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しおりを挟む「は~る!おきて~!」
ぐわん、と揺れる衝撃で目を覚ました。
あ、天使がいる。りぃくんと言う名の。
「今日もかわいいね、りぃくん。」
「うん、ありがとう。
でもはる、もうしちじはんだよ。」
その言葉に僕は一気に覚醒した。
「え!うそ!りぃくん、なに食べる!?」
急いで布団を畳みながら聞く。
「朝ごはん、じゅんびした!
ほうちょうはおとながいないときにつかったらだめっていわれたから、ゆずちゃんのとこからもらった食パンでサンドイッチつくったよ。
はるのぶんもつくったから食べてね。」
あ、もうりぃくんの前世は天使確定だ。
「りぃくん……!すごすぎるよ!
この一週間ですごい成長しちゃってもう僕どうしよう!」
「どうもしない!食べよ!」
あぁ、日に日にりぃくんの僕への対応が雑になっていく気もするけどそれすら成長を感じられて嬉しいよ…!
「いただきます!
……ん、りぃくん美味しい!
僕より上手だよ!」
「えへへー、たまごにね、ゆずちゃんとくせいマスタードを入れたの。」
ドヤ顔で言ってくるりぃくんの髪が寝癖であっちこっち飛び跳ねていてもうおもしろかわいかった。
食べ終わればりぃくんの髪を梳かして保育園に行く準備をする。
りぃくんがひとりで服を着ているとき僕も自分の身支度と少し家事をしておく。
「はる、いつもみたく輪ゴムじゃなくてきのうあげたのつかってね!」
昨日くれたターコイズとクリスタルの髪留めを差し出してきた。
これはつけるしかあるまい……。
「うん、はる、きれい!」
「本当?ありがとう!」
いつもは下で緩くお団子にしている髪を今日は左耳下あたりから三つ編みにして垂れ流す。
そうすれば仕事中もりぃくんからもらった髪留めを見ることができるから。ぐふふ。
これで今日の僕は無敵だ。
水色のスモックに黄色の帽子をかぶったりぃくんの手を引いて家を出る。
今日もやっぱり近所の方々が井戸端会議のために集まっていた。
「いやだわぁ、やっぱりいつもと同じ服よ。」
「髪型変えたところで服がボロボロじゃ意味ないわよねぇ。」
「片親なら仕方ないわよ。
でもあんなんじゃ結婚できるかわからないわね。」
「こどもはいい子なのに親がああじゃ可哀そうね。
しかも昨日酔っ払って帰ってきたんでしょう?」
いつもよりこれみよがしに言ってくる人たち。
昨日酔っぱらってきたのが格好のネタになってしまったんだろう。
思わずりぃくんの耳を塞いで聞こえないようにしたが、僕の中ではこどもはいい子なのに親がああじゃ可哀そうね。という言葉がどうにも引っかかって消化できない。
どこに行ってもそんな目で見られて、僕はいいけれどこれから先、りぃくんが大きくなればりぃくん自身がこういう目に晒されて嫌な目に遭うのではと思えば、顔が自然に下を向いてしまう。
あぁ嫌だなぁ。
こんな態度を取ればあの人たちが喜ぶだけなのに。
足早に隣を通り抜けようとしたらあの香りが鼻孔を擽った。
「陽、りぃくん、迎えに来ましたよ。」
少し離れたところに止まっていた黒い車の横にスーツを着たリュカさんが立っていた。
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