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episode 4
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3月中旬。
パシャパシャパシャパシャパシャァッ!!
「りぃくん、かっこいいよぅ!」
「えぇ、えぇ、本当に……!
りぃくん、ばぁばに晴れ姿を見せてちょうだい。」
「陽もばぁばももうたくさん聞いた~。
それよりも陽、そんなに動いたらさくちゃんとしゅーちゃんびっくりしちゃうよ。」
「そうですよ、陽、無理言ってここにいるんですから。」
「う、ごめんなさい……。」
僕のオメガ胎はもう余裕がなくて、ここまでくればいつ産まれるかわからない状態のため入院を勧められた。
場合によっては帝王切開になるとも。
だけど、どうしてもりぃくんの卒園式に出席したくて、伊南さんと九条先生に無理を言って特別に許可をもらったのだ。
小学校の入学式は行けるかわからないから。
リュカさんが作ってくれた杢グレーのスーツに、モスグリーンのネクタイを合わせた晴れ着に身を包んだりぃくんはとってもかっこよかった。
園長先生から卒園証書とメダルをかけられたとき、視界がどんどんぼやけてきて、でも勇姿を見逃すわけにいかないから、ハンカチという武器を片手に挑んでやった。
「りぃくん、今日はごちそうが待っているよ!
じぃじのおうちに行こうか!」
今日の卒園式に合わせてイザベルさんが腕によりをかけてごちそうを用意してくれたいるのだ。
今住んでいるマンションから10分ほどのところにある豪邸。
最初ここに来たときにはびっくりしたものだ。
ずっと更地だった広大な土地にいつの間にか大きなお屋敷が建っていたのだから。
ゲストルームだけでも5つはあり、その他にもおもちゃ部屋に図書室と言ってもいいほどの書斎。
大きなホールはパーティーを余裕で行えるだろう。
ミシェルさんが日本の温泉に魅了されて家の中には石畳の露天風呂に中には岩風呂と檜風呂があったし、そこから見える庭は小さな池と美しい花々に彩られていた。
「さぁ皆グラスを持ったかな?
りぃくんの卒園祝いと、小学校の合格祝いの両方を兼ねて……乾杯!」
「「カンパーイ!」」
そう、りぃくんは見事に紫陽学園初等部に合格した。
「りぃくんは昔から賢い子だとは思っていたけれど、まさか本当にあの紫陽学園に入学しちゃうとはね~。
よかったねぇ、陽くん!」
アランさんたちに招待されて琥太郎さんと柚さん、木蓮さんの四季一家に伊南さんも合流してくれた。
クロエさんは海外で、伊鶴さんは病院から抜けることはできないから来れなかったけれど、お祝いのメッセージを朝一番にくれた。
「陽!みんなおめでとう!って言ってくれた!」
ふくふくのほっぺを紅潮させて、嬉しそうに僕に教えてくれるりぃくん。
皆からもらった贈り物よりも、贈ってくれる言葉が嬉しくて仕方ないようだ。
「よかったねぇ。」
「うん!さくちゃんとしゅーちゃんもおめでとうって言ってくれるかな?」
「言ってるよう。
にぃにすごいねって、おめでとう!ってね。」
「にゅふふ。そうだったらいいなー。」
ねー?なんて言って僕のお腹を撫でてくれるりぃくんに反応するように、ぽこぽこっとふたりに蹴られた。
* * *
ズキン。
「そろそろりぃくんも寝る時間だから解散にしようか。
あぁ、四季夫妻は東側のゲストルームを使ってください。
イザベル、案内を。」
「お気遣いありがとうございます。」
ズキン、ズキン。
「伊南はいつもの部屋を使いなさい。」
「ん、了解。
木蓮。ボードゲームでもしようぜ。
ダーツでもいいな。
なんか賭けてさ。」
「じゃあ、お前の部屋にある年代物のワインな。」
「まじか。」
そんな会話をしながら、歳の近いふたりもホールから去って行った。
ズキン、ズキン、ズキン。
「私たちも行きましょうか。
りぃくん、おいで。」
お泊まりのときに使わせてもらっている、南東の部屋に向かう。
「りぃくん、お風呂入りましょうか。」
「じぃじのおうちは露天風呂あるもんね!」
「陽はこの部屋で「うぅ……。」陽!?」
お腹が、痛い……。
耐え切れなくなってその場にお腹を抱えてうずくまる。
「陽!?ねぇ、どうしたの!?」
「り、りぃくん、だ、だいじょうぶ、だから……。」
大丈夫だと抱きしめるために腕を上げようとするも手が震えて上がらなかった。
「で、でも!「りぃくん。
りぃくん、落ち着いて。
落ち着いて、伊南を呼んで来てください。」」
「わ、わかった!!」
りぃくんが去って強がる必要が消えたからか、どっと痛みが襲ってくる。
「い、痛い……うぅぅっ!」
「陽、身体を起こしますよ。」
リュカさんの声に反応もできなくてなすがままに身体を起こされ、ベッドに寝かせられた。
「陽くん!!大丈夫か!?
お腹触るよ!?
……だめだ、ここにいてもお腹の子の状況がわからない!
おいリュカ!救急車呼べ!
木蓮お前今日まだ酒飲んでねぇよな!?
車も準備してくれ!」
「もう呼んでます!」
「あぁ!」
周りがなにやら動いてくれているのはわかっていたけれど、僕はそれどころじゃなくて、ただただ痛みにこらえているうちに、いつの間にか分娩室に入っていた。
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