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しおりを挟む「……なんで、なんで会ったばかりの人にそこまで言われないといけないんですか?」
見透かされたくなくて強い口調になってしまった。
「言ったでしょう?お近づきになりたい、と。
それにりぃくんとの約束もあるので。」
りぃくんがこの人に懐いているのを見てずっと気にしていたひとつの懸念が大きくなっていく。
「僕から……僕からりぃくんを取らないで……。」
りぃくんがいなくなってしまったら僕の生きる意義がなくなってしまう。
「取りませんよ、というか取れません。
どこまでいっても陽さんはりぃくんの立派な親です。
……そろそろ-shiki-に向かわなければなりませんね。
そうだ、昨日バックの中見てくれました?
りぃくんはその場で見てくれましたけれど……。」
重くなりかけた空気をリュカさんがすっと変えてくれた。
そのことにふ、と僕の息も抜ける。
「え?あれはりぃくんに言っていたんじゃ……。」
「おふたりにですよ、そうですか……。
家に帰ったら見てみてくださいね。
あとこれはお近づきになるためのプレゼントです。
以前渡したプレゼントに入れ忘れていました。
はい、目を閉じて。」
その言葉に目を閉じる。
ってなんで素直に目を閉じたの、僕。
すぐ目を開けるとそこには満足気に目を細めたリュカさんがいた。
「なんだったんですか……。」
「……いえ、とても美しいなと。」
「え?」
「そういえば陽さんとりぃくんて休日はどうしているんですか?」
「りぃくんと公園で遊んだりしますよ。」
-shiki-に着くまでリュカさんは早すぎず、遅すぎずのテンポで質問や面白い話をしてくれてつい空気が緩んでしまった。
「送っていただきありがとうございました。」
「いえいえ、私もこれから仕事でしたので楽しい時間でした。
それじゃあ、陽さん、また。」
にっこりと笑って黒い車は去っていった。
リュカさんといるとなんか調子狂うなぁ……。
そんなことを思いながら-shiki-のスタッフルームで制服に着替える。
「おはようございます!」
「おはよう、陽くん!
二日酔い大丈夫だった……っ!?!?
陽くん、それ……!」
柚は目をまん丸にして僕の首元を指さした。
「大丈夫でした~。
これですか?りぃくんが作ってくれたものです。
仕事のときでも目に入れば嬉しいなと思ったんですけど……。
仕事中はだめでしたかね?」
「それはとっても似合ってるよ!
それもだけどそれ!首のプロテクター!
どうしたの!?」
プロテクター?
僕はあの日取られてしまって、それからはりぃくんと外を彷徨っていたときに拾ったぼろぼろのやつをつけていた。
引っ張ればちぎれそうなくらいぼろぼろだけれど、着けていないよりはまし。
それにΩなのにプロテクターをつけずに誰かに番にされたら…もう言葉にするのもおぞましい。
「陽。」
琥太郎さんが横から鏡をくれた。
のぞき込むとそこにはプロテクターが。
「……んん!?」
そこにはいつものプロテクターはなかった。
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