3 / 101
2
しおりを挟む駅とは真逆の少し丘になっているところにある白い漆喰と硝子のコントラストが美しい建物。
flower shop -shiki-
四季琥太郎さん、柚さんの仲良し夫夫が営む花屋。
虎太朗さんはαで、柚さんは僕と同じΩ。
琥太郎さんはくまさんみたいな人で必要最低限の言葉しか話さない職人肌気質。
とても頼りになる人でもある。
柚さんは妖精みたい。
くるくる動きまわって、どんなお客さんにも最後にはまた来るね。って言葉をいただく。
話し上手で聞き上手な人だ。
この夫夫は僕たちの恩人だ。
Ωだと仕事に就くことはとても難しい。
発情期があるし、社会的差別があるから。
けれどこの夫夫は僕を正社員で雇ってくれたのだ。
最初はアルバイト始まりだったけれどそのときからΩだからと低時給ではなく、きちんとした時給で働かせてくれた。
俺たちは番だからお前のフェロモンは効かないし発情期が来たらシェルターもあるから安心して働け。ってそう言って雇ってくれた。
だから僕は恩返しも込めて一生懸命働いている。
-shiki-を花屋さんでしょ?と舐めてはいけない。
-shiki-は生花の販売はもちろんドライフラワーやプリザーブドフラワーの作成・販売にウェディング関係のお花の販売・装飾。
さらにフラワーアレンジメントスクールやハーバリウムスクールもやっており多岐に渡って活動している。
極めつけは琥太郎さんの花への愛が爆発して造られた店の裏の植物園。
売り場の小さな温室とは別に花を育てるための大きな温室まであり虫の駆除なども仕事になるのだ。
だから接客は柚さん、裏の仕事は琥太郎さんがしている。
僕の仕事はその両方のお手伝い。
お客さんが多いときは接客に入り、柚さんがひとりで大丈夫なときは琥太郎さんと作業をする。
とてつもなく大変だけど僕はこの仕事がだいすきだし誇りを持っている。
「おはようございます!」
「陽くんおはよう!
りぃくんは元気に保育園行った?」
「はい!今日は給食がカレーライスなのでうきうきでしたよ。」
「それはかわいいねぇ!」
「はい、毎日かわいいです。」
そんなことを話しながら制服に着替える。
リネンの白シャツ、黒のスキニーパンツにサロンエプロン、たまにカーディガン。
黒のキャップは外に出るとき首をすっぽり隠すカーテンみたいなものをつけることができてとても便利。
「あ、今日は午前は通常営業で、午後は明日結婚式が行われる会場の装飾準備でおやすみ。
久しぶりのウェディングの仕事だよ。」
「はい。」
裏に入って琥太郎さんを探すと丁度近くの温室で青紫の花びらが美しいシネラリア、別名サイネリアの面倒を見ていた。
「琥太郎さん、おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
「なにから始めたらいいですか?」
「Aブロックのバラの水やり。
後は見回って花がらを摘んでくれ。
もし切り戻しをした方がよさそうなものがあればそれはメモってあとで俺に。
終わったらまた声をかけてくれ。」
それだけ言うとまた作業に戻ってしまった。
琥太郎さんはいつもこんな感じ。
たまに琥太郎さんを見た新規のお客さんは愛想が悪いと言うけれど、表情を面に出すのが苦手なだけでとても優しい人なのだ。
実際りぃくんは琥太郎さんがだいすきだし。
今の指示だって僕が午前に終わるだろう量しかない。
なにより優しくないひとは繊細な花なんて育てられない。
667
お気に入りに追加
1,151
あなたにおすすめの小説


当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。

白銀オメガに草原で愛を
phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。
己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。
「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」
「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」
キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。
無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ
※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる