僕の幸せ assort fortune

episode 10

4

side リュカ



柚さんからハロウィンパーティーの招待を受けてやって来てみればそこには慎ましいお尻を向けた陽がいた。

柚さんが陽を私に投げてきて受け止めればいつもと違って化粧品の匂いがふわりと漂って来る。

思わず腕に力が入ったところで陽は素っ頓狂な声を上げこれまたかわいらしい格好をしたりぃくんの元へ行き、泣きついていた。


確かに女性というには身長もあるし骨ばっているけれどそれでも華奢だし髪は長いから街中を歩けば女性に見られるだろう。

それにしてもドレスから覗くすらっとした脚やその網タイツのようなニーハイソックスからちらりと見える。
絶対領域とガーターベルトが私を試しているとしか思えない。


陽にバレないようにまじまじと見ているとしゃがんでいる陽のドレス部分がいい感じに上がってまさかの下着が見えた。

私とふたりきりならぜひとも見せてほしいがなにせここには他の男性がいる、特に愚弟が。

慌てて陽の身体を持ち上げて無防備なことへのお仕置きも兼ねてドレスが捲れていたことを丁寧に、教えてあげた。

……顔をまっかにした陽はとてもかわいかった。



私と伊南も柚さんに呼ばれ着替えてからメイクまでされた。

イベントごとがだいすきな伊南は今日ここに来ると聞いたとき俺も行きたいとまさかの柚さんに頼み込んだのだ。

柚さんも人数は多いほうがいいと二つ返事で招待してくれた。
……寛大な方でよかった。





その後、りぃくんがランタンを持ってお菓子をもらって行く。

どうやら、陽はハロウィンそのものを理解していなかったらしく、顔に何をすればいいのかわからないと書いてあったのでそっと説明すればそろりとランタンにお菓子を入れこれでいいの？と私の顔を伺ってくるのは少しクるものがあった。

彼のひとつひとつの行動が私の琴線を触ってくるのだ。



「そこの美しい魔女さん、Trick or Treat。」

りぃくんの様子を見て目尻を下げている彼にそっと囁く。

呆けた顔をしていたがまぁいいかと言った感じで私にもお菓子をくれた。

よしよし、これで陽の手作りのものが手に入った。

満足すれば陽はこちらを見ていたずらを思いついたこどものように爆弾を投下した。

「かっこいい吸血鬼ヴァンパイアさんTrick or Treat。」

着替えても何の反応もなくて残念だったけれどこうしてさりげなくかっこいいと言ってくれるとそれもまた嬉しい。

「……っ、これでお菓子がなかったら何のいたずらをするんです？」

「……え、あー……こちょこちょ、とかですかね？」

ぜひまた来年、ここでなくともハロウィンはやろうと決意した。

「ふふっ、それは困ったいたずらですね。

はい、treat、どうぞ。」

陽のすきならいちごが入ったチョコレートやかぼちゃを練りこんだチョコレートなど仕事で築きあげた伝手を辿って特別に作ってもらったアソートを渡す。

「こんなにいいもの……いいんですか……？
僕のなんてただのクッキーなんですけれど。」

「このクッキーにはその中身より価値がありますからね。

喜んでくれたのなら何よりです。」

「……やっぱりリュカさんは変わってますね

ありがとうございます。
大事に食べますね！」

箱を開けて何から食べようなんて迷っている陽に私の目尻も下がる。






ちなみにこの後、伊南がぶどうジュースと偽って陽にワインを渡し大変なことになったのはまた別のお話……。




episode 10 END．