれたリュカさんに。
りぃくんのあんないい笑顔は僕だけじゃ引き出せなかったから……。
それに、ずっと手を
つ……繋いでいてくれたから……。
周りが怖かったから安心したんです。」
途中で恥ずかしくなって最後のほうはリュカさんの顔は見れなかった。
リュカさんといると恥ずかしいことばかりだ。
心臓だって乱高下しっぱなし。
「開けてみても?」
「は、はい……。
僕なりにリュカさんのこと想って選んだんですけど……。」
気にいらなかったら…と今更ながら不安になってしまってわたわたと言い訳じみたことを言ってしまう。
「これは……とてもいい品ですね。
なにより陽さんが選んでくれたんでしょう?
私のイニシャルまで……。
ふふっ嬉しいです。
大切にします、ありがとう。」
いつもの貴公子のようなアルカイックスマイルではなくて、少年のような笑顔を見せてくれた。
そんなリュカさんに僕も嬉しくなる。
……と、同時にとても胸が苦しい。
さすがにもう気づいてしまった。
気づいてはいけない想いに。
いや、元々気づいてはいけないと悟ったときに分かっていたんだ。
リュカさんがすき
りぃくんに真摯に付き合ってくれるところも、少し強引だけれどその強引さはいつも僕のためであることも、そしてそれを優しさという殻の中で閉じ込めちゃうことも。
僕に見せてくれるいろんな表情が素敵なところも。
全部に恋をした
初めて恋をした
でもこの初めての恋は心の中で飼い殺さなければならない。
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