僕の幸せ

朝比奈和花

文字の大きさ
上 下
31 / 101

30 side 柚

しおりを挟む




ルグゼンブルクさんが去った後、綾継くんがぼそりと呟いた。

「……いやぁ、さすがだわ。」

「あやくん、なに?」

「αはα同士で無駄な争いを避けるために無意識にマウンティングをしちゃうんだけれど、俺もこたも力の差をまざまざと見せられたよ。

あれはだめだな。な、こた。」

「あぁ……。さすがだな。」

αのマウンティングというのは聞いたことがある。

αにはαの中で階級ランクがあるらしい。
それはβやΩの僕たちにはわからない世界だけれど。

「……にしても、陽は大変だな……。」

「そうだねぇ……。」

こたくんと綾継くんは顔を合わせて苦笑いをしていた。
僕と心くんにはさっぱりわからない。



「αは本能的につがいを守ろうとするからβやΩに比べて独占欲が強いんだ。

その傾向はαの階級が上であればあるほど強くなっていく。」

ちんぷんかんぷんな僕たちにふたりが言葉を噛み砕いて説明してくれる。

「それにルグゼンブルクさんはあのルグゼンブルク家と西園寺家のハイブリッドでしょ?

もうα中のαだよ。

そんなαが陽くんの運命のつがいなんだ。
陽くんは逃げられないんじゃないかなぁ。」

ここで僕はひとつ気になった。

「あやくんあやくん、あの西園寺家とルグゼンブルク家って?」

僕と同じことを思っていた心くんが先に質問してくれた。
どこかで聞いたことがある気がするんだけれど……。

「ビッグネーム過ぎて逆に浸透していないのか……。

西園寺家はね、この日本の医療の要といってもいい。
医療業界の頂点に立っている家だよ。
ほら、俺の働いている西園寺総合病院はわかるでしょ?

西園寺総合病院は全国に系列病院があって、総理事長が僕の職場の院長なんだけど。

その院長がルグゼンブルクさんの母親で西園寺家本家の方なんだ。

そしてルクゼンブルク家。
世界中を股にかける名家さ。
あらゆる業界で顔が利く。
僕たちが普段何気なく使っているものも辿って行けばルグゼンブルクが関わっていると言われている。

まぁ大きい家なぶん、いくつか噂があるけどね…。


シェーンっていうブランドは知っているかい?

日本や海外の資産家やセレブ御用達のジュエリーブランドなんだけど……。
そこの創立者がルクセンブルク家で今も経営に関わっている。

ルグゼンブルクさんはルグゼンブルクの現当主のご令孫だよ。」

その話に言葉を失う。
もう話が凄すぎて反応できなかった。

ただふたりが運命だということはトップシークレットということはこの場にいる全員が悟った。

「俺たちは陽を見守るしかないな。」

そうだ陽くんがなにかあったとき逃げて来れる場所がここであれるように。
僕たちは見守ろう。



陽くんの幸せを誰よりも願っているから。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

白銀オメガに草原で愛を

phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。 己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。 「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」 「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」 キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。 無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ ※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

処理中です...