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しおりを挟むあれだけ気にしないようにしていたのに、綾継さんがあの男の人を僕の前に引き出した。
「あぁ、そうだ陽くん。
君に紹介したい人がいたんだ。
俺の披露宴のとき、陽くんか理人くんになにかあったんじゃないかと心配だったそうで、今日、陽くんが誕生日だと言ったらぜひ祝いたいと仰ってくれたんで連れてきたんだ。」
ダークアッシュのブロンドの髪にダークグレーの聡明さが伺える瞳。
168センチの僕がその人の鼻下あたりだから、180センチは越えているだろう。
……明らかにαだ。
綾継さんからしてみれば同じα同士でいいかもしれないが、僕からしたら警戒対象以外何者でもない。
「リュカ=フラヴィオ=イオリ=ルグゼンブルクと申します。
ぜひ、リュカとお呼びください。
……あのときは大丈夫でしたか?」
にこやかな笑顔で挨拶してくれる。
この人は心がざわつく。
怖いとは思わないが落ち着かない気持ちになる。
「……望月 陽です。
この子は僕の息子の理人といいます。
あのときは少し具合が悪くなっただけなので大丈夫でした。
ありがとうございます。」
早く遠くに行って……。
この脳の芯まで溶けてしまいそうな匂いを遠ざけたい。
「陽さんが20歳の誕生日だと耳にしたので受け取っていただけたら嬉しいです。
お誕生日おめでとうございます。」
リュカさんは大きな包みをふたつくれた。
中身はどちらもリュックサック。
大きなほうは黒の革製のリュックで同じ色の革製のストラップがついていた。
小さなほうは白。
本当に大きさが違うだけで形やストラップは同じだった。
「小さいほうは理人くんのものです。
陽さんとお揃いもいいかなと思いまして。」
「え!ぼくの!?
しかもはるとおそろい!?」
「はい、お揃いです。
ここのストラップにHARUとRIHITOと書いてあるでしょう?
この世にひとつだけのものですよ。
…中もぜひ見てみてくださいね。」
りぃくんには少し大きなバッグを両手で抱えて中身を見だした。
僕はといえばいきなりのプレゼントに戸惑ってしまう。
「はるみて!ぬいぐるみ!かわいい!
これ、いぬ?」
りぃくんは両手でぬいぐるみをぎゅーっと抱きしめている。
かわいい、非常にかわいいが……!
「おおかみっていう動物ですよ。
狼は愛した相手を守り、慈しむんですよ。
私のすきな動物です。
……って少し難しいですね。」
「わかるよ!
だいじにする、ってことだよね!」
「そうですね、理人くんはとても賢い。」
そう言ってリュカさんは頭を撫でた。
りぃくんはそれに満足そうに微笑んで受け入れていた。
僕は驚きのあまり目を見開いていたと思う。
りぃくんは誰にでも人当たりがいいが警戒心が強く、知らない人に触られることを嫌がるのだ。
今までりぃくんに触れることを許したのは僕と琥太郎さん、柚さんの3人だけ。
保育園でも先生に触られる前に自分でどうにかしているようだった。
「プレゼント、ありがとうございます。」
お礼をいいつつりぃくんをリュカさんから離した。
「陽くん、僕たちからもプレゼント。」
九条夫夫からは僕が生まれた年の赤ワインと白ワインをいただいた。
お酒も解禁だからねと言葉を添えられて。
「さぁ、皆揃ったことだし改めて乾杯しよう!
陽くん本当におめでとう、かんぱーい!」
柚さんの鶴の一声で皆、席に座り、美味しい食事に舌鼓を打った。
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